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長期的視点で「良い企業」残す インテグラル代表取締役 山本礼二郎氏(下) 2022/01/13

投資ファンド、インテグラルで代表取締役を務める山本礼二郎さん(61)の人生の転機になったのが三井銀行(現三井住友銀行)時代の社費留学。M&A(合併・買収)や企業再生、起業家精神、リーダー論などを基礎からたたき込まれた。「自分の力を試したい」と大銀行のサラリーマンを辞めたのが1999年。「良い企業を社会に残す」ことを人生の目標に掲げる。

――米国のリーダー教育はどのような印象でしたか。

米ペンシルベニア大学ウォートン校で学友(右)と。指導教授のモルツ氏からリーダーシップや起業家精神を学ぶ
「89年に米ペンシルベニア大学のウォートン校(経営学)とローダー研究所(国際関係論)に留学しました。それまで海外には縁がなかったので見聞を広げようと思い立ったんです。米国でのリーダー教育は徹底していました。どんな小さなこと、たとえば身近な掃除当番を決めることでも『リーダーシップを発揮しろ』と発破をかけられる」

「『そういう人間でないと企業経営はできない』ということでしょう。リーダーをどれだけ輩出したかも大学間で競っており、学長から教授まで学校全体がとても熱心なのも私にとっては驚きでした」

――留学生活を通じて最も役立ったことは何ですか。

「印象深かったのは指導教授だったエドワード・モルツさんの授業。『もし君たちがビジネスを始めるならば、確率で言うと最初の1~2回はほぼ失敗するだろう。それを前提に4~5回で成功できるように計画しなさい』と言うのです。当たり前なことのようですが、改めて言われると『あ、なるほど』と目からうろこが落ちる思いでした」

「起業するにはまず失敗を前提に人、モノ、カネなど経営資源をどう投じるか考えないといけません。失敗した場合、友人や家族を巻き込んで大丈夫か。貯金はあるのか。銀行や知人から借りるのか。それに困らないくらいの余裕を持ち、すべてを事前に計算しておけというわけです。リスクを現実的にとらえ、計画を慎重に練り上げる姿勢はその後、私のビジネスマインドの基本になりました」

「在学中にシカゴの米コンサルティング会社A・T・カーニーで4カ月、研修したことも視野を広げるうえで役立ちました。クライアントにプレゼンする場面も見学できたし、某化学会社の研究投資と成果を評価するチームで作業を手伝うこともできた。職場での生の英語や上司・部下のヒエラルキーを肌身で体感できたのも貴重な経験です」

――99年にさくら銀行(当時)を辞め、なぜ独立系投資ファンドに移ったのですか。

「銀行では営業、融資、M&Aなどに取り組んでいました。どれもやりがいがある仕事でしたが、バブル経済がはじけてから不良債権処理問題が噴出。組織の意思決定がなかなか進まず、ストレスを感じるようになっていった」

仕事の優先順位を明確に

「そこで『自分が大企業にいるからいけないのだ』と悟り、旧三井銀行時代の先輩、佐山展生さんらが共同創設したユニゾン・キャピタルに入ることにしたんです。小所帯でサクサクと物事が決まってゆくので楽しかったですね」

――経営再建で成功する確率を上げるため、リーダーとして何を実践しましたか。

「投資ファンドは50枚くらいの皿を同時に回しているような忙しさ。常に走りながら考えるようになります。いくらでも失敗はありますが、変化する状況を見ながら必要な修正を繰り返してゆく。『おかしいぞ』と思ったら放置しない。重要なことは一瞬で決まります。変化を見逃さず、チャンスを機敏にたぐり寄せる。最終的に51対49で相手を上回れば勝てるわけです」

「とにかく素早く動くこと。手数もなるべく多い方がいい。臆しているくらいなら、相手や関係者に電話し、会って、代替案を提示してみる。胆力、粘り、根性の勝負です。あきらめたら他者を利するだけ。運をつかむ人は常にアンテナを張り続けています」

――会社経営で陥りやすいワナはありますか。それにどう対処すべきですか。

「『やった方がいい』くらいのことは、むしろやってはいけないと肝に銘じています。『やった方がいい』ことは社内に山ほどある。でもそればかりしていると、『本当に重要なこと』をする時間がなくなる。社員も『やった方がいい』ことをしているので問題が表面化しにくい。理由も分からず、業績悪化に陥るケースは意外に多いものです」

「まず優先順位を明確にすることがリーダーの役割でしょう。『やった方がいい』ことは大胆に切り捨て、『本当に重要なこと』に集中すべきです。大抵は重要なことの方が難しいので社員は敬遠しがちになる。そんな盲点を見抜いて改善しないと組織は間違った方向に進んでしまう。こうした心得は知り合いの経営者から教えてもらいました」

社員が喜ぶ再生が理想

――今までリーダーとして最も苦しかったこと、うれしかったことは何でしょうか。

「企業再生を巡る交渉は苦しいことばかり。あらゆる選択肢を想定し、読み切っておかないといけません。でも最後の瞬間まで何が起きるか分からないので緊張します」

「経営支援することになるスカイマークが2015年に民事再生法の適用を申請したときは4日連続で徹夜しました。『再生は可能』と結論が出たのが申請の2日前。インテグラルは早朝も深夜もパートナー5人(現在8人)の投資委員会で意思決定できるので機動力が生かせました」

「スカイマークは重要な社会インフラです。業績悪化の主因は超大型機・中型機の導入だと分かっていたので民事再生で破綻を回避できた意味は大きい。リストラや給与カットはしない基本方針で再建に臨むことができました。とにかく社員に喜んでもらえる企業再生が一番。お金だけでなく『良い企業を残す』ことにやりがいを感じます」

――今後の人生の目標は。

「利益一辺倒の短期的な視点では良い企業は育ちません。出口戦略を急がず、ファンド資金や超長期の自己資金を投入する『ハイブリッド投資』で経営陣と腰を据えて付き合うのが我々の流儀。日本に経済インフラとして投資ファンドが定着することは社会の健全な発展に必ず役立つでしょう。そのために自分のリーダーシップをいかんなく発揮できればと考えています」

(編集委員 小林明)

サッカーW杯、毎回観戦
 横浜翠嵐高校ではサッカー部。悔しかったのはセンターバックを任された高2の県大会準々決勝。終了直前まで1点差で勝っていたが、センタリングで競り負けて同点。延長戦で逆転された。「試合の潮目が変わる怖さを思い知った」
 今ではW杯の熱烈サポーター。これまで本大会は毎回現地で観戦しているが、2018年のロシア大会は計2週間強の休暇届を出して応援に駆けつけた。いつか日本代表が世界制覇する日を夢見るだけでも「仕事のストレスが吹き飛ぶ」。
リーダーを目指すあなたへ

誰にも負けない得意分野をコアとして鍛えること。留学も視野を広げるために有効です。あとは強い気持ちでできるだけ多くの場数を踏み、心や状況を的確に読み取れる感性を磨けば、どんな組織も統率できるでしょう。

(日本経済新聞)

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