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ゴールドマン、日本で銀行免許取得 証券から多角化 2021/07/07

米金融大手ゴールドマン・サックスが事業の多角化を加速している。同社傘下の米銀行が7日、金融庁から日本で営業するための免許を取得した。米欧のグローバル企業向け資金管理・決済業務に参入し、日本を含めた世界で事業基盤を整える。トレーディングなど伝統的な証券業務が稼ぎにくくなるなか、事業会社やリテール分野で安定的に稼ぐ収益構造を目指す。
ゴールドマンは法人顧客に資金管理や決済サービスを提供する「トランザクションバンキング」事業を20年に立ち上げ、成長戦略の柱に据える。まず米国企業向けに開始し、すでに250社の顧客を獲得。預金は350億ドル(約3兆8700億円)を超えた。21年6月から英国でも営業を始めた。
今回、ゴールドマン・サックス・バンクUSAが日本での支店設立を認められ、グローバル企業にサービスを提供する体制が整う。例えば、世界に拠点を持つ日本の国際企業のドル資金調達などを請け負うことができるようになる。東京支店は9月に営業を始める。
法人向け資金管理・決済業務には米JPモルガン・チェースや米シティグループ、英HSBCといった米欧の大手商業銀行がこぞって参入し、優良顧客を囲い込んでいる。投資銀行業務に比べて利幅は薄いが、安定した収益が見込める分野だからだ。
ゴールドマンがあえて最後発で参入したのは、「(古いシステムなど)レガシーがないため、テクノロジーの活用で優位に立てる」(ゴールドマンのデービッド・ソロモン最高経営責任者)との判断がある。
ゴールドマンは米銀の中でも早くからエンジニアを採用してきた。資金管理業務の発足にあたっては、ネット上でサービスを利用できるクラウド基盤システムを一から作り上げた。単純で使い勝手の良さが売り物だ。120種類以上の通貨で国内外への支払いが可能で、即時に支払い状況を確認できる。
多角化のもうひとつの進路がリテール分野だ。16年に始めたオンライン専業銀行は、高めの金利で消費者をひき付け、20年末時点の預金総額が970億ドル(約10兆7600億円)に達した。米中堅銀行並みの規模だ。預金獲得はゴールドマンの資金調達コスト低下につながった。
ゴールドマンは店舗やATMを持たない。ブランド力や認知度で他の大手リテール銀行に劣る分をテクノロジーで補う。そのひとつが「BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)」と呼ぶ仕組みだ。銀行機能を顧客基盤を持つ事業会社に提供する裏方ビジネスといえる。
BaaSモデルの成功例が19年に米アップルと立ち上げたクレジットカード事業だ。スマホ上の操作などユーザー体験の部分はアップルが開発し、決済や口座管理、コールセンターなど裏方はゴールドマンが担う。1月には米ゼネラル・モーターズ(GM)のクレカ事業買収を発表した。

ゴールドマンが事業の多角化を急ぐのは、ライバルに比べて市況に左右されやすい収益構造だからだ。20年12月期の営業収益構成は5割近くが金融商品売買を仲介するトレーディング部門。新型コロナウイルスの影響で相場が変動する前は、金融規制強化や低金利で稼げなくなり、収益の足かせになっていた。

株式市場は金融危機以降、安定して稼ぐ銀行を高く評価する傾向がある。投資銀業務のライバル、米モルガン・スタンレーの予想PER(株価収益率)は12.9倍で、ゴールドマン(同8.1倍)は見劣りする。モルガンはリーマン危機以降、富裕層向け資産管理事業や資産運用会社の買収で、安定した手数料収入を見込めるようになった。ゴールドマンは自前主義へのこだわりが強く、構造転換が遅れた。
トレーディング部門の営業収益が21年1~3月期に10年以来の水準に達するなど瞬間風速では追い風も吹く。ただ、来週発表の4~6月期決算では、前四半期に比べて減速する可能性が高い。市場は再び収益の多角化に焦点をあてるとみられ、ゴールドマンは改革の成果を問われる。
(ニューヨーク=宮本岳則、上田志晃)

(日本経済新聞)

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