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米、格差減へ金融規制強化 上限金利厳格に/銀行の人種差別監視  民主左派が相次ぎ提案、トランプ路線を修正 2021/06/25

【ニューヨーク=伴百江】バイデン米政権が金融規制の見直しに動き始めた。リーマン危機後の規制で金融機関の健全性は高まったものの、富の格差は解消されていない。富裕層寄りのトランプ前政権の路線を修正し、弱者保護に軸足を置くのが狙いだ。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員など左派の影響を色濃く反映している。

バイデン大統領は21日、イエレン財務長官やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、ゲンスラー米証券取引委員会(SEC)委員長ら金融当局者と会談した。バイデン氏が金融当局者らを一堂に集めて会談するのは初めて。コロナ禍からの経済回復に加え、政権が重視する金融包摂などを協議。金融規制の見直しが本格的に動き出す。

金融規制を巡ってはオバマ政権時代の2010年、銀行の市場取引を規制する「ボルカー・ルール」などを導入した。これにより大手行の健全性や収益力は高まった。しかし、当時問題となった米社会の格差は解消されていない。

改革第1弾として民主党左派が求めるのが、低所得層などを対象にした消費者金融だ。前政権時代にノンバンクによる高金利融資を後押しするようなルールができた。州の金利規制に縛られたノンバンクは、上限金利のないユタ州やデラウェア州に本店を置く銀行と組むことで、規制の網を回避する。金利水準は年400%近く、借り手の信用力によっては600%程度に及ぶこともある。

これを上院銀行委員会のシェロッド・ブラウン委員長らが批判し、上院は5月にこのルールを撤廃した。下院も6月下旬に可決する見通しで、今後州ごとの上限金利がより厳格に適用される可能性がある。

学生ローン問題も深刻だ。ローン残高は現在1.7兆ドルに達し、4500万人の学生と卒業生が債務を抱える。バイデン政権は総額30億ドルの支払いを免除し、今年9月まで利払いの繰り延べを決めた。さらに民主党は1人5万ドルの学生ローン支払い免除を要求する。「議会の承認の必要がなく、大統領令ですぐに承認が可能だ」とウォーレン議員はバイデン氏に圧力をかけるが、今のところ決断には至っていない。

金融包摂も規制強化の目的の一つだ。金融の人種平等は米国で長い間の課題だ。米国で銀行口座を持たない世帯の割合は5%強に上り、人種別では黒人・ヒスパニック世帯が64%を占める。

民主党のアル・グリーン下院議員は、消費者金融保護局(CFPB)内に覆面職員を派遣する部門設立の法案を提出した。黒人やヒスパニックの職員を「顧客」として銀行支店に送り、融資や銀行口座開設で人種差別がないか調査する内容だ。

格差拡大は続く。米エコノミック・ポリシー・インスティテュートの調査では、企業トップと一般社員の平均報酬の格差は19年に320倍。シティグループやJPモルガン・チェースでは20年に400倍前後に達する。

格差解消に向け、ウォール街などへの規制強化が動き出している。「巨額の自社株買いをしながら、中小企業や経済成長に役立っているとはいえない」。5月下旬、ブラウン議員はJPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)ら大手行トップを招いた上院公聴会で批判した。

経営者の自社株買いが一般株主に不利に働いているという問題もある。現行法では経営トップが自社株買いをする際、実施計画を示しながら購入しなかった場合、報告義務などがない。計画を受けて株式を購入した投資家が損失を被る可能性がある。SECのゲンスラー委員長は改正法案の作成を始めている。

バイデン政権は富裕層には株式などの譲渡益(キャピタルゲイン)課税の増税もめざす。税率を20%から39.6%に上げる案を示している。

もっとも、金融規制を巡る民主党と共和党の溝は大きい。共和党のトゥーミー議員は上院公聴会で大手行首脳に「資本主義者であれば株主価値の最大化を求めるのが使命だ」と指摘した。民主党は上下両院で実質的に過半を占めているとはいえ、規制改革の中身はなお曲折がありそうだ。

(日本経済新聞)

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