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21年の米IPO、初の1000社超 SPACで上場減少に転機 2022/01/01

グラブはSPACとの合併で米上場を果たした(21年12月、シンガポール)

【ニューヨーク=宮本岳則】米国の新規株式公開(IPO)市場が活況だ。2021年の新規上場社数は前年比2倍となり、初めて1000社を超えた。株高傾向に加えて、特別買収目的会社(SPAC)の存在が大きい。上場企業数の減少傾向に歯止めがかかる可能性が出てきた。22年も企業価値10億ドル(約1140億円)を超える有力ユニコーンが上場を控えている。

米調査会社ディールロジックによると、米国市場における21年の新規上場社数は1007社となり、データを遡れる1995年以降で最高となった。上場時の資金調達は合計で前年比1.8倍の3158億ドルとなり、こちらも最高記録を更新した。調達額首位は11月に米ナスダック市場に上場した新興電気自動車(EV)メーカーのリヴィアン・オートモーティブで、137億ドルに達した。

米株式市場の活況が未上場企業に株式公開を促している。米政府の財政支出や米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和によって、投資家は余剰資金を抱えている。とくに個人投資家の存在感が増し、IPO銘柄を積極的に売買するようになった。韓国の電子商取引(EC)大手でクーパンが3月に45億ドルを調達したように、海外から米国上場を目指す動きも続いた。

SPACの新規上場が急増したことも大きい。有力企業との合併のみを目的とした「箱」のような会社だ。最終的に合併先が存続会社となり、上場企業の地位を得る。21年は613社のSPACが上場を果たし、前年の2.4倍に増えた。東南アジアの配車サービス大手グラブは12月、SPACとの合併を通じて、ナスダックに上場した。

米国市場では上場企業数の減少が長らく問題となっていた。米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると2000年時点で約5500社の上場企業が存在した。ところが活発なM&A(合併・買収)によって、新規上場よりも「退出」企業が多い時期が続いた。未公開市場での大型の資金調達が容易になり、創業から上場までの年数も伸びた。20年時点の上場企業は約4000社にとどまる。

SPAC登場で米市場は転機を迎えた。米運用会社グッゲンハイム・パートナーズの最高投資責任者、スコット・マイナード氏は低格付け債(ジャンク債)市場の誕生と重ねる。1980年代以降、浮き沈みを経験しながらも、企業にリスクマネーを供給する市場に育った。SPACも個人マネーを取り込み、有力企業に早期上場を促す「器」になりつつある。マイナード氏は「資本市場にとって革命的」と話す。

米証券取引委員会(SEC)は対応に苦慮している。SPACブームがIPO市場の活性化につながった一方、合併プロセスは投資家保護の観点で多くの問題をはらんでいるからだ。実際、新興EVのルーシッドモーターズの情報開示を巡って調査に入った。ゲンスラーSEC委員長は講演などで規制強化に言及する。とはいえ現時点でSPAC活用の全面禁止に踏み込む様子はない。

22年も有力企業の新規上場が見込まれている。米金融大手バンク・オブ・アメリカの米州株式シンジケート・キャピタル・マーケッツ責任者、ダニエル・バートン・モーガン氏は「ヘルスケアやハイテク、消費関連がIPOの主要セクターになると予想しており、21年の再現となるだろう」と話す。

米調査会社CBインサイツによると全世界でユニコーン数は900社を超える。米決済システム大手ストライプや、食料品の即日配達サービスを手掛けるインスタカートといった企業は、上場予備軍として名前が挙がる。

バンカメのバートン・モーガン氏はSPACの新規上場について「21年1~3月期にみられた前例のない活発な動きを勘案すると、22年は全体的に21年よりも低水準になる」と予想する。一方、500社を超えるSPACが現在、合併先企業を探しており、米株式市場の上場社数を押し上げる可能性がある。

21年は上場後の株価失速が目立った。ディールロジックによるとIPO銘柄の平均株価騰落率はマイナス2.5%。19年(プラス88%)や20年(同16%)に比べて大きく見劣りする。FRBが金融緩和の縮小に動き、投資家が赤字を垂れ流すような新興企業を避けるようになったためだ。22年、米株高傾向に変調がみられれば、IPO市場は試練を迎える。

(日本経済新聞)

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