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背水の行政DX デジタル庁きょう発足 縦割り・閉鎖性 崩せるか 2021/09/01

デジタル庁が1日、発足する。縦割りで前例踏襲を重んじる行政の姿は停滞が続く日本経済のうつし絵でもある。アナログ国家のまま衰退の瀬戸際に立つ日本で、行政デジタル化の推進は経済・社会全体にデジタルトランスフォーメーション(DX)を波及させる最後のチャンスだ。

デジタル技術を取り入れるほど政策はガラス張りになる。情報を紙で管理し、閉鎖的な行政の方が「居心地がいい」人には、データ開示などの変化は疎ましい。

2月、ある県の幹部は新型コロナウイルスのワクチン接種記録システム(VRS)に拒否感を示した。「比べないでほしい」。自治体の接種実績がデータで透明化されると、せかされた気になり自分たちのペースで接種できないからだという。

官報購読者に7月、8192ページの冊子が届いた。東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)条約を載せた。1日分で過去最多のページ数だが、ネットで公開済みだ。法令公布は官報掲載による、との1957年の最高裁判例に従ったという。フランスは2016年に紙の官報を廃止した。

総勢約600人のデジタル庁はうち200人が民間出身。役所の流儀を覆すことが期待される。行政の変化が社会全体を変える一歩となる。

例えば他の先進国と比べて低いキャッシュレス決済の利用。金融機関の支店で入金作業をする中小企業は多い。「税金や水道代など公金支払いでキャッシュレス化が進まず窓口に来る」(税務会計システム大手幹部)。公金支払いがデジタル化されればキャッシュレス利用率も上がる可能性がある。

霞が関では役所の縄張り争いがくすぶる。

デジタル庁の看板政策に自治体システムの仕様をそろえる作業がある。総務省と連携して担う。だが「『自治体を仕切るのはどちらか』という縄張り争いが起きているようにみえる」(情報技術大手の担当者)。ある総務省職員も「うちとデジタル庁は関係ない」と言い切る。

医療や教育など「準公共分野」のデジタル化やデータ基盤整備も任務だ。文部科学省や厚生労働省などが、教科書デジタル化や健康情報の利活用などを検討してきた。人工知能(AI)を使った画像診断など薬事承認は厚労省の所管で「デジタル庁ができても規制のボトルネックは変わらない」との懸念がある。

デジタル庁は縦割り打破を掲げる。他省庁への勧告権を持ち、首相に指揮を求めることができる。それでも「我々の担当は『横断的なテーマ』」(デジタル庁担当者)と他省庁への配慮もうかがえる。自動運転やスマートシティーなど警察や消防が絡むテーマで存在感を示せるかが試金石だ。

行政デジタル化は01年のe-Japan戦略でも掲げた。韓国や台湾はアジア通貨危機やIT(情報技術)バブル崩壊に対処するため官民デジタル化を推進した。20年の国連の電子政府ランキングで韓国は2位、日本は14位だ。

菅義偉首相は8月31日の閣僚懇談会で、デジタル庁を司令塔に「3つの柱でデジタル改革を進める」と指示した。例として「スマートフォン一つで手続きがオンラインでできる社会を目指す」と語った。

3本柱は(1)行政のデジタル化(2)医療や教育など幅広い分野のデジタル化(3)年齢・地域・経済的状況などによらず全ての国民が情報にアクセスできる社会――をあげた。

コロナ禍という未曽有の危機をバネに日本の経済構造を変えることが改革の本丸だ。

(デジタル政策エディター 八十島綾平)

(日本経済新聞)

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