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孫氏、「水晶玉」英アーム売却 米エヌビディアに  高値提案で戦略転換  2020/9/13

ソフトバンクグループ(SBG)が傘下の英半導体設計アームを米半導体大手エヌビディアに売却する。売却額は最大400億ドル(約4兆2000億円)。SBGは約6.7~8.1%のエヌビディア株を取得し、同社の大株主になる。SBGの孫正義会長兼社長はアームをグループの「未来を見通す水晶玉」と位置づけてきたが、高額の買収提案を受けて戦略転換する。
「アームについてはSBGを支えるグループとして成長戦略を持っていた。しかし、ここまで良い条件なら(売却を)検討しなければならない」。8月下旬、SBG幹部はこう話していた。
7月から本格化したアームを巡るSBGとエヌビディアとの交渉。SBGはアームの新規株式公開(IPO)も検討してきたが、エヌビディアが高値のアーム買収を提案してきたという。
SBGは「(高値での売却を前提に)枠組みを交渉したい」と応じ、エヌビディア株の取得などに向け、株式交換の協議を始めた。この仕組みであれば、エヌビディアは現金支出を抑えられる。SBGは結果として4兆円規模でアーム株を売却し、その対価として現金に加え、エヌビディア株の一部を取得し、大株主になれる。
SBGは2016年、アームを約240億ポンド(約3.3兆円)で買収した。買収は長年、孫会長兼社長が心に温めてきた宿願だった。アームにはSBG本体が75%を出資し、残り25%は10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が出資する。
孫氏はアームを「未来を見通す水晶玉」と評した。スマホの半導体設計で約9割のシェアを握るアームは他の分野にも進出する。アームに集まる情報を駆使し、データが作る未来を予想する――。こんな期待から、同社をSBGに欠かせない事業会社と位置づけてきた。
そのアームを手放すのは大きな戦略転換となる。それだけに単純にアーム株を売却するのではなく、投資会社のSBGが今後さらなるリターンを得られる仕組みにする必要があった。
今回、エヌビディアは契約時にアームに20億ドルを支払ったうえで、その後、SBGとビジョン・ファンドに現金100億ドルとエヌビディア株215億ドル分を支払う。投資先である米シェアオフィス大手ウィーワークがコロナで苦戦するビジョン・ファンドの下支えになる。
さらにアームとの相乗効果でエヌビディアの業績や株価が一段と上向けば、SBGは保有株の価値向上も期待できる。投資会社の様相を強めるSBGにとって、エヌビディアへの再投資は必然とも言える。
「アーム買収直後に一度、エヌビディアとの連携は視野に入れた」。あるSBG関係者は話す。アームを買収した後の17年、SBGはビジョン・ファンドを通じエヌビディア株を保有したことがある。その後、同社株が大幅下落したことで手放した経緯があるが、当時から検討した連携に再挑戦するかたちにもなる。
ただ裏を返せば、英アームはSBG傘下では利益面で成長できなかったということだ。SBG幹部も同社傘下のままでは「アームの成長を100%保証はできない」と打ち明ける。
設計した半導体チップの出荷数は伸びたが、事業拡大の投資がかさみ、19年度の調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は2億7600万ドル(約295億円)と16年度の約3割にとどまる。ビジョン・ファンドの苦戦で財務改善を進めるSBGにしてみれば、固定費の重いアームを抱える余裕はなくなっていった。
エヌビディアはアームを傘下に収め、画像や音声認識の広がりで需要が拡大する人工知能(AI)計算用の半導体を強化できる。この分野でエヌビディアは高速計算が得意な「GPU」と呼ぶ半導体を手掛けるが、アームを手に入れれば精緻な計算に必要なCPUへの参入が視野に入る。
課題は少なくない。中国政府系ファンドなどが株式を持つ中国合弁と英本社の間で問題が生じている。6月には英本社が「不適切な行為が確認された」として中国合弁のアレン・ウー最高経営責任者(CEO)の解任を発表したが、合弁側は否定した。国家間のテック競争が激しくなるなか、グローバルにデータや技術を集め、活用する余地は狭まっている。
アームは米クアルコムや同ブロードコムなど多くの半導体メーカーを顧客に抱える。同じ半導体メーカーであるエヌビディアがアームを買収することで中立性が失われ、顧客離れが起きるとの見方がある。米企業の傘下に入ることでアーム自身が米中摩擦の矢面に立つ懸念もくすぶる。
米中摩擦などを背景に、当初SBGが描いていたアームの「水晶玉」としての魅力は薄れてきた。「投資会社として価値を最大化していくには、過去の思い入れを捨てるドライな決断をしないといけない」。あるSBG関係者はこうつぶやいた。

