金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    Facebook CEO Mark Zuckerberg

  • pic

    Amazon in Silicon Valley, San Francisco bay area

IT&デジタル業界最新業界

IT&Digital Industry Latest Information

アマゾン、「007」製作の老舗MGMのみ込む 9200億円で買収   動画配信、規模競う 2021/05/28

【ニューヨーク=白岩ひおな、シリコンバレー=佐藤浩実】米インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムが、米老舗映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の買収を発表した。債務を含む84億5000万ドル(約9200億円)の巨額買収で映画やドラマなどの配信コンテンツを拡充し、有料会員サービス「プライム」の基盤を固める。
アマゾンによるM&A(合併・買収)としては2017年に137億ドルで買収した米食品スーパー、ホールフーズ・マーケットに次ぐ過去2番目の規模となる。米メディアによると債務を除く評価額は65億ドルだった。経営が悪化したMGMが身売りを探り始めた20年12月の評価額55億ドルから、10億ドルを上乗せした。

1924年創業のMGMは人気スパイ映画「007」シリーズに加え「ロッキー」「ターミネーター」などのヒット作品を含む4000本の映画や、1万7000本のテレビシリーズを手がける。足元では新型コロナウイルスの感染拡大で新作上映による製作費の回収がままならず、20億ドル近い負債を抱えていた。

2億人強の有料会員を抱えるアマゾンは、MGMの豊富なコンテンツを武器に配信サービスの魅力を高める。コンテンツ分析を手がける米ディーゼル・ラボの調査によると、007シリーズの最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の鑑賞を予定する人の88%はこれまでプライム・ビデオのオリジナル作品を見たことがない。ファン層が新たにプライムに登録した場合、プライム・ビデオの視聴者数は最大14%増えると試算する。
ネット動画配信サービスの市場は米国だけで20年に34%伸び、210億ドルを上回る規模に拡大した。ケーブルテレビなど従来の放送からの切り替えは今後も続く一方で、足元ではコロナ禍の「先食い」の反動で成長鈍化も目立つ。消費者が動画配信サービスに払うのは月に50ドル程度が限度とされる。限られたパイを取り込もうと規模とコンテンツを追求する動きが過熱している。
象徴的なのがAT&T傘下のワーナーメディアと競合のディスカバリーが5月17日に発表した経営統合だ。両社ともに従来型の放送事業が主力で、動画配信の強化を急いでいる。新会社を率いるディスカバリー最高経営責任者(CEO)のデビッド・ザスラフ氏は「規模と(視聴者への)リーチが飛躍的に拡大する」と合併の狙いを話す。
動画配信の会員数は単純合算で6000万人弱だが、ドラマに強い「HBOマックス」などの世界展開を進めて長期的に4億人に増やす構想を描く。ネットフリックス(会員2億人強)やウォルト・ディズニー(同1億人強)など、億人単位の会員を前提に作品づくりや事業展開を進める競合と互角に戦うためだ。会員基盤が大きければ、多様な作品を抱えやすい。

アマゾンは3社とは一線を画す。同社にとっての動画配信サービスは、ネット通販の送料無料や音楽配信などを含む会員制度「プライム」の魅力を高めるための一つの要素だからだ。
他社にとってアマゾンは脅威だ。ディズニーでさえ1億人の会員をつかむのに1年あまりかかったが、世界でネット通販事業を展開するアマゾンのプライム会員はすでに2億人を超える。送料無料など日々の生活に根付いた特典を含むプライム全体の価値で戦えるため、純粋なエンターテインメントである動画配信単体のサービスよりも解約されにくい。
7月5日にCEOを退任するアマゾンのジェフ・ベゾス氏は26日の株主総会で「(MGMの)スタジオが持つ知的財産を21世紀らしく再考・発展させる」と述べた。同社のコンテンツ投資額は年110億ドルに上り、ネットフリックス(170億ドル)と遜色ない。「ターミネーター」など往年の名作を現代風に作り直すことも想定され、3~4社とされる「勝ち残り」の1席をアマゾンが取れば、残りの企業の競争は一段と激しくなる。
米議会や独禁当局は近年、IT大手に対する監視を強めている。25日には米首都ワシントンの司法長官が、電子商取引(EC)サイトに出品する外部事業者の価格を不当に拘束したとして、アマゾンを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。MGM買収の実現には、独禁当局による審査が今後のハードルになる可能性がある。

(日本経済新聞)

menu