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広田康人 アシックス社長  スポーツ支出、回復のカギは? アシックス社長に聞く そこが知りたい 2020/8/5

新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪をはじめスポーツ大会の延期や中止が相次ぐ。五輪特需に沸くはずだった2020年がかつてない逆風の1年となったアシックス。在宅勤務などで運動不足を感じ、ランニングシューズなど一部には追い風もある。新常態での戦略をアシックスの広田康人社長に聞いた。
――20年1~3月期は最終赤字に転落しました。
「新型コロナで厳しい状況だ。東京五輪で見込んでいた応援グッズなどの売上高200億円は今年と来年に分散する。チームスポーツ向けの回復は来年以降になる。今はかがむ時期だ。在庫管理を徹底し、販管費などコストを削減する」
――スポーツを取り巻く環境はどう変わりましたか。
「健康意識が高まり、手軽にできるウオーキングやランニングのニーズが増えている。1人で長距離を走ると気持ちが折れてしまうが、アプリを使って同じ距離を走ってタイムを競う『バーチャルレース』などデジタルを駆使した楽しみ方が広がっている。アシックスも自前アプリで今秋にも日本で開催予定だ」
――大会の延期で新製品をアピールする場が減っています。
「トップ選手向けのランニングシューズ『メタレーサー』を6月に発売したが、選手が実際に履いて記録を出す姿を見られないのは残念だ」
――スポーツ用品への支出が減る懸念もあります。
「所得が減った人もおり、今後どういう影響が出るか見ていく。ランニングは靴さえあれば楽しめる。影響は大きくないだろう」
「国内のネット通販は1~3月に前年同期比6割増えた。スマートフォンで足を撮影し、サイズを2次元で計測するシステムを提供しているが、通販で靴を買うのに抵抗がある人もいる。3次元で計測し、ぴったり合うシューズを買える仕組みを開発中だ。来年にも導入したい」
――自社通販比率は1割にも届きません。
「アシックスの日本の通販サイトは欧米に比べ遅れている。取り扱うスポーツが多く総花的で分かりにくい。ランニングに特化したサイトも必要だ。運動記録アプリなどのサービスと合わせて提案をしていく」
――米ナイキの厚底シューズが市場を席巻する一方で、五輪延期で製品開発に1年の猶予ができました。
「今ある商品が最終形ではない。さらに優れたものを出してシェアを奪還したい。他社も同じことを考えているだろう。トップ選手向け技術は一般のランナーにも使える」

 ひろた・やすひと 80年(昭55年)早大政経卒、三菱商事入社。14年取締役常務執行役員。18年アシックス社長。愛知県出身。63歳

《聞き手から》ランナー向け商品、顧客の開拓急ぐ
新型コロナの影響が取り沙汰されがちだが、アシックスはここ数年業績が低迷し、立て直しの最中だ。2015年ごろからスポーツウエアを街着として着る「アスレジャー」にトレンドが移るなか、注力する米国で失速。「厚底シューズ」の米ナイキなど海外大手は、莫大な広告費を投入しシェアを拡大する。
アシックスはランナー向け商品で巻き返しを図る。この1年でもスマートシューズ開発企業への出資や、カナダの大会登録サイトの買収をしてきた。遅れていたデジタル分野で顧客を開拓できるかが問われる。(斎藤毬子)

関西トップ人材、衝撃の移籍 商社からメーカー社長へ
立命館大学教授 西山昭彦
それは2018年3月29日のことだった。三菱商事の代表取締役常務執行役員(コーポレート担当(国内)兼関西支社長)を務めていた廣田康人さんが、アシックスの社長COO(最高執行責任者)に就任した。この人事は会社経由、ヘッドハンター経由ではなく、個人ルートでの転職という意味で、日本企業経営層では希少な事例である。個人でスカウトされるトップとはどういう人材なのか。

