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IPO初値上昇率2.3倍、15年ぶり高水準  20年、「値決め慎重」で企業に不満も 2021/1/23

2020年の新規株式公開(IPO)で、上場初値が公募・売り出し価格(公開価格)の平均2.3倍に達し、15年ぶり高水準になった。新型コロナウイルスによる市場混乱で公開価格が抑えられた影響があるが、初値上昇率が5倍を超えたIPOも全体の約1割にのぼり、公開価格の妥当性をめぐって企業の不満もくすぶっている。
20年にIPOした93社の初値を日本経済新聞社が集計した。初値上昇率はデータをさかのぼれる00年以降では2番目の高水準だった。

新型コロナによる相場急落のあおりで20年3~4月に予定していた18社がIPOを延期した。6月下旬に再開されたものの、金融情報サービス会社フィスコの小林大純氏は「証券会社が公開価格の『値決め』で慎重にならざるを得なかった面がある」と指摘する。
平均の初値上昇率2.3倍は、東証の気配値の運用では上場初日にかろうじて売買が成立する水準だ。個別銘柄でみると、11倍台だった人工知能(AI)システム開発のヘッドウォータースを筆頭に、同5倍超が9社、3倍超は20社あった。
日本のIPO市場は、初値からの一段高を狙った個人投資家の買いが集中し、IPO直後の株価が急騰しやすい。公開価格は機関投資家へのヒアリングに基づく仮条件の範囲で決まる一方、買い注文を入れる個人は適正株価(フェアバリュー)よりも株価急騰の経験則を重視するからだ。
証券会社の手元に売れ残らないよう公開価格を「適正価格から2~3割低め」に設定する「IPOディスカウント」も影響している。「初値が高騰しても、株価は時間の経過とともに公開価格付近に落ち着くことが多い」(大手監査法人)とされ、証券会社は「適切に値決めしている」(国内証券)との姿勢を崩していない。
しかし、20年はIPO直後だけ限られた短期資金が回転して買いが集中する傾向に変化の兆しも見えた。フィスコによると、IPO銘柄の52%に当たる48社は同年末の株価が公開価格を5割以上、上回った。このうち26社は初値を超えていた。
IPOから数カ月経過しても株価が公開価格の4倍近くの水準にあるIT系企業の幹部は「IPOディスカウントなどの仕組みを否定はしないが、公開価格と市場評価との格差が開きすぎるのは問題だ。同じ株数で本来ならもっと多くの資金を調達できたはずだ」と不満を口にする。

公開価格の仮条件はすでに上場している類似企業の株価形成などをベースにして決めるため、革新的な独自ビジネスモデルが評価されにくくなっている可能性もかねて指摘されてきた。

IPO銘柄の株価が機関投資家を中心に形成される米国市場では20年の初値上昇率は34%、香港市場では18%にとどまった。その米国でさえ、IPO企業や既存株主が公開価格と初値の格差を問題視し、新株を発行しない直接上場(ダイレクトリスティング)という手法も広がっている。
日本のダイレクトリスティングは1999年の杏林製薬以降、途絶えている。ただベンチャーキャピタル(VC)の資金規模が大きくなるにつれ、資金調達を必ずしも目的としない上場は増えている。
ニッセイ基礎研究所の原田哲志氏は「ガイドラインの整備など、国が主導して普及に取り組むべきだ」という。
超短期で大きな利益が期待できる人気IPO銘柄の割り当ては、一部の証券会社で優良顧客の囲い込みにつながっている面もある。IPO企業、投資家、証券会社の利害が絡み合う公開価格の値決めをどう調整するか。15年ぶり高水準となった初値上昇率は、そのバランスの難しさをあらためて浮かび上がらせた。
(生田弦己、堤健太郎)

(日本経済新聞)

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