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英株式市場、落日の世界6位 米へ流出、日本もリスク 2023/05/01

英国株式市場が落日を迎えている。英半導体設計大手のアームなど米国株市場を上場先に選ぶ英国や欧州の企業が絶えない。時価総額はフランスやインドに抜かれて世界6位に転落した。米国市場に企業もマネーも集中しやすいのは世界的な流れだ。日本も長期的には流出のリスクを抱える。

「全く後悔していない。わずかな負担で米国の巨大な資本にアクセスできるようになった」。配管設備を手がける英ファーガソンのケビン・マーフィー最高経営責任者(CEO)は、2022年5月に主要上場先をロンドン証券取引所(LSE)からニューヨーク証券取引所(NYSE)に変更したことについて英フィナンシャル・タイムズにこう答えた。

同社株の売買代金(10カ月平均)は主要市場の変更後、約12倍と急増した。こうした実際の効用を目の当たりにして追随する動きが絶えない。

アームのレネ・ハースCEOは3月、英政府の再三の誘致にも関わらず「米国の単独上場が最善の道だ」との声明を出した。建材大手、アイルランドのCRHも同月、米国への主要上場先の切り替えを発表した。

英ブリティッシュ・アメリカン・タバコは、主要市場を米国に移すよう大株主から圧力をかけられていると報道されている。同社の利益水準は同業の米フィリップ・モリス・インターナショナルを上回るのに、時価総額は半分程度にとどまることを問題視する。

世界の時価総額シェアをみると英市場の低下が鮮明だ。QUICK・ファクトセットのデータ(月末ベース)によると、00年代前半には1割近くを占めて3位だったが、この20年あまりで3%に落ち込んだ。22年にかつての植民地のインドに抜かれ、今年1月にフランスに欧州首位の座を初めて奪われた。

かつて英国は欧州や中東の投資家が集まる国際金融センターとして、国内外の企業が上場先に選んできた。22年に豪英BHPグループが英国での上場を廃止してシドニーに一本化するなど近年は流出がとまらない。

シェア低下は15年前後に拍車がかかった。欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の動きを懸念したポンド安が、ドル建ての時価総額の目減りにつながった面が大きいが、金融センターとしての魅力低下も響いている。英拠点からはEUの株式取引が制限され、英国からEU域内に人員や機能を移転する動きが進む。株式取引額も欧州首位の座をオランダのアムステルダムに明け渡した。

英市場は米市場と比べて商いが薄く、企業価値も低く評価される市場になってしまった。

野村資本市場研究所によると、NYSEの22年1~11月の1社当たりの売買代金は1.5兆円とLSEの10倍以上だ。米S&P500種株価指数の予想PER(株価収益率)は17.9倍と、英FTSE100の10.9倍と比べて差が大きい。

米国ではテック産業が隆盛して国内外の資本が集まり、新たな企業が芽吹き急成長する循環が強まった。「米株1強」の様相が強まり、時価総額シェアは10年の約30%から40%台に高まった。

一方、英国の時価総額上位はシェルなど石油・資源や、HSBCホールディングスの金融など旧来業種の老舗企業ばかりだ。歴史的な経緯や立地、言語、法律などの利点がマネーをひき付けてきたが、株式においては金融市場としての強みが失われている。

英国内の投資家が自国株に投資しないことも地盤沈下の原因とされる。英シンクタンクのニューフィナンシャルによると、英年金基金の運用資産に占める英国株の割合は1997年の53%から2021年に6%まで低下。その間、約70兆円の英国株が売られたという。厳格な時価会計による債券シフトが背景だ。「長期投資ができる年金基金は本来、英国経済を支える理想的な立場にあるはず」とニューフィナンシャルのウィリアム・ライト氏は嘆く。

英市場の衰退は日本市場の未来を映していないか。東証プライム市場でも1社当たりの売買代金は米国の3分の1以下だ。スタンダードやグロースを加えると米の7分の1程度だ。日本の企業年金も長期の株価低迷や時価会計が影響して日本株への投資を減らしてきた。運用資産に占める日本株の割合は22年度に8.9%と00年度の35.6%から大幅に低下した。

日本市場は言語などの障壁に守られている面はある。ただ、新興企業が米市場を上場先として検討する動きもみられる。市場の魅力を高められなければ、いずれ米国市場の吸引力にあらがえなくなる。

(ロンドン=大西康平)

(日本経済新聞)

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