金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    Federal Reserve Board Chairman Jerome Powell

  • pic

    Wall Street sign near New York Stock Exchange

株価時価総額最新情報

Stock price market capitalization latest information

ユニコーン、新陳代謝加速  ECなど1割増 AIは退潮 世界で対コロナに資金  2021/1/15

世界のスタートアップの新陳代謝が加速している。2020年に生まれた企業価値10億ドル(約1040億円)を超える未上場企業「ユニコーン」106社のうち、ソフトウエアと電子商取引(EC)の割合は計30%と19年より1割近く増えた。一方、人工知能(AI)は13%から3%に急減した。新型コロナウイルス禍に強い技術に資金が集まる傾向となっている。

米調査会社CBインサイツのデータ(20年12月24日時点)をもとに日本経済新聞が分析した。
革新の潮流変化
新ユニコーンの業態を比べるとイノベーションの潮流の変化がうかがえる。106社のうち、企業数ではソフトウエアとフィンテックがともに16%で最多だ。ECが14%、ヘルスケアとサイバーセキュリティーがそれぞれ8%ずつだった。
19年はフィンテックが21%と最も多く、AIが13%、ECが11%、ソフトウエアが10%、物流が7%の順番だった。この1年でAIと物流がぐっと割合を下げ、成長産業の顔ぶれは入れ替わった。変化の背景にあるのは、コロナの感染拡大だ。
感染が広がった20年春以降、世界中でテレワークが広がった。仕事の手続きをクラウド上で簡単にできるサービスの需要が増えた。ネット通販市場も拡大。こうした経済や社会の変化に対応できる技術やサービスを持つ新興勢に成長資金が集まった。

20年8月にユニコーン入りした米リップリングは給与計算から福利厚生まで、従業員に関するデータ作成を一つのソフトで管理できる。創業者のパーカー・コンラッド最高経営責任者(CEO)は「前例のない問題を解決できる技術で何千の企業を顧客にできた」と語る。11月にユニコーン入りしたイスラエルのケイトネットワークスはテレワークに対応した高度なセキュリティーシステムを提供。世界60カ所に接続拠点を持ち、10月には日本法人も設立した。

20年9月にユニコーンになったECサイト開設支援の仏ミラクルは、米オフィス・デポや仏スーパー大手カルフールなどを顧客に持つ。複数の取引市場をつなぎ、販促や在庫管理を簡単にできるのが強みだ。20年1~6月の流通総額は12億ドルと前年同期比2倍に成長した。
新型コロナがもたらした急速な変化に対応する「コロナテック」の成長と対照的に、19年まで多くのユニコーンを生んだAIの勢いはしぼんだ。
米スタートアップ支援のWiLの共同創業者、伊佐山元氏は「AIへの投資が減ったのではなく、成長産業がAIを自社の技術に組み込んでいる」とみる。
各社にAI普及
例えば、カナダの新興、エレメントAIは20年11月30日、米ITサービスナウの買収提案を受け入れた。医療やECなど多くの分野にAIが普及し、それらの企業が独自のAI開発に動く中、AI専業の企業は数年前よりも成長資金を集めにくくなっている。一方でAIを使う側も、買収などで自社に取り込む意識を強くしていることが背景にある。
21年以降はどうなるのか。米VC、キャピタルの共同創業者のブレア・シルバーバーグ氏は「20年と同じ流れだ」とみる。「テレワークの拡大、飲食ビジネスの縮小、貸しオフィスの増加という3つのトレンドに合った投資をする」。米VCのメタプロップのザック・シュワルツマン氏は、コロナ禍で生まれた技術を「ランプの魔神のように一度現れたらどうしようもない不可逆的なツールだ」と語る。こうした技術はすぐ標準化され「新たな技術を生む循環がどんどん速まっている」と指摘する。
世界のユニコーンは500社を超えたのに、日本のユニコーンはAI開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)や情報アプリのスマートニュース(同・渋谷)など4社にとどまる。世界で台頭するソフトウエアやECなどの分野ではゼロだ。成長のためのリスクマネーの担い手が少なく、小粒なまま上場するスタートアップも多い。
スタートアップへのお金の流れが太くなれば技術革新をもっと促し、大企業との連携も進みやすくなる。ゆでがえる状態とも言える現状を放置すれば、どんどん大きくなる世界の技術革新のうねりに取り残されてしまいかねない。
(鈴木大祐)

menu