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エネルギー戦略 2兆円投じ転換へ 垣内威彦三菱商事社長 2021/10/24

三菱商事は2030年度の温暖化ガス排出量を20年度比で半減し、50年度には実質ゼロをめざす計画を18日に発表した。この低炭素・脱炭素戦略に沿って30年度までに2兆円規模のEX(エネルギートランスフォーメーション)関連投資を実行する。垣内威彦社長は「全社を挙げてEXにDX(デジタルトランスフォーメーション)を組み合わせ、新たな未来を創造する」と意気込む。

かきうち・たけひこ 1979年京大経卒、三菱商事入社。生活産業グループCEOなどを経て、2016年から現職。兵庫県出身。66歳

EXとDX、両輪で「らしさ」
20年度に当社グループの温暖化ガス排出量は2530万㌧だった。出資比率に応じて関連会社や権益の持ち分も含めた数値だ。カーボンニュートラルの中間目標として30年度に半減、50年度に実質ゼロをめざす。火力発電資産のダイベストメント(投融資の引き揚げ)をはじめとするポートフォリオの入れ替え、再生可能エネルギーの調達、水素・アンモニア混焼といった燃料転換、省エネ・DX効果拡大などの施策を通じ、30年度に半減をまず達成する。

再生エネを中心に、水素やアンモニアといった次世代燃料に30年度までにEX関連で2兆円規模を投じる。これには、次世代エネルギーへの移行期間の安定供給継続に必要となるLNG(液化天然ガス)のほか、EV(電気自動車)など電化を支える銅をはじめとするベースメタルやレアメタルなどへの追加投資も含む。

投資先の入れ替えなどポートフォリオの見直しを積極的に進めてきた。EX投資の2兆円は財務の健全性を維持しながら、キャッシュフローの範囲内で十分にやっていける規模だと考えている。

初の社内共通目標
三菱商事は「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」を柱とする企業理念「三綱領」を掲げている。さらに経済価値、社会価値、環境価値の「三価値」を同時に実現することが当社グループの成長を実現する前提であると16年の社長就任以来、中期経営戦略で示してきた。

「EX・DX一体推進による新たな未来創造」というのは全社的な運動だ。AI(人工知能)を活用して省エネを推し進め、供給サイドのみならず、需要サイドでもカーボンニュートラルをめざす。現在10ある多様な営業グループで共通の目標を持ち、同じ考え方、価値観で走るのは当社として実は初めての試みとなる。

カーボンニュートラルは社長就任段階ですでに意識していた。20年に買収手続きを終えた再生エネを主力とする電力会社エネコ(オランダ)は10年以上前から関係を築いてきた。洋上・陸上風力などの再生エネ発電、電力・ガス供給、地域熱供給と事業内容は幅広い。風力による電力が足りなければ市場から買い、余っていれば売る。AIを駆使して最適解を見つけ出す。分散型電源では世界で先行するモデル企業といえる。

金属資源としては銅に最も注目している。温暖化ガス削減に向け社会の電化が一段と進むにつれ、EVのバッテリーや電線などで大量に銅が使われる。このため先手を打って投資してきている。ペルーのケジャベコ銅鉱山には18年に追加出資し、世界でも有数の権益を獲得してきた。

LNG投資 欠かせず
大きな問題として横たわっているのが、一気にグリーンエネルギーに移行できないことだ。石炭火力は世界で廃止へ向かう方向性との認識だ。再生エネや次世代エネにつなぐのはどう考えてもLNGだ。CCS(二酸化炭素の回収・貯留)を用いてカーボンニュートラルを実現する動きも踏まえ、LNGへの投資はしばらく必要だろう。エネルギーを安定供給する当社の使命として、ゼロエミッションに向けたLNGの必要性を明確にしておきたい。

「新たな未来創造」と大きな夢を掲げたのは、少子高齢化など社会課題を解決するためだ。人口が減る地方都市の活性化には自律分散型コミュニティーの構築が不可欠となる。AIを使い電力供給の最適解を求め、モビリティーサービスなどで住民の利便性を上げる機能を提供していきたい。スマートシティーの実現に向けては地方自治体と協力していく。社内の全グループがそれぞれ50年を見据えた具体的な構想を練っており、一丸となって対応する。当社ならではの総合力も大いに発揮したい。

低炭素・脱炭素への移行を国内で実現できればアジア諸国、例えばインドネシア、タイ、ベトナムなど日本と友好関係にある国々に示していきたい。国際貢献の一つになると考えている。エネルギーの安定供給責任を全うしつつ、脱炭素との両立をめざす。EXとDXの一体推進で、持続的成長と未来への価値創出を実現したい。

エネコのノウハウを活用する(オランダのルフタダウネン洋上風力発電所)
先端蘭社のノウハウも、連携で「未来」築く

オランダに本社を置く次世代型の総合エネルギー企業エネコ。三菱商事と中部電力が共同で約5000億円を投じ、2020年に買収を完了した。洋上風力発電、電力・ガスのトレーディング、地域熱供給などを手がけ、オランダ、ベルギー、ドイツの3カ国に約600万件の顧客基盤を持つ。三菱商事はエネコの再生可能エネルギーや分散型電源などのノウハウを生かし、日本の地方都市などでカーボンニュートラルを実現したコミュニティーを構築していきたい考えだ。
 エネコはオランダの44の自治体が株式を保有していたが、民営化した。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと競り合った末、日本勢が買収した。出資比率は三菱商事が80%、中部電力が20%だ。
 再生エネ分野では陸上風力や洋上風力を中心に約480万㌔㍗(開発中を含む総容量)の能力を持つ。約600万件の家庭向け電力・ガス供給のシェアはオランダで2位、ベルギーでは3位。ドイツではグリーン電力の事業者としてシェア1位の有力企業だ。
 三菱商事の垣内威彦社長はエネコについて「(再生エネや電力小売りで)圧倒的に先を走っており、教えてもらっている」と話す。エネコのオペレーションルームでは自前の風力発電の発電量や家庭の電力需要について、AIを用いてシミュレーションしている。足りなければ市場から最も安いタイミングで電気を買い、余れば売る。天候やイベントなどに応じて変動する需要を予測し、「常に最適解を導き出しながら安定供給を貫徹する仕組みで、学ばなければならないと思った」と振り返る。
 三菱商事が打ち出した「カーボンニュートラル社会へのロードマップ」によると、脱炭素の目標を達成する50年に向けて打ち出す新たな未来はこんなイメージだ。
 人口数万人規模の地方都市で、太陽光や風力による再生エネに蓄電池を組み合わせて分散型電源を構築。住民はデマンド型交通やEVで通勤・通学し、買い物に出かける。食品流通をはじめ多くの分野でDXを進め、例えば食品ロスを削減する。こうした取り組みを通じて、無駄がなく効率的でサステナブル(持続可能)な自律分散型コミュニティーを築く――。
 街自体の価値を向上させ、魅力のあるものに変えていくことが、住民の生活の質を引き上げることにつながる。街づくりでは三菱商事が持つ事業が連携していく。各グループがそれぞれアイデアを持ち寄り、人口減少に悩む日本の最適解を導き出せるというわけだ。
 分散型電源の運用ではAIの能力も試される。エネルギーの低炭素・脱炭素化を担うEXと、デジタルの活用により課題を解決するDXはいわば車の両輪だ。垣内社長は「当社が持つファンクション(機能)をしっかり投入し、サポートしていきたい」と話す。

(日本経済新聞)

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