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2023年世界のIPO投資、10年で最低 米欧金融引き締めで 2024/01/17

世界で新規株式公開(IPO)への資金流入が減少している。2023年は約1100億ドル(約16兆円)と前年比3割近く減り、過去10年で最低だった。米欧の金融引き締めなどで資金調達環境が悪化し、投資家が慎重姿勢を強めている。新型コロナウイルス下の景気対策による「カネ余り相場」の反動もあり、新興企業の成長には逆風だ。

ロンドン証券取引所を運営するLSEGのデータ(重複上場などは除く)をもとにIPOに対する資金流入額を調べると、23年は1117億ドルと前年比27%減った。前年割れは2年連続で過去10年で最も多かった21年(約4100億ドル)比では7割減った。

内訳をみると、新株を投資家に買ってもらい資金を調達する公募が19%減の851億ドル、大株主の保有分を買ってもらう売り出しが43%減の266億ドルだった。IPOの社数も1299社と6%減っており、新興企業への投資意欲は低調だ。

カネ余り相場の反動も出た。21年は各国の金融緩和策で投資家が資金調達しやすくなりIPOへの資金流入が急増したが、22年以降は状況が一変。世界的な金融引き締めで投資家はポートフォリオを見直し始め、大手企業で構成される米ダウ工業株30種平均などが高値を更新する一方、成長リスクがあるIPOには資金が回りにくくなった。

地域別では、全体の6割を占めるアジア太平洋への流入額が656億ドルと38%減った。中国では合肥晶合集成電路など半導体関連2社がそれぞれ16億ドル規模を集めたが、不動産不況などで景況感が悪化する中、IPOの社数が減っている。市場では「政府規制と景気悪化という2つのリスクがあり中国株への投資は当面凍結している」(ある海外機関投資家)との声もある。

米州は2.5倍の212億ドルと増えた。米国上場し、23年で最大額のIPOとなった英半導体設計アームが52億ドルを集めたことなどが押し上げた。ただ流入額は活況とはほど遠く、21年比では9割減の水準だ。17〜20年までの各年の水準にも届かない。

米国のIPO市場に詳しい三菱UFJアセットマネジメントの安井陽一郎チーフファンドマネジャーは「業績が堅調な企業の上場は目立ったが、卓越した技術力で将来の大規模な成長が期待できる企業の上場は乏しかった」と分析する。

米CBインサイツによると、米国は企業価値が10億ドル以上の未上場企業である「ユニコーン」が23年12月時点で約670社と世界で最も多い。足元では多くの企業が市況の回復を待ち、上場時期を先送りしている状況だ。

逆に業績悪化で経営破綻する事例も出ている。医療関連の人工知能(AI)を手掛ける米オリーブは一時は40億ドルの企業価値を付けたが、事業停止することを23年10月末に明らかにした。

日本のIPOの資金流入額は1.8倍の44億ドルだった。半導体製造装置大手のKOKUSAI ELECTRICの大型上場や、投資ファンドのエグジット(投資回収)を意識したIPOが増えた。

ただ新興市場の株式指数は年間で軟調だ。IPO時の企業価値が未上場時を下回る「ダウンラウンド」の案件も2割あった。想定資金が調達できないとみて「上場時期を後ろ倒しする動きもある」(SMBC日興証券の斉藤宗一郎第一プライベート・コーポレート・アドバイザリー部長)という。

世界を業種別でみると、全体の2割強を占める「テクノロジー」への流入額は276億ドルと前年比2割減った。アームの大型案件もあったが補えなかった。インフレによる物価高で消費者の節約志向が強まる「耐久消費財」への流入額も4割減った。

24年も世界景気に対する慎重な見方が根強いが、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じるとの観測も広がっている。新興企業への資金流入の回復につながる可能性があり、「デカコーン(企業価値が100億ドル以上の未上場企業)級のIPOが期待できるのではないか」(三菱UFJアセットマネジメントの安井氏)との声も出ている。

(細田琢朗)

(日経新聞)

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