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米投資ファンド、バフェット流経営に軸足  相次ぎ保険会社買収 安定収入で市場変化に強く 2021/09/02

【ニューヨーク=伴百江】ブラックストーンやKKRなど米大手投資ファンドによる保険会社の買収が相次いでいる。企業買収後に価値を高めて、数年後に売却する従来の投資サイクルにとらわれず、長期にわたる保険料収入や資産を得て市場環境に左右されにくい安定的な成長につなげる狙いだ。傘下の保険会社の保険料をテコに事業を拡大してきたウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイ流の経営に軸足を移しつつある。

ブラックストーンは7月、保険大手AIGの生命保険・年金事業の9.9%の持ち分を取得すると発表した。同時にAIGの運用資産を最大920億ドル受託。スティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)は「AIGの資産運用チャネルの獲得で、新たな成長の段階に入った」と述べ、手数料収入や長期資産の拡大に期待を表明した。

投資ファンドはこの数年、保険業界のM&A(合併・買収)で最も活発なプレーヤーになっている。KKRは昨年、ゴールドマン・サックスから保険大手グローバル・アトランティックの買収で合意し、今年2月に完了した。カーライル・グループやアポロ・グローバル・マネジメントなども保険会社や一部事業を買収した。

米保険格付け会社AMベストによると、投資ファンド傘下の保険会社の運用資産は2020年末時点で3759億ドル(約41兆円)と5年で2倍に拡大、保険業界全体の資産の7.4%を占めた。

なぜ保険会社を買収するのか。キーワードは「パーペチュアル・キャピタル(Perpetual Capital)」だ。投資家の資金を超長期や無期限で預かり運用する戦略で、市場環境の変化に惑わされずに利回りや運用手数料を確保する。そのための代表的な投資先であり長期資金の供給源が保険契約からの安定収入が見込める保険会社だ。

投資ファンドが保険会社に傾注するお手本は、自動車保険大手ガイコなどを傘下に収めるバークシャーの戦略だといわれる。バークシャーは契約者から保険料を受け取ってから保険金を支払うまで、自由に使えるお金「フロート」をベースに事業に投資し、安定的に拡張してきた。

種をまいて、成長させて売却し、そのお金でまた種をまく。投資ファンドの伝統的な手法だけが唯一の戦略ではなくなった――。ブラックストーンのジョン・グレイ社長兼最高執行責任者(COO)はこう語る。同社のパーペチュアル・キャピタルは21年6月末時点で総額1695億ドルと資産運用全体の25%を占め、1年間で55%増加した。KKRもグローバル・アトランティックの買収により、運用資産全体に占めるパーペチュアル・キャピタルの比率が9%から33%に拡大した。

投資ファンドによる保険会社の買収が急増する背景には両者の思惑が一致していることがある。保険会社は低金利下で運用難に直面している。一方、投資ファンドはプライベートデット(未公開企業融資)や不動産などの代替(オルタナティブ)投資にも強く、買収した保険会社の運用資産を多様化させて利回りの改善を狙う。

AMベストによると、投資ファンド傘下の保険会社の資産ポートフォリオはプライベートデットが54%と保険業界の平均(37%)よりも高い。また、資産担保証券(ABS)や仕組み証券といった流動性の低い資産も投資ファンド傘下の保険会社の方が多くなっている。

こうした運用には懸念も指摘される。米保険業界の州規制担当者で構成する全米保険コミッショナー協会(NAIC)は「投資ファンド傘下の保険会社の資産配分は投資のボラティリティー(価格変動率)とリスクを高める可能性がある」という。バークシャーのバフェット氏は保険会社によるオルタナティブ投資拡大について「危険なゲームだ」と警告する。

規制当局も保険会社の経営で存在感を高める投資ファンドの動向を注視している。投資ファンドによる保険事業強化が超長期で狙い通りの成果を上げるのか。検証するにはまだ時間が必要だ。

(日本経済新聞)

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