強烈なインパクト
 実は私は、廣田さんに三菱商事時代に大変お世話になっている。初めてお会いした数年前のころの印象は、「大胆な決断、行動と詳細の把握、気配りを両立できる逸材」というものだ。何かを相談したら即断即決、すぐ手を打ってくれる。案件の詳細に詳しいので、なんでも聞ける。一方で、初めて出たパーティーなどで居場所を探していると、話が合いそうな人をすぐ紹介して輪を作ってくれる。
 できるビジネスマンは、以下のどちらかが優れている人が多い。グイグイ仕事で実績をあげるが人(特に部下など)に目が行かないか、気配りはできるが自身での決断力に欠けるの2タイプだ。人の能力は限られているから、どちらかが特化していればそれだけで十分価値がある。もし一人で両方できたら、それはやはりすごい力になる。
商事時代は最年少部長に
 廣田さんは1980年、早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱商事に入社した。商社は総合職全員が部署を問わず海外勤務をする。現在では入社数年以内に、全員がトレーニーで1年海外に行く。廣田さんは32歳から6年間ロンドンの現地法人に勤務し、総務人事渉外など(経理以外の本社部門全般)の担当になった。
 ここの担当範囲は広く、ヨーロッパからアフリカまでをカバーする。そのため、出張が多くなる。赴任した年にベルリンの壁が崩壊し、東欧でのビジネスチャンスが増え、ワルシャワに新規の流通施設をすぐ建設した。他方で、タンザニアのオフィスビルもオープンさせ、アフリカビジネスの拡大をはかった。各国政府、世銀などとの交渉で次々好条件を引き出した。廣田流は、新規の難しい交渉でも、接した人を納得させ、味方にしてしまう。
 本社に戻った後、43歳で広報部長に就任した。できる社員がぎっしりいる三菱商事でも、これは最年少記録で、先輩を数年追い越し抜擢された。課長時代含め、広報には9年間いた。ここで、マスコミ内に「三菱商事に廣田あり」といわれるようになる。
 とにかく社内のどんな事例も知っているし、ディテールに詳しいので、記者にとってはありがたい存在だ。交渉の達人なので、win-winで記者人脈も山のようにでき、また社内では「廣田広報マニュアル」を作った。これは今でも広報部員が使っている伝説の虎の巻である。
 その後、2010年執行役員総務部長、 2014年取締役常務執行役員・コーポレート担当 (広報、総務、環境・CSR、法務、人事)になる。この担当の広さは普通なら把握が難しいはずだが、部下の課長は「すべて細かいところまで把握している。マクロもミクロも強いので、話が早い」という。廣田さんは「課長は部下がいなくても対応できるように、すべて把握しておかなければだめだ。ファイルを読むことをいつも薦めていた」そうだ。
たった3回しか会わずに指名

 2017年コーポレート担当役員(国内)兼関西支社長となり、この移動が運命に向かうことになる。関西財界の会合に会社を代表して出ていたので、関西各社のトップとは次々に知り合いになる。インパクトがあるので、一度会えば強烈な印象を残す。そのトップの中の一人に、神戸の名門企業アシックスの尾山社長(当時、現会長)がいた。
 2017年秋、何の前ぶれもなく、尾山社長から後任社長の打診を受けた。それまでは財界仲間であり、転職なんて考えたことがなかったので、びっくりしたそうだ。おそらく、経営者として人を見る目を持つ尾山社長は瞬時に廣田さんの実力を見抜いたと思われる。廣田さんは短期間でこの申し出を承諾した。
 「自分は経営のプロでない。しかし、システムを作り組織を回すことはできる。グローバル経営、会社のマネジメント、ガバナンスに長年従事し、その経験とノウハウが活きてくる。加えて、仕事一筋だった自分が、50歳からマラソンをはじめ大阪マラソンではついに4時間を切った。それを支えてくれたのがアシックスのシューズで、人一倍愛着があった」。
 私は学生に「志望動機は、客観的なビジョンと個人的なこだわりを合わせて書くことが大事」と言っているが、廣田さんの動機は理想的ともいえる。実は私も靴はアシックス一筋数十年で、それ以外を履くことはない。特にペダラは現在靴箱に10足以上ある。だから、「一度履いたら辞められないのがアシックスのシューズ」を実感として理解できる。同社がシューズを提供した陸上競技の桐生祥秀選手は日本人初となる100メートル9秒台を実現し、その優位性はプロスポーツでは実証済みである。
経営者として変革へ

