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離れていても勝手に充電 ソフトバンク規制緩和受け開発 スマホなど電池切れなく 2022/02/01

電波を使い離れた機器を充電できる無線給電が実用段階に入った。海外では米新興がゲーム機やスマートフォン向けで先行。日本でも規制が緩和されるのに合わせてソフトバンクが携帯電話の基地局を活用した技術開発を始める。離れていても勝手に充電されるため、将来は充電切れの心配がなくなる。デジタル機器の利便性が飛躍的に高まり、新たな機器やサービス開発も進みそうだ。

「自動車から小型家電、イヤホン、電話、ウエアラブル端末に至るまで全てのモノが無線で電力に接続され、シームレスに最適な充電方法を決めていくだろう」――。米無線給電スタートアップのパワーキャストのチャールズ・ゲッツ最高経営責任者(CEO)はこう明かす。

米アップル製のスマホ「iPhone(アイフォーン)」では、「Qi(チー)」と呼ばれる置くだけで充電できる機能が搭載されている。「アップルがチーを搭載した直後、私たちの電話は鳴りやまなかった」(ゲッツCEO)

無線給電は電子レンジのように電波の電力を増幅させて1~10メートル先まで飛ばす技術。ケーブルを挿さなくても機器を充電できる。スマホの場合、これまでもチーのような非接触の充電技術はあるが、将来は、離れていても電波で勝手に充電される無線給電機能の搭載が期待されている。無線給電は電波干渉などの懸念も指摘されるものの、海外では規制緩和が進んでいる。

実際、パワーキャストはすでに米国、カナダ、オーストラリアなどで技術承認を取得済み。専用装置から電力を飛ばして任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」のコントローラーを充電できる「ワイヤレス・チャージング・グリップ」を米アマゾン・ドット・コムのサイトで販売する。

「世界で規制当局からの承認が続いている。45カ国以上で承認を得た」。無線給電を開発する米スタートアップのオシアのダグ・ストーバルCEOは、世界各地で事業展開を進めると意気込む。

同社も電力を無線で飛ばして機器を充電する技術を開発し、米国や欧州連合(EU)、英国などで承認を得た。米ウォルマートの倉庫のトラックの搬入管理などで採用されている。将来的に、店舗では天井に置いた送信機から電子ショッピングカートや電子値札を充電する利用も想定している。

一方、国土が狭い日本では、電波を発する機器は技術基準適合証明(技適)などで厳しく管理されており、規制当局は無線給電に慎重な姿勢を貫いてきた。例えば、スイッチのコントローラーを無線で充電するパワーキャストの製品も日本では使えない。

それでも総務省は2022年中にもまず屋内に限り、920メガ(メガは100万)ヘルツ近辺の電波を使って免許届け出制で無線給電を認める計画。24年ごろに屋外用にも拡大し、30年ごろには大電力の給電も可能にするなど段階的に規制を緩和していく方針だ。

第1弾となる屋内の産業用途では、パナソニックがカード型の受信装置を開発。スタートアップのスペースパワーテクノロジーズ(京都市)もタグなどに使える部品を開発し、工場や倉庫の製品・部品を電池レスで管理する用途を狙う。オシアも日本では半導体商社の丸文と組んで事業を展開する計画だ。

屋外での利用も認められる第2弾の規制緩和をにらみ、ソフトバンクは情報通信研究機構(NICT)の支援を受け、京都大学や金沢工業大学と協業して携帯の基地局から電力を飛ばす技術開発を始める。

ソフトバンクはまず1ミリワット以下の出力で、半径10メートルの範囲で基地局設備から電力を飛ばす実験を進める。イヤホンや防犯タグ、スマートウオッチなどの小型機器は携帯電波のエリア内にいれば電池交換が不要になる可能性がある。

同社は国内に約20万の基地局を持っており、通信会社としてのインフラを使って電気を届けるという新事業となる可能性がある。「通信データを使用量に応じて課金している通信キャリアのビジネスが、端末ごとに電力使用料を取るビジネスモデルに変わるかもしれない」とソフトバンク基盤技術研究室の長谷川直輝氏は話す。

NTTドコモなども無線給電の技術を公表しており、高速通信規格「5G」以降の次世代技術として注目する。

無線給電は送受信に関わる部品の開発もカギを握る。ノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野浩教授と、金沢工業大学の伊東健治教授らはドローンなどに給電するため、窒化ガリウムの素材を使い、無線給電の出力を3倍に高める研究を進めている。

海外でも研究開発の動きが激しい。「中国の開発の動きが特に脅威だ」と無線給電を長年研究する京都大学の篠原真毅教授は警鐘を鳴らす。中国では、スマホメーカーの小米(シャオミ)が数メートル先にあるスマホを充電する技術を公表した。

インドの調査会社、マーケッツアンドマーケッツによると、無線給電の世界市場は26年に134億ドル(約1兆5000億円)と21年(45億ドル)の3倍に拡大する見込み。これまで日本勢が参入に慎重だった中、海外勢による関連特許の取得も進んでいる。

(日本経済新聞)

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