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金融DXで4万人分効率化 三菱UFJは1万人、配置転換も 2021/11/19

日本の大手金融機関がデジタルトランスフォーメーション(DX)で人手に頼った業務を削減する。日本経済新聞の調査で、約4万人規模の業務量が浮くことが分かった。支店の事務から営業などに配置転換する。雇用の維持を前提とする日本は人材の再教育が生産性向上のカギを握る。大胆に人を入れ替える米銀と比べると、再教育の効果が出るには時間がかかる。人材の流動性を高める取り組みも課題となる。

銀行、証券、保険の大手24社からDXによる人材への影響を聞き取った。デジタル化を含む構造改革で三菱UFJフィナンシャル・グループは2023年度までに1万人分、住友生命保険も2000人分の業務量削減を見込む。

DXによる業務量の変化を回答した13社の合計では3年以内に計2万9769人の削減が見込まれた。13社は20年度までにすでに8700人分の削減を進めている。実施済みを含めるとDXを活用した業務削減量は4万人分に迫る。全従業員、約38万人の1割に相当する計算だ。

業務の見直しは事務や管理、支店、コールセンターが中心となる見込み。厳しく解雇が制限される日本では、定年退職を除くと人員の削減は難しい。各社はDXで浮く人手を営業部門などへ配置転換し、生産性の向上につなげる考えだ。

配置転換をすると明確に回答があった人数は約7千人分あった。残りは未定で、退職による自然減も見込んでいる。

金融機関はリスキリング(学び直し)に力を入れる。りそなホールディングスは配置転換に当たって3~6カ月の研修期間を設ける。1700人分を事業承継ビジネスやDX支援業務に回す。

第一生命保険は全社員をデジタル人材として育成する計画だ。22年度以降は内勤社員の昇格要件としてIT(情報技術)知識を問うITパスポート試験の合格を求める。

SMBC日興証券は22年度までに全社員の1割にあたる約900人をデジタル人材として育成する。プロジェクトマネジメントやデータサイエンスのスキル習得に向けた研修を個人に合わせて設定する。

社内での育成にも課題はある。ある大手金融機関では「デジタル人材の育成」を掲げながらも、ウエブ会議が使えることが目標という例もあった。別の大手は、デジタル人材に高いレベルを求めるが「研修の出席者の顔色を見ながら難しすぎと感じた場合はレベルを変えて教材を提供し直す」。企業全体を変革するDXにはほど遠い現状も散見される。

日本の金融機関はDXによる効率化を急ぐが、米銀に比べるとデジタル化のスピードに会社の転換が追いつけていない。米銀はリーマン・ショックや欧州債務危機を経てビジネスの抜本的な転換を進めている。

大和総研の内野逸勢主席研究員は「米銀は業務規定が明確で、非効率な業務を特定して切り離すスピードが速い」と指摘する。これがデジタル化の急速なシフトにも対応できる素地になっている。日本生産性本部のデータでは16~17年時点で日本の金融・保険の労働生産性は米国の6割、英国の5割程度にとどまる。

米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は14年に「グーグルやフェイスブックなどと競合することになるだろう」と発言した。現在、社内には全社員の約2割にあたるエンジニア5万人以上がいるが、さらに世界中でエンジニア採用を拡大する方針を掲げている。

米銀ではITエンジニアの比率が3割近くに上る一方、日本は5%にも満たないという調査もある。SOMPOホールディングス(HD)、東京海上HD、MS&ADインシュアランスグループHD合わせて300人以上のエンジニアやデザイナーなどの専門人材の中途採用を掲げている。今後、銀行や証券など他の金融業界も中途採用を本格化し始めた場合、デジタル人材が30年に79万人不足すると懸念されている日本で、人員確保が思うように進まなくなる懸念もある。

IT投資の額も米銀が毎年1兆円かけるのに対してメガバンクは年間2000億円弱と差は大きい。邦銀は維持・運用が7割と守りが主眼で、革新的なサービスを生み出す投資ができていない。異業種との競争は激化している。日本は人材の確保とIT投資の両面で出遅れてしまっている。

(平本信敬)

(日本経済新聞)

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