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中国IT株、時価総額90兆円減少  アリババなど10社3割減、政府の規制リスク警戒 2021/05/26

【上海=張勇祥】中国のIT(情報技術)、ハイテク株から資金が流出している。習近平(シー・ジンピン)指導部が締め付けを強めるアリババ集団をはじめ、騰訊控股(テンセント)など主要10社合計の時価総額は2月のピークから90兆円近く(3割弱)減少した。習氏の肝煎りで開設した新株式市場「科創板」も安値圏で推移する。海外マネーをひき付けて巨大化してきた成長モデルは曲がり角にある。

中国のプラットフォーム企業の状況を端的に示すのが、対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を手掛けるテンセントだ。20日に発表した2021年1~3月期決算は、純利益が477億元(約8000億円)と前年同期に比べ65%増えた。独占禁止法違反の罰金で最終赤字に転落したアリババと業績は対照的だ。
それでも株価は決算発表後に続落。25日は反発したが、2月に付けた高値からはなお2割低い。好業績でも株安が止まらない背景には中国政府の監視強化がある。
アリババや傘下の金融会社アント・グループへの制裁が目立つが、他のネット大手も例外ではない。テンセントは5月に入って、運営するアプリが違法に個人情報を収集しているとして是正を命じられた。4月末には、テンセントやネット通販の京東集団(JDドットコム)、出前アプリの美団など13社は中国人民銀行(中央銀行)から呼び出しを受け、金融監督を全面的に受け入れるよう指導を受けた。
テンセントが主要株主に名を連ねる京東集団やネット通販の拼多多、美団などの株価は軒並み大きく下げている。アリババ、テンセントは有望スタートアップへの投資を繰り返し、その成長が両社の時価総額を押し上げてきた。最近は株安が連鎖する逆回転が目立つ。「投資銀行はテンセントなどの株価が割安と強調するが、当局の規制リスクが懸念材料だ」(国都証券)との声は多い。
香港に上場するアリババとテンセント、美団、京東、ショート動画アプリを手掛ける快手科技の時価総額は、中国株の多くが高値圏にあった2月17日との比較で2~4割下げた。時価総額の合計は13兆5000億香港ドル(約190兆円)程度と、同5兆1000億香港ドルあまり減少した。
米国上場の拼多多と百度(バイドゥ)、陸金所、動画配信のBilibili(ビリビリ)、ゲームの網易の時価総額も同期間で約1500億ドル(16兆円強)減っており、10社合計の減少額は88兆円に達する。
アント・グループの上場延期を機にアリババ株が昨秋から下落基調に転じ、監視強化の動きが強まるにつれて他のIT、ハイテク株にも売りが広がった。米アップルなど米IT大手の堅調な株価と差が大きい。米ナスダック総合指数も2月中旬以降、高値圏で推移する。
金融事業は特に当局の監視が厳しい。習指導部はアリババなどプラットフォーム企業が金融事業を急速に拡大し、金融リスクの増大につながりかねないことを懸念した。地方銀行と次々と連携することで、既存の金融秩序を塗り替えかねないことにも警戒を強めた。
中国当局が締め付けを強めた結果、フィンテック企業の多くは株価が振るわない。5月7日にニューヨーク証券取引所に上場し、共済に似た互助サービスなどを手掛ける水滴の足元の株価は7ドル台と公募価格の12ドルを下回る。同社にはテンセントが2割を出資する。
ネットを通じた融資仲介を手掛ける陸金所も株価は公募価格を割り込む。アント・グループと同様に利用者の融資申し込みを銀行に紹介し、銀行から手数料を得る事業を柱に据える。このビジネスモデルは金融リスクの増大につながるとして当局が縮小を求めており、陸金所は自己資金での融資を増やすなど対策が必要になる。貸し倒れや金利リスクへの懸念が株価の重荷になっている。
IT、ハイテク業種の成長期待の低下は大手にとどまらない。科創板の主要銘柄で構成する株価指数は20年秋の高値から2割下げた。同指数はアント・グループの上場が当局によって差し止められた11月以降に下落が鮮明になった。
今後の新規上場で最大の目玉とされていた動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)は、中国事業の上場計画を凍結した。規制リスクと評価額の低下を勘案したとの見方が大勢だ。
海外マネーは先進国に比べて利回りの高い元建て債券に向かっている。外国人による元建て債の保有額は4月末に3兆6000億元(約61兆円)を超え1年で6割近く増えた。国債や政策銀行債が大半とみられる。
企業が技術革新をテコに自由に新たなサービスを生み出してきた中国はIT強国となった。習指導部による民間企業の締め付け強化でその強みがそがれるとの懸念が投資家の間で強まっている。

(日本経済新聞)

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