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パワハラ撲滅 会社はどう対策 防止法が6月施行 2020/4/26

職場でのパワーハラスメントを防ぐために必要な措置を事業主に義務付ける、いわゆるパワハラ防止法が6月に施行される。まずは大企業が対象で、2022年4月に中小企業も加わる。違反企業には厚生労働省が改善を求め、応じなければ企業名を公表する。同法には罰則がないだけにどう実効性を持たせていくかが課題となる。
「ご遺族に大変申し訳なく思う。二度と起こらないよう風通しの良い職場環境をつくっていく」。楽器大手のヤマハは3月、男性役員による行き過ぎた指導で体調を崩し、1月に自殺した男性社員に対してこうコメントした。同社はこの社員が体調を崩したのは役員によるパワハラが原因と認定し、3月末にこの役員を退任させた。
19年8月には三菱電機の20代の男性新入社員が過労自殺し、兵庫県警が自殺教唆容疑で教育主任の30代男性社員を書類送検した。この社員は不起訴処分となったが、この事案以外でも、三菱電機ではパワハラや長時間労働で社員が自ら命を絶ったり、精神的に追い詰められて会社を訴えたりするなどのケースが相次いでいる。

19年5月のパワハラ防止法成立後もパワハラと思われる事例は後を絶たない。厚労省がまとめた労働者と企業のトラブルを裁判に持ち込まずに迅速に解決する「個別労働紛争解決制度」の利用状況によると、18年度の延べ相談件数約32万件のうち「いじめ・嫌がらせ」は8万件を超える。12年度から「解雇」を上回り、毎年、過去最高を更新している状況だ。
今回施行されるパワハラ防止法では、パワハラを(1)優越的な関係を背景とした言動であって(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより(3)その雇用する労働者の就業環境が害されるもの――と定義。
防止を事業主の義務とし、相談窓口の整備や防止のための研修などを求めている。パワハラ相談などを理由とした不利益な取り扱いも禁止した。国にはこの問題に関する事業主らの関心を高めるための広報、啓発活動などを義務付けた。
パワハラはなぜ後を絶たないのか。井上朗弁護士は「一般に不況になって企業業績が悪くなるとパワハラ件数は増える傾向にある」と話す。ただこの数年間、国内企業の業績はおおむね順調に伸びてきたが、それでもパワハラは増えている。
その理由を井上氏は「管理者層には若年層との価値観の相違に加え、最近のデジタル革命などで業務内容が変わってきた焦りがある。そのいらだちがパワハラにつながっているケースも多いのでは」と分析する。
「『一社懸命』『終身雇用』など、日本型雇用のあり方も問題の根底にあるのではないか」と指摘するのは荒井太一弁護士だ。欧米企業のように個人の技能などで報酬や待遇が決まる「ジョブ型」では、その企業の上司が気に入らなければ他社への転職がしやすい。
「日本は企業に属する『メンバーシップ制』で労働市場の流動性も乏しいため、なかなか転職に踏み切れずに行き詰まってしまう」と話す。井上氏は「変貌する仕事内容や人事評価、組織のあり方など、根本的な問題をトップが率先して改善しないと解決しない」とみている。
訴訟にまで発展しなくても、インターネットやSNS(交流サイト)で社員が「うちの会社はブラック企業だ」などと拡散させるケースも多い。企業としてはレピュテーション(評判)にかかわるリスクで、販売動向や新卒採用などにも影響が出る。企業の労務問題に詳しい石嵜信憲弁護士は「会社は経営問題の一つとして認識し、対策を練る必要がある」と話す。

■指導との線引き難しく

部下の指導とパワハラの線引きが簡単でないことも問題が減らない一因となっている。石嵜信憲弁護士は「部下の育成のための指導とパワハラとの違いに悩む上司は多い」と話す。
石嵜氏は「普段からしっかりコミュニケーションを取り、本人の希望などを聞くことが重要だ」と指摘。企業には管理職向けに「べからず集」のような手帳を作り、常備することを勧めている。
厚労省はパワハラに当たるケースとして6つの類型を示し、「他の労働者の面前で大声での叱責を繰り返す」「1人の労働者に対し同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる」など、具体的な事例を挙げて企業に注意義務を課している。
パワハラ認定でポイントとなるのは「『優越的な言動』で相手を傷つけること。その程度問題だ」と荒井太一弁護士は話す。荒井氏がよく引き合いに出すのは、ある企業の上司のメールによる叱責がパワハラにあたるかが焦点となった2005年の判例だ。
この上司は「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか」という内容のメールを配信。同僚など十数人にも流した。東京高裁では「控訴人の名誉感情をいたずらに毀損するもの」とし、不法行為だと認めた。

(日本経済新聞)

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