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中国AI研究、米を逆転  論文の質・量や人材で首位 2021/08/08

人工知能(AI)研究で独走していた米国を中国が追い越しつつある。研究の質を示す論文の引用実績で2020年に中国が米国を初めて逆転した。AIは幅広い産業に組み込まれ、国家の競争力や安全保障をも左右する。米国の危機感は強く「AI覇権」を巡る米中の攻防が激化する。

中国の清華大学に6月、一人の女子学生が入学した。「生まれた時から文学と芸術に夢中です」。名前は華智氷。AIが生んだ「仮想大学生」だ。中国版ツイッターの微博(ウェイボ)などに投稿された動画は世界に拡散した。

清華大によれば彼女は「継続的な学習能力」を備え、文書や画像、動画のデータを学び「成長」する。中国国営の新華社によると認知レベルは人間の6歳に相当し、1年後には12歳に達するという。詩や絵を創作する能力に加え将来はウェブサイトを制作することも可能になる見通しだ。

狙うのは人間のように多様な知的作業をこなす汎用AIの実現だ。ベースには北京智源人工智能研究院(BAAI)が主導して開発したAI「悟道2.0」が使われている。100人以上の研究者が携わり言語や画像を扱う高い能力を得たとされる。AIを賢くする調節ポイントともいえるパラメーターの数は、20年に米国で登場し流ちょうな文章を作成して話題となったAI「GPT-3」の10倍だ。

米スタンフォード大学の報告によると、学術誌に載るAI関連の論文の引用実績で中国は20年に米国を初めて逆転した。シェアは20.7%と米国の19.8%を上回った。英クラリベイトによればAI論文の数は12年以降、中国が24万本と米国の15万本を圧倒する。画像の認識や生成などで優れた成果を上げている。

言語などを操る最先端のAIの実現には豊富な人材や資金が不可欠で、「開発できるのは一握りのプレーヤーに限られる」(東京都立大学の小町守准教授)。悟道2.0を作ったBAAIには清華大や北京大学、中国科学院、百度(バイドゥ)、小米(シャオミ)などが参加する。

AI関連の学会ではなお米国の企業や大学の存在感が大きいものの、個人に焦点を当てると中国の底力が浮かび上がる。世界最高峰のAIの国際会議「NeurIPS」の発表状況(19年)をみると中国出身者の割合は29%と首位で米国の20%を上回る。中国系のAI研究者は米国で活躍する例が多かったが、近年は自国での人材育成に力を入れる。AI研究で著名な清華大や上海交通大学だけでなく、浙江大学、ハルビン工業大学、西北工業大学なども論文発表の実績などを持つAI人材をそれぞれ2000人規模で抱えるとの報告もある。

AIで使うデータの多さも強みで、中国ではあらゆるものがネットにつながるIoT機器が30年に80億台に迫る見通しだ。自動車やインフラ設備、ロボットなどに装備され膨大なデータを生み出す。

中国は17年に「次世代AI発展計画」を策定し、世界のイノベーションの中心になるとの目標を掲げた。音声合成の国際競技会で14年連続優勝の実績を持つ科大訊飛(アイフライテック)など企業の技術力も高い。人口減を見据えて「労働力の不足を補う形でAIの活用を考えている」(伊藤忠総研の趙●(たまへんに韋)琳・主任研究員)との指摘もある。

「中国にAIの主導権を奪われかねない」。米グーグル元最高経営責任者のエリック・シュミット氏が委員長を務める米AI国家安全保障委員会は3月の報告書で危機感をあらわにし、巻き返しに動き始めた。米中の覇権争いは世界に影響を及ぼす。
(AI量子エディター 生川暁、下野裕太)

(日本経済新聞)

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