 廣田さんは社長になって、矢継ぎ早に方針を打ち出している。とにかくスピードが速いので、社員もびっくりしていると想像できる。
 一例をあげると、これまで組織はメーカー型の機能別(製造、販売など)だったが、それでは経営責任が見えにくいとして、5つの製品カテゴリー別に製販一体の経営体に作り替えた。事業部、商社型といえる。それぞれが経営を行うことになり、社員にも専門プロでなく、経営人材をめざすことが求められる。大改革といえる。それを1年目に実施している。

丸の内のランナー向け拠点スポットも開設した。ランナーのニーズがわかるので、この分野はお手の物だろう。しかし、広大なビジョンがその背後にはある。
 「スポーツを見るはだいぶ進んだと思いますが、するに変えていきたいのです。30-40代は週1回やるが4割台です。70代は7割なのに。この働く層も働き方革命に合わせてスポーツをやる社会に変えていくことが自分の夢です」
 一企業の成長にとどまらず、廣田さんの挑戦はスポーツを通じた社会革命を起こすことにある。実は、これから数年はこの環境がピークになる時期である。2019年ラグビーW杯、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2021年ワールドマスターズゲームズがある。
 「これからゴールデン・スポーツイヤーズを迎えます。この時期に会社を飛躍的に成長させるとともに、するスタイルを社会に広げることが、日本の長期的な発展につながると信じてやっています」
 現在も、月2回の海外出張をはじめ、休日はスポーツの表彰式などに出席し、連日社内外を飛び回っている。そして、その合間を見つけては自身マラソンをしている。

ミドルの転職
 日本の企業ミドルに対しては、「サラリーマンは本人が思っている以上に、社会が必要とするスキルセットを持っているものです。スキルの棚卸しと人とのネットワーク、ご縁を大切にしていくことが大事と思います」という。
 確かに、新卒で企業に入社し転職していない人は、社会で求められているスキルがつかめない。またチェックされる機会がない。そのまま定年近くになっても、果たして何が役立つのかわからないまま、機会損失している人が多いと思われる。実にもったいない。意志が少しでもあるなら、そのスキルを社会に使うべく、行動を始めるべきである。
 会社の商品の市場を見つけ売り込んできた人、これまで数々の企画を立て市場を開拓してきた人……。これらの人々が、「自分」を売れないはずはない。市場を知らない、探していない、行動していないことが機会をつかめない原因ではないか。

(日本経済新聞)

アシックス広田康人社長 危機下ではトップダウン  私のリーダー論(下) 2021年7月15日

アシックスは歩幅を広げる厚底ランニングシューズを3月に発表した。広田康人社長は「社長直轄のプロジェクトを立ち上げ、スピード開発を意識した」と明かす。厚底で先行するナイキに後れを取っていたが、東京五輪・パラリンピックの開催に合わせて商品をそろえ反転攻勢に打って出る。危機下で各部門をまとめあげるには「上が決めたことを下に徹底させることが重要だ」と述べる。


アシックスの広田康人社長。社長直轄プロジェクトで開発のスピードを上げた

――2020年以降、新型コロナウイルスでスポーツ用品店は臨時休業を余儀なくされました。
「コロナ下で需要が弱含みになったことを受けて、矢継ぎ早に生産調整をかけました。こうした緊急事態では何をすべきかを決め、決めたらすぐに手を打つことが重要です。手元資金を確保するために銀行借り入れを増やし、社債に切り替えました。あとは何よりも社員の健康と安全を守ることに務めました」

――危機対応の一方、厚底シューズ「メタスピードシリーズ」プロジェクトを社長直轄で進めました。
「ランニングシューズではナイキに水をあけられていました。典型的だったのは今年の箱根駅伝です。我々のシューズを履いてくれませんでした。挽回するため、スピードを重視して社長直轄で開発しました」

「ポイントは部門横断です。研究、製造、マーケティング、知財など、各部門から人を集めてチームを作りました。それぞれの部門に責任者がいるため、部門ごとに進めていたらもっと時間がかかっていました」