(日本経済新聞)

孫氏「次の革命」へ生みの苦しみ 英アーム売却 ソフトバンクG、投資戦略リセット 2020/9/15

ソフトバンクグループ(SBG)の成長戦略がみえにくくなっている。事業会社として買った英アームの売却を決め、ますます投資会社化は進む。だが、投資の世界に革命を起こすはずだった10兆円ファンド「ビジョン・ファンド」はつまずいたままだ。市場ではMBO(経営陣が参加する買収、きょうのことば)による非上場化の観測も強まる。自らの理想を「革命家」と話す孫正義会長兼社長が新たな構想を描くのは間違いないが、生みの苦しみの時期に入り、現状は手探りにみえる。(1面参照)
孫氏にとって、アーム売却を巡るエヌビディアの提案は「渡りに船」だった。7月から始まった交渉は円滑に進み、高値で売れただけでなく、エヌビディアに出資するかたちでまとまった。
エヌビディアがアームを傘下に置けば、半導体で成長余地の大きい人工知能(AI)計算向けの一大勢力になる。2社連合の大株主になることにSBGは魅力を感じた。
SBGはアームを巡り、2年後の新規株式公開(IPO)を検討してきた。だが「計画が必ずうまくいくとは証明できない」(SBG関係者)。目の前のエヌビディアの提案に一気に傾いた。
SBGには有利な条件でのアーム売却を、会社を取り巻く閉塞感の打破につなげたい思いもある。2016年のアーム買収以降、進めてきた「AI革命」の構想は停滞色を強めている。
「私がつくりだした、まったく新しい仕組み」。孫氏がこう自画自賛したビジョン・ファンドでは、世界の投資家から資金を集めて、AI関連の有望ベンチャーに投資し、成長を加速させる「AI革命」をビジョンとして掲げてきた。

ところが、米シェアオフィス大手のウィーカンパニーへの投資などで損失が生じ、1年前には2兆円超あった累計投資収益は20年6月末時点で2100億円程度に減った。当初は構想に賛同した投資家も、出資を渋りビジョン・ファンドの第2号は自己資金での投資にとどまる。
自らを革命家と位置づける孫氏は常に新たなビジョンに挑戦してきた。90年代にはインターネットの普及をにらんで米ヤフーに出資し、06年には英ボーダフォンの日本法人を買収して携帯通信事業に進出した。失敗も多いが「そのたびに崖っぷちをくぐり抜けてきた」(孫氏)。今回、グループの中核と位置づけたアームの売却は、構想をいったんリセットする意味合いがある。次の革命をどう描くかが問われる。
「AI投資だけじゃない。もっと広くデジタルに投資しないと」。最近、孫氏は社内関係者にこう話したという。SBGの保有株式価値(8月時点)は27兆円強だが、そのうち15兆円超は中国・アリババ集団が占め、投資ポートフォリオの分散、多様化が以前から問われている。
足元では運用会社を新設し、上場株への投資で分散を試みている。米アマゾン・ドット・コムや米アルファベットなど上場株式をすでに購入したが、あるSBGの関係者は「あくまで、これはまだ実験している段階だ」と話す。投資の間口は広げるにしても、その範囲や手法はなお流動的だ。
市場では孫氏がこれまでに何度か検討してきたMBOの観測が強まる。資産売却は、MBOに向けた財務改善との見方だ。あるSBG関係者は「資産売却は非上場化とは無関係」と説明する。ただ、新たな投資を模索するほど、株主の反応を気にしない「フリーハンド」が可能な非上場化の魅力は高まる。

孫氏は63歳。6月以降、70歳代になっても経営を続けるとの意思を公言するようになった。「60代で後継者に引き継ぐ」と言い続けてきたが修正した。あるSBG関係者は「コロナ禍で勢いが落ちていたようにみえたが、あの発言で『よみがえった』と感じた」と話す。孫氏の新たな構想のもとで、SBGはかたちをかえる可能性がある。

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