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国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

2億人退職の中国、衰える活力 窮余の定年延長が波紋 2023/03/17

「毎年1万元(約19万3000円)を積み立てよう」。湖北省武漢市でIT企業に勤める李麗さん(仮名、25)は今年から夫と老後の備えを始めた。積立金は2人の合計年収の5%。納税や住宅ローンの返済も考えると決して少なくない。

将来への不安を強めたきっかけは2月、職場の窓から眺めた医療保険改革を巡る抗議活動だ。多くの高齢者が個人向け医療費補助の減額などへの反対を訴えた。「医療保険の削減が既に始まった。公的年金なんてもらえなくなるんじゃないか」

干上がる年金
なかでも都市部の会社員らが加入する「都市従業員基本年金」への懸念は強い。積立残高を月平均の支出額で割った月数をみると、2012年は18.5カ月だったのが21年は11.2カ月まで短くなった。この10年近くで支払い余力が4割も減ったことを意味する。

いま中国では日本と並ぶ世界最速のペースで少子高齢化が進み、働き手の数も減り続ける。

1963~75年生まれは各年2000万人を超す中国の「団塊世代」だ。法定退職年齢(男性は60歳、女性管理職は55歳)に達すると大量退職時代に突入する。国勢調査などをもとに試算すると、2023年から10年間で退職者は計2億2800万人に及ぶ。

社会保障負担でみると22年に現役2.26人で高齢者1人を支えていたのが、20年後には1.25人まで減る計算となる。

このままでは経済成長の阻害要因となりかねない――。習近平(シー・ジンピン)指導部の危機感を映すように出てきたのが定年延長論議だ。

政府内では30年かけて男女の退職年齢を65歳にする案が浮上する。現役世代の減少や年金財政の悪化に対応する。社会科学院の鄭秉文主任は「中国の平均退職年齢は54歳で、先進国より11年も早い」と引き上げ余地は大きいと指摘する。

退職を控えた人々には不安がくすぶる。中国メディア「生命時報」の調査で「何歳で退職するのが健康に良いか」と聞くと、全体の74%が「55歳未満」と答えた。「61歳以上」は6%のみ。早期退職を望む声は根強い。

孫の世話優先
現代中国の子育てスタイルも一因だ。都市部では高い住宅費や教育費を賄うため一般的な夫婦は共働きする。退職した人は家庭内で孫の学校への送迎などを期待される。

一方で就職難を抱える若年層には定年延長によって就職の枠がさらに狭まるとの不満もある。

理由は違えど各世代で不協和音が生じる定年延長。とはいえ社会保障の破綻を避ける有効策は限られる。

事実上の一党独裁下にある中国では一般の人の政治参加意識は比較的薄い。それでも自らの生活に直結する問題には敏感になる。武漢市などで起きた医療保険改革を巡る抗議運動はその典型だ。

定年延長は、政府も慎重に事を進める構えだ。「真剣に検討し十分に論証を重ね、適時着実に実施する」。13日の全国人民代表大会(全人代)閉幕後の記者会見で、李強(リー・チャン)首相は慎重な表現に徹した。

高齢者層の比重はますます高まる。「シルバー社会主義」というべき状況下で対応を誤れば、反発の矛先は直接、共産党に向く。

(日本経済新聞)

住宅不況、野ざらし1年 抗議封殺、募る金融リスク 2023/03/16

「いったいいつになったら住めるのか」。2月18日、湖北省武漢市郊外で約300人の住宅購入者が抗議の声を上げた。経営再建中の中国恒大集団が開発する住宅プロジェクトだ。当初の引き渡し予定だった2022年3月30日から1年近く過ぎた今もコンクリートの躯体(くたい)をさらす。

返済拒否に制裁
抗議活動参加の代償は重い。匿名を条件に取材に応じた30代の男性購入者は「抗議活動への参加を理由に警察から要注意人物に指定され、自由な外出を制限されている」と明かす。それでも「恒大が我々の住宅購入代金を流用したせいで建設工事が進まず、いつ住めるかわからないのは納得できない」とあきらめるつもりはない。

