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人材育成 「遠隔」が転機 IT活用  遅すぎた夜明け 大学改革の突破口にも 2020/7/6

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため多くの大学がいや応なしに始めた遠隔授業。対面授業の代替だけでなく、遅れていたIT(情報技術)の活用を迫ることにもなった。研究者教育の見直しや大学自体の改革につながる可能性もある。
早稲田大学は今秋、最先端のITを学びたい社会人向けに「オンラインファースト」(遠隔授業優先)の新コースを開講する。理工系13大学・21組織と共同運営する「スマートエスイー(SE)」プログラムの一環で、受講者は人工知能(AI)など10科目程度を遠隔主体で学ぶ。
スマートSEは2018年度に始まり、ビジネスに直結するITを学べる場として人気を集めてきた。今学期の対面授業は遠隔への転換を迫られたが「プログラミングや機器の実習も遠隔で十分できた」(早大の鷲崎弘宜教授)と手応えを得て新コースを設ける。
米欧では大学の授業をインターネットで学べる「大規模公開オンライン講座(ムーク)」が普及し、世界から1億人以上の受講者を集める。米マサチューセッツ工科大なども遠隔で学位を取れるコースを設け、教育課程の多様化をもたらした。
一方で、日本ではコロナ禍前からオンライン授業に積極的だったのはソフトバンク系のサイバー大学(福岡市)など少数。オンライン優先は他大学でも検討の動きがあり、鷲崎教授は「忙しくて学べなかった社会人、特に企業の技術者らに学び直しの機会になる。新たな産学連携の芽にしたい」と意気込む。
大学が一斉に遠隔授業を始めて2カ月たち長所・短所が見えてきた。
名古屋大や慶応義塾大が実施したアンケート調査によれば、オンライン授業に肯定的な学生は6~8割に達する。「通学の時間を省ける」ほか「質問しやすい」「分からない箇所を動画で繰り返し視聴できる」といった理由からだ。
一方で、大型の装置を使う実験や演習は遠隔では難しい。学生同士や教員とのコミュニケーションが減り、孤独感や不安感を訴える学生も多い。
京都大の緒方広明教授は「コロナとの共存では遠隔か対面かの二者択一でなく、両者を併用して長所を生かすことが重要だ」と訴える。カギを握るのはオンラインで集まるデータを活用する「ラーニングアナリティクス(学習分析)」だ。
緒方教授は5月に始めた遠隔授業の一つで学生の視聴時間を分析した。3割の学生は学習時間が短いことが判明、教員がメールで注意すると、うち5割は再学習して規定時間を満たした。
コミュニケーション次第で学生の意欲や姿勢が変わることを裏づけ、「エビデンス(根拠)に基づく科学的な教育に道を開く」(緒方教授)。

米ムーク最大手の「コーセラ」は「深層学習」「量子コンピューティング」「データ科学」など先端領域を含む4千近い授業を配信。学生はキャリアづくりで必要な授業を自分で選べる。受講後には電子修了証「デジタルバッジ」が交付され、これを電子履歴書に添付して就職時に自身の能力を売り込む学生も増えている。
元早大総長の白井克彦氏は「教育のIT化が進めば、どこの大学を卒業したかより何を学んできたかが重要になり、大学の存在意義が問われる」と予言する。
経済協力開発機構(OECD)などの国際比較によれば、日本の教育現場でのIT活用は欧米より大きく遅れている。大学関係者からは「コロナ禍は遅すぎた夜明けをもたらした」と自省の声も上がる。遠隔授業を当座しのぎに終わらせず、政府や大学がIT活用戦略を描き、人材育成や大学組織の改革につなげることが求められる。
(編集委員 久保田啓介)

(日本経済新聞)

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