――東京五輪では国内最上位のゴールドスポンサーを務めています。新製品の開発は必達の目標でした。
「1年延びて猶予をもらったのは確かですが、間に合わせるために全社を挙げてベストを尽くしました。メタスピードシリーズは世界のアスリートが履いてくれるという手応えがあります。近年のアシックスはこういうシューズを開発できていなかった。(スポーツウエアを街着として着る)アスレジャーの流れに中途半端な乗り方をしていた時期は、みんながびっくりするような商品は出せていなかったと思います」

自ら実践し、背中を見せる
――部門横断の場合、各部門の縄張り意識もあってまとめるのが大変です。
「それをまとめるのが社長の力だと思います。良いシューズを作りたいという強い思いを持ったメンバーを集めました。もともとの担当は関係なく、ひとつのチームとして取り組んだ結果です。危機下ではリーダーシップのあり方も変わりますね。いつもは議論しても、危機下では『決めたことは守ろう』と伝えます」

「でもこれは何回も使える手ではありません。危機的な状況だからこそやれたことだし、やっていいことだと思います。何でもかんでも社長直轄にしたら、それは会社ではなくなり、会社の力がかえって弱くなります。通常の組織のなかでイノベーションが起き、商品が開発され、それがちゃんと売れていくのが一番良い流れだと思います」

――リアルタイムでフォームを分析できるスマートシューズなど、デジタル化への対応も重要課題です。
「私はデジタルネーティブじゃないので追いつくのに苦労しています。デバイスも作れないし、アルゴリズムの計算も分からない。それでもデジタル化は絶対に必要だと感じています。商品、製造、販売のすべてにデジタルの発想を入れて考えてくれと言っています。どこをどうデジタル化すべきなのか、現場から聞き取って重点投資します」

「まだ途上ですが、アシックスはデジタルドリームカンパニーを目指しています。自分たちだけでできないことはカシオ計算機などのパートナーと組むことでクリアしたい。新興企業とも一緒にやっていきます。様々な連携から新しい製品が生まれると思うと、何だかわくわくしますよね」

――部下の育成では何を気をつけていますか。
「昔は意図的に怒鳴ることもありましたが。若気の至りですね。怒鳴られたら気分が悪いですから。相手の立場に立つことが重要です。今はよほどのことがないと怒鳴りません。また注意するときは人前ではなく、個室で話します」
「リーダーは自分が思うよりもみんなに見られていることを自覚すべきです。仕事をちゃんとこなしているか、公私を区別しているかなど。みんなに『そうなれ』と指示するなら、まず自分が実践しないとだめですね。背中で見せる。部下は背中を見ますから」

仕事に「わくわく感」を
――リーダーとしての哲学はどのようにして形成されたのでしょうか。
「誰もが最初はリーダーではありません。私も経験や失敗を積み上げて、リーダーになりました。三菱商事では広報課長時代に初めてマネジメントも経験しました。当時は三菱商事社員が人質になったペルー日本大使公邸人質事件やアジア経済危機などの危機に直面しました。広報担当として報道関係者と向き合いながら、さまざまな経験を積みました」

広田社長は「リーダーは部下から見られていることを自覚すべきだ」と話す
――手本にしている経営者はいますか。
「アシックスでは尾山基会長はもちろんですが、創業者の鬼塚喜八郎氏は特に意識しています。鬼塚氏は商品を開発するとき、まずトップ選手を押さえて下に普及させる『頂上作戦』を取ったといいます。一点に集中する『きりもみ作戦』というのもありました。リーダーが方針をはっきり示し、それを徹底するということです。その姿勢から学ぶことは大きいです」
――リーダーとして、どんな場面で喜びややりがいを感じますか。
「成果が上がった後の打ち上げでみんなで飲んだときのことはよく覚えています。『仲間と一緒に』というのはキーワードですね。先日もあるマラソン大会でメタスピードを履いた選手がトップで帰ってきたときは皆でガッツポーズしました。私はわくわくしながら仕事ができて、自分たちの成果を実感できるような会社を目指しています」

「スポーツメーカーにとって、このわくわく感というのは大切なことです。サポートをした選手が成績を上げたり、世に出した商品が受け入れられたりした場合にもわくわく感があります。仕事はつらいこともありますが、時には喜びや感動もあります。社員のみんながそのようにわくわく感を感じながら、成長してほしいと思っています」
(佐藤諒)

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