月3800元(約7万4000円)の住宅ローン返済を停止したせいで、中国政府の個人信用情報システムのブラックリストに掲載された。今後の裁判所の決定によっては、新規の借り入れはもちろん、飛行機の搭乗や子どもの私立学校入学など高額消費まで制限される可能性がある。

不動産融資規制のために政府が開発会社の守るべき財務指針「3つのレッドライン」を導入したことなどをきっかけに噴出した中国の住宅問題。政府の当初の想定を超えて影響は広がり、経済だけでなく社会を揺るがす事態となった。米人権団体フリーダムハウスが集計した1月までの約1年間の中国の抗議件数は1173件だった。このうち住宅購入者は422件、未払い賃金問題など建設労働者は114件と、住宅関連の抗議件数が全体の5割弱を占める。

500兆円値下がり
中国は人口減少社会に突入し、かつてのような住宅需要の爆発的な伸びは見込めない。その影響は地方都市などで顕在化している。米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授などは上海市や北京市など4都市を1級都市、天津市などの直轄市や省都など31都市を2級都市、それ以外の263都市を3級都市と定義したうえで、各級都市別の住宅評価額を推計した。

その結果、3級都市の住宅評価額は21年初頭の188兆元から約1年半で26兆元(約500兆円)も値下がりした。ロゴフ氏らは「中古住宅は新築に比べてさらに大きく落ちこんだとみられる」と指摘する。住宅価格が持ちこたえている1級、2級都市とは対照的だ。

不動産市況の行方は金融システム問題に直結する。米シティグループは不動産担保融資などを含む中国の広義の不動産関連与信が130兆元あると試算。中国の名目国内総生産(GDP)を上回る。農村向け村鎮銀行など地方には経営実態のわからない零細銀行が無数に存在する。そうした銀行の重要な貸出先である不動産融資に潜在的な不良債権圧力が高まる。

習近平(シー・ジンピン)氏は共産党中央委員会が発行する理論誌「求是」への寄稿で足元の経済政策の重大課題として「不動産部門に起因するシステミックリスク、金融・地方債務の防止と解消」などを挙げた。社会の不安定化は共産党統治の安定を損ないかねない。

新首相に就任した李強(リー・チャン)氏は13日の記者会見で「安定最優先を堅持する」と話した。国務院(政府)トップとなった李氏にとってかじ取りを間違えられない課題となっている。

(日本経済新聞)

中国、半導体強国へ号令 「車載用全て国産に」政府主導 産業支援、米しのぐ規模 2023/03/15

習近平(シー・ジンピン)指導部が全国人民代表大会(全人代)で首相ら政府幹部を刷新し、3期目政権が正式発足した。喫緊の課題は不安が積み上がる国内経済だ。米国と並ぶ「強国」に向けた挙国体制に迫った。

首都・北京で13日閉幕した全人代。各種会議でひときわ目立ったのが、国有自動車メーカー出身の代表(国会議員に相当)らだった。

「国産半導体の搭載率を高めなければならない」。広東省の分科会で、トヨタ自動車やホンダと合弁を組む広州汽車集団の馮興亜総経理は力を込めた。マツダと提携する重慶長安汽車の朱華栄董事長も建議を出し、半導体の技術革新などを促す政策の改善を訴えた。

各社が示し合わせたかのように、半導体強化の提言が相次ぐ。異例の業界スクラムは4カ月前の秘密会議から始まった。

2022年11月8日。上海に各社の首脳が招集された。「自動車の半導体をすべて国産に切り替えなさい」。関係者によると、国有大手出身で業界に影響力を持つ元工業情報化相が出席者に向かって命じた。

