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苦境ユニコーン誕生8割減 林立に転機、米国は育成回帰 2023/07/22

スタートアップ企業を巡る資金の流れが変わってきた。企業価値10億ドル(約1400億円)以上の未上場企業「ユニコーン」の誕生は世界で月平均7社と、ピークの2021年比で8割減となった。金融引き締めで行き詰まる企業も目立つ。米ベンチャーキャピタル(VC)業界は原点ともいえる有望株の発掘・育成に軸足を移している。

6月下旬、交流アプリのスタートアップが解散を決めた。ソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンドの出資により21年に企業価値11億7000万ドルと評価された米IRLだ。2000万人の利用者がいるとうたっていた。

IRLの広報担当者は突然の解散について「(交流アプリの)利用者数の95%はボット(自動プログラム)などで実在の人間ではなかった」と説明する。出資者に約束した数字を実現できず、不正行為に走ったとみられる。

ロボットで作ったピザの移動販売で注目を集めた米ズームも清算手続きに入った。18年に企業価値22億5000万ドルと評価されていた。事業縮小から人員削減、最後は資金繰り危機――。ユニコーン苦境は深まっている。

21年、米国と中国を中心に世界で月平均50社のユニコーンが誕生していた(米ピッチブック調べ)。ビジョン・ファンドのような「レイター(成長後期)」段階の投資家が資金力で未公開企業の価値を押し上げ、量産につながった。

スタートアップの調達は成長段階によって役割が異なる。創業を支える「シード(創業期)」、事業モデル確立を後押しする「アーリー(成長初期)」投資に対し、成長後期の投資家は増産やシェア拡大を支える。成長後期では単に新規株式公開(IPO)時の値上がりを狙った安易な投資も目立った。

ところが米連邦準備理事会(FRB)が利上げを加速すると状況は一変する。米ディールロジックによると米IPO企業の資金調達額は22年、220億ドルと21年に比べて9割強減った。23年も低迷が続く。金融引き締めで投資家がリスクをとりづらくなり、収益基盤の弱いユニコーン上場銘柄は買われにくい。

成長後期の投資家はIPO後の高値売却の機会を失い、投資縮小を迫られた。米国で23年4〜6月のVCなどの投資額は前年同期比48%減の398億ドル。ユニコーン誕生が急減速したゆえんだ。

もっとも米シリコンバレーで悲観論は聞かれない。米VCフュージョン・ファンドのルー・チャン氏は「連続起業家が始めたスタートアップなどには22年より多くの資金が集まっている」と話す。

文章や画像を自動作成する生成人工知能(AI)分野の活況も楽観を生む。米リンクトイン元会長らが1年前に創業した米インフレクションAIはすでに15億ドルを集めた。米CBインサイツのデータによると生成AIユニコーンの企業価値上位は北米勢で占められ、中国企業はいない。

創業期の米企業による資金調達額は1案件あたり290万ドル(23年1〜6月期、中央値)となり、一貫して増えている。成長後期段階の調達規模が縮小したのとは対照的だ。軸足は次世代企業の育成に回帰しつつある。

「グレートリセットが起きている」。新興企業の清算を手がける米シャーウッド・パートナーズのマーティン・ピチンソン氏は明かす。スタートアップの生態系はIT(情報技術)バブル崩壊やリーマン危機といったショックを乗り越えるたびに、新たな産業を生み出してきた。ユニコーン苦境の教訓を生かし、次のイノベーションで主導権を握るのはどこか。米国のみならず世界でVCの目利き力が問われている。

(シリコンバレー=山田遼太郎、ニューヨーク=竹内弘文、グラフィックス 佐藤綾香、映像 高橋丈三郎)

(日本経済新聞)

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