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プリファード、20事業で稼ぐ  健康分析システムなど商用化 ビジネス連携を加速、収益の5割超へ 2021/08/25

人工知能(AI)開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)が他社との共同事業と自社単独を合わせた約50件のプロジェクトのうち、約20件で商用化のメドを付けたことが分かった。AIを使った健康分析システムなどを投入する。実証実験などへの協力で対価を得るだけでなく、具体的なビジネスで収益を上げる段階へ移行する。2~3年内に全体の5割超を稼ぐ計画だ。

研究開発段階のプロジェクトは計約50件が進行中だ。西川徹代表兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞社のインタビューに対して「集中すべき事業が絞れてきた。食品など健康関連の分野で、近く結果を出せるだろう」と述べた。

食品分野では日清食品ホールディングスと共同で2021年下期をメドに、栄養バランスの取れた食事の宅配サービスを始める。プリファードはAIを使い、食事が利用者の健康状態に与えた効果を解析するシステムを構築する。将来は利用者ごとに適したメニューをAIが提案するサービスも始めたい考えだ。

健康関連は花王とも連携し、新たな美容カウンセリングサービスを準備中だ。皮脂から採取した約1万3000種類のRNA(リボ核酸)の働きをAIを使ったアルゴリズム(計算手法)で分析し、肌内部の変化を高い精度で予測する。

14年に創業したプリファード。AIの一種である深層学習(ディープラーニング)に強みを持ち、研究開発型スタートアップの代表格として知られる。技術力の高さが評価され、トヨタ自動車をはじめ、ファナックやENEOSグループ、みずほ銀行などから出資を受けている。

各業界の大手と連携を深める半面、深層学習の活用法をうまく見いだせない事例は多かった。具体的なサービスを市場に投入できず、共同研究や実証実験の対価が収益全体の大半を占める時期が続いてきた。

転機は教育事業
転機は20年夏に参入した教育事業だ。独自の自社教材を使ったプログラミング教室のフランチャイズチェーン(FC)展開を開始。当初は3教室だったが、足元では500教室超に急拡大した。「研究者や技術者ばかりの当社が、実際のビジネスを回す体験ができた」(西川氏)との手応えを得たという。

この成長モデルを横展開するため、人事制度を整えた。全社のプロジェクトをエンターテインメントやライフサイエンスなど4領域に分け、それぞれに担当役員を置く体制を21年1月に導入。西川氏と岡野原大輔代表兼最高執行責任者(COO)の2人で全ての事業を統括する仕組みからシフトした。

成果は出てきている。物流分野で荷下ろし作業向けのロボットを制御するソフトウエアの提供を5月に始めた。

最大ユニコーン
7月にはENEOSと連携し、新物質の開発などに使う化学素材を探索するクラウドサービスを開始。同社の藤山優一郎・執行役員兼中央技術研究所長は「サービス開始までが非常に速かった」と驚きを隠さない。岡野原氏は「商用化したサービスが伸び、2~3年後には(共同研究や実証実験関連の収入を)逆転する」と予測する。

一方で、中長期の視点での研究開発や新事業の開拓も続ける。9月上旬~10月中旬に、深層学習の活用法を探る企業の事業担当者向けに講座を開く予定だ。有望な将来の協業先の発掘につなげる。大量のデータの処理が求められるAIの世界で、競争力の源泉として重視するスーパーコンピューターの開発にも投資を維持する。

日本経済新聞社の「NEXTユニコーン調査」をみると、プリファードの推計企業価値は20年9月末時点で3571億円。国内最大のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)で、2位のスマートニュース(1237億円)の3倍近くに達している。

共同研究や実証実験への協力は相手企業の事情に左右されやすく、継続的な収益にはつながりにくい。息の長いAI開発を続けるためにも、収益源の多角化は急務になる。研究開発とビジネスの両輪を回す経営手腕が問われている。
(山田彩未)

(日本経済新聞)

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