中国の自動車産業はいまや生産、販売ともに世界最大の規模を誇る。各社が動けば、関連業種に及ぼす影響も大きい。総動員の狙いは明確だ。

秦剛外相は7日、初めての記者会見で「米国の言う競争はどちらかが死ぬゼロサムゲーム」だと批判した。半導体などの経済制裁を念頭に置いた発言で「封じ込めても中国の復興への歩みは止められない」と続けた。

中国汽車工業協会によると、車分野の半導体自給率は21年時点で5%未満にとどまる。海外依存は弱点だが、裏を返せば国産普及の余地も大きい。米国の制裁に苦しむ半導体各社を救うため、権力を一手に握る習政権が国を挙げた振興策に動くのは自然な流れだった。

3月2日には、習氏と近い劉鶴(リュウ・ハァ)・前副首相が半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)の北京工場を訪れた。半導体は国家安全に関わる核心だ。そう指摘し「新型挙国体制」で支える方針を打ち出す。

SMICだけではない。「挙国体制の利点を十分に発揮し、能力を集中して困難を打ち破るべきだ」。国政助言機関、全国政治協商会議(政協)では、同じく米国から事実上の禁輸措置を受ける半導体開発大手、飛騰信息技術の郭御風副総経理が強調した。

中国の動きはすべて習氏の言葉につながっていく。習氏は13日、5年ぶりに国家主席として演説し「中華民族の偉大な復興は不可逆的かつ歴史的なプロセスに入った」と宣言。「強国建設」へ「科学技術の自立自強に力を注ぐ」と述べた。

半導体の国産化は習氏の意を受けた看板政策だ。挙国体制も新首相に就いた最側近の李強(リー・チャン)氏が率いる。

関連企業が集積する上海市トップを務め、半導体のノウハウを高めてきた。22年春には新型コロナウイルス対策で厳しい都市封鎖に動き、強い批判を浴びた。しかし産業界の評判は悪くない。「彼のおかげで工場の全面停止を免れた」。SMICの幹部は漏らす。

市民の生活を縛る一方、SMIC社員の出勤や物流継続を特別待遇で認めた。米国との技術覇権争いのさなかだ。わずかな国内生産の停滞も許されない。習氏の唱える自立自強へ、李氏は忠実に半導体を守り続けた。

習氏と共産党への権力集中が進むなか、その一端を担う李氏の経済運営に世界の注目が集まる。国政の経験はほとんどない。壁も少なくない。

「中国政府は1兆元(約19兆円)を超える半導体産業のテコ入れ策を導入する」。昨年末から中国国内外でこうした観測が駆け巡る。5年にわたって補助金や減税で中国企業を支える内容で、規模はバイデン米政権の支援策を大幅に上回る。

それでも異論は広がる。「たったの1兆元というのは我々をひどく見くびっている」。政府の半導体政策に関わる業界団体設計部会のトップ、清華大学の魏少軍教授は業界団体の会議で「国家の大戦略として半導体産業を発展させていくだろう」と指摘した。

すでに上海や北京、広東省、浙江省など、地方政府は巨額補助金の導入に動く。しかし、最新設備や技術が足りなければ、競争力のある工場は生まれない。李氏の政策実現力が問われる。

何より「世界の工場」としての地位も揺らぎ始めている。

2月、河南省鄭州市。米アップルのスマートフォン「iPhone」を組み立てる台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の工場を訪ねると、驚くほど閑散としていた。

「いまは新たな従業員を募集していない」。1月まで働いていた元従業員の男性は明かす。往事には約50万人が働き、巨大な工場街を形成していた。「足元は10万~20万人まで減っている」。男性も1月分の給料を受け取って帰郷した。

強みとしてきた供給網(サプライチェーン)の中国離れは止まらない。半導体を組み込む製品の生産が減れば、習氏の言う科学技術強国も遠のきかねない。川上から川下まで、あらゆる分野で産業を再構築しなければならない苦しさがいまの中国にはある。

(日本経済新聞)

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