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経済同友会代表幹事に新浪氏就任 「やっぱり成長」覚悟の船出 2023/04/23

経済同友会の第31代の代表幹事に新浪剛史氏(64、サントリーホールディングス社長)が就任する。新型コロナウイルス、ウクライナ戦争、気候変動、インフレなど地球規模の難題に加え、子育て、金融・財政・社会保障、働き方改革のような日本固有の問題も山積する中での船出だ。

ローソンなどでかじ取りをしてきた「プロ経営者」は複雑に絡み合う社会課題にどう向き合うのか。シン・同友会には垂直立ち上がりが求められている。

「やっぱり成長なんだよ」。新浪氏の口癖だ。国の政策形成に任を負う経済財政諮問会議の民間メンバーなどで積極的に発言する論客として知られる。複数企業の経営を通じて閉塞感の漂う日本経済と向き合い、海外売上比率5割を超えるサントリーでグローバル経済のダイナミズムを肌で感じた。

4月上旬には、同友会でリーダーとなってまとめた「共助資本主義」と題する提言書を発表した。副題は「『企業のパーパス』と『共感』を起点としたアニマル・スピリッツの覚醒」。代表幹事としての方向性も示した格好だ。

経済3団体と呼ばれる経団連、日本商工会議所、そして同友会。出世してトップに上りつめる人材が多い大企業中心の経団連、主に中小企業で構成する商工会議所に比べ、同友会は経営者が個人の資格で活動し個性的な経営者人生を歩んだ人も目立つ。提言が比較的穏便な経団連、商工会議所と一線を画し、同友会は財政再建などで自由な発言を重んじ、財界野党といわれることもある。

歴代の代表幹事には堀田庄三氏(出身企業・住友銀行)、中山素平氏(日本興業銀行)のように経営再建・再編などを成し遂げ、戦後の日本経済の基盤を再興した人物もいる。貴重な経験を積んだゆえに発言に重みがあり、社会を動かすこともあった。石原俊氏(日産自動車)は「企業は一流、政治は三流」と語って物議を醸したこともあるが、1989年の政財界を揺るがしたリクルート事件で首相退陣を要求。流れを作った。

新浪氏にそうした胆力があるだろうか。三菱商事からハーバード大学経営大学院に留学するなど来歴は輝かしい。帰国後は給食会社の買収を提案して経営を任されたが、すぐ壁にぶつかる。経営方法は熟知していたものの、現場を一丸となって動かす組織力の醸成は机の上で学べなかった。この時の奮闘で経営の勘所をつかんだ。

業績が低迷していたローソンの社長に就いた2002年、直ちに現場に入り込み約3年で再建にめどをつけた。社員や店舗オーナー、従業員を巻き込み、ムードメーカーとして個の力を引き出す経営方法を体現した。サントリーでは巨額買収した米酒造会社との融合に手腕を発揮した。

「名前と顔が一致する経営者」として発信力に期待する声がある一方、21年には率直な物言いで企業の「45歳定年制」を唱えた。人材の流動化、学び直しを促す意図だったが、批判を浴びた。

財界などを研究する都留文科大学の菊池信輝教授は「(サントリーは非上場で)多様な株主からのプレッシャーを受けにくい。多くの上場企業の同友会メンバーと問題意識や方向感、時間軸を共有してリーダーシップを発揮できるか」と課題を挙げる。

日本の大企業経営者としてはユニークなキャリアの新浪氏。薫陶を受けたローソンの竹増貞信社長は「『新浪さんらしさ』を出せば」とエールを送る。財界提言にありがちな「言ったきり」でなく、実行力も試される。先の報告書には「経営者の覚悟と決断」が必要とある。まるで自分に言い聞かせるように。

(編集委員 田中陽)

(日本経済新聞)

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