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名ばかりESG、淘汰の局面に  独運用大手に当局調査の報道 各国、規制強化の動き 2021/08/28

米独当局が、DWSの調査に入ったと報じられた=ロイタ-
急拡大するESG(環境・社会・企業統治)投資の実態に焦点が当たり始めている。26日の欧州株式市場ではドイツ銀行グループの資産運用大手DWSの株価が前日比14%安と急落した。米国とドイツの金融当局がESG投資への取り組みを巡ってDWSに調査に入ったとの報道がきっかけ。世界の金融当局は、名ばかりで内実を伴わないESG投資の規制を強めており、ESG投資は淘汰の局面に差し掛かった。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)など欧米メディアがいっせいに報じた。報道によると、きっかけは今年3月までDWSでグループ・サステナビリティー・オフィサー(GSO)を務めていたデジリー・フィクスラー氏が「ESG投資の取り組みが実態よりも誇張されている」と主張したことだ。

フィクスラー氏は2020年6月に入社。8月に会社全体のESG戦略を推進するために新設されたGSOに就任したが、約半年で退社した。不当解雇として訴訟を起こしているという。

DWSは20年の年次報告書で「ESG統合」の運用資産額が4590億ユーロ(約59兆円)と公表した。全運用資産の約6割にあたる。運用担当者が銘柄を選別するアクティブ運用で、保有銘柄の9割以上についてESGの側面を分析・評価している場合を「ESG統合」と分類する。ESG評価には複数の外部評価機関のデータを活用している。

WSJによると、DWS社内の電子メールやプレゼンテーションに、ESG統合の適用はごく一部で、定量化や検証可能なESG統合が行われていないという社内評価があったという。フィクスラー氏は明確な戦略や石炭などに対する方針がない点も指摘し、ESG統合の資産額の修正などを求めていたもようだ。

DWSは26日、当局の調査や訴訟などには「コメントしない」としたうえで、一連の報道に関連して「根拠のない疑惑」とし「元従業員の主張を断固として否定する」と述べた。米証券取引委員会(SEC)と独連邦金融監督庁は調査を公表していない。

DWS株が急落したのは、名ばかりのESG投資への警戒感が強まっていることがある。ESGに関連した当局の調査は異例とあって、市場に驚きが広がった。

世界持続的投資連合(GSIA)によると20年のESG投資額は35.3兆ドル(約3900兆円)。世界の投資マネー全体の約4割に達する。人気を受けて特に個人投資家向けの投資信託では、販売促進目的で名称にESGなどと入れる商品が増加した。各国・地域が投資家保護のために規制強化を進めている。

欧州連合(EU)は3月にサステナブルファイナンス開示規則を導入した。資産運用会社などに対し、自社のファンドを3つに分類し、ESGをどう考慮しているかなどの開示を求めている。

独連邦金融監督庁は8月に公表した指針案に、ESGなどと名称に入る場合、運用資産の最低75%に持続可能性の基準と要素を適用すると盛り込んだ。SECはESGファンドなどの情報開示強化とファンドの名称規則の更新を検討している。日本でも金融庁がESG投信の情報開示の拡充を求めている。

規制強化が進むとともに、今後、運用会社がESGの看板を外したり、運用手法を見直したりする動きが広がる可能性が高い。DWSに問題があったかどうかは現時点では不明だが、こうした当局の調査も増えていくとみられる。

ESGをどう運用に生かすか、各運用会社は独自の手法を競っている。規制が厳しくなりすぎれば「運用の自由度が奪われ、運用収益を上げづらくなる」(国内運用会社)との懸念もある。

ただ、ESG投資の質が保たれているかどうか外部からも判別できなければ、投資家は資金を預けられずESGブームに水を差しかねない。日本投資顧問業協会の大場昭義会長は「運用会社が自社のESGの定義や使用データなどの開示を増やして事例を積み上げ、市場の共通認識を醸成する必要がある」と指摘する。

(ESGエディター 松本裕子)

(日本経済新聞)

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