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ネット証券「手数料ゼロ」過熱 収益の展望なく消耗戦 2019/12/23

インターネット証券が「背水」の戦いを繰り広げている。auカブコム証券が信用取引手数料の撤廃を打ち出した2日以降、投資信託、現物株へとゼロ化の波が広がり、顧客をつなぎ留めるための追随が相次いだ結果、わずか3週間でほとんどの販売手数料がゼロになった。手数料収入に代わる、新たな収益モデルはまだ描けておらず、消耗戦の様相を呈している。

auカブコムは23日までに手数料ゼロで売買できる国内上場投資信託(ETF)の本数を業界最多の100銘柄に増やすことを決めた。ETF無料銘柄の拡大は10日に同社が先陣を切った直後からSBI証券や楽天証券が「最多」を競い追随。23日時点では楽天の99本が最多で「1本差」を巡る激戦となっている。
無料化競争の起点は、2日にauカブコムがKDDIの出資を受けた社名変更と同時に打ち出した信用取引の手数料撤廃だ。会見で斎藤正勝社長が「早ければ来年度にも現物株の手数料撤廃も検討する」と明言すると、同業他社は「大手資本(KDDI)をバックにした(世間を騒がせるだけの)愉快犯」と冷ややかだった。だが結局、雪崩を打つように追随した。対象も信用取引から投資信託、ETFと広がり、3週間で各社が出した値下げや手数料撤廃のリリースは16本に達する。
証券会社にとって株式関連に次ぐ主要商品の投信の販売手数料では、11月21日にフィデリティ証券が「ネット経由の投信販売をすべて無料化する」と発表して道を付けていた。「黒船」が米国での手数料競争を日本市場に持ちこんでいた。
2日には投信手数料への依存度が他社より低い松井証券が投信無料化を発表。すると、マネックス証券は松本大会長が出張先の米国で深夜に電話で「うちも打ち出す」と国内に指示を出すなど他社も追随。結局、10日までに大手ネット証券が無料で横並びになった。
ネット証券が一斉に追随するのは、顧客がネット上で簡単に資金を他社に移せるためだ。数日でも対応を迷っている間に顧客を失いかねない。
信用取引や投信は取引手数料以外の収入があるのも、追随しやすかった理由の一つだ。顧客の株式売買用の資金を貸す信用取引は手数料以外に金利収入が入る。投信も信託報酬があるため、手数料がなくなっても残高が増えれば実入りが増える可能性もある。
ただし、この「副収入」にも低下圧力がかかっている。三菱UFJ国際投信は20年1月に信託報酬が年0.0858%(税込み)と世界最低水準のグローバル株ETFを設定する。「低」信託報酬の競争は、ネット証券の裁量が及ばない運用会社経由で広がりそうだ。
純営業収益の2~6割を取引手数料が占めるネット証券は今後、どうするのか。
auカブコムは信用取引での貸出金利を1%引き上げ、KDDIと連携した広告などのデータビジネスを始める。楽天は独立系金融アドバイザー(IFA)と連携して新規口座開設や預かり残高を伸ばし、SBIは新規株式公開(IPO)など法人関連収益を拡大させる。ただ各社とも明確な展望が描けているわけではない。代替の収入がない現物株の無料化についてはauカブコムもSBIも「予定」とするにとどめている。
市場では「安易なゼロ化は事業運営の健全性に影響を及ぼしうる」(SMBC日興証券の原貴之アナリスト)との指摘も出始めている。上場する大手ネット証券の足元の株価は、預かり資産が相対的に小さいマネックスグループ株が11月末に比べ5%安。投信など株式関連以外の収益源が小さい松井も3%安と日経平均株価(2%高)と比べ出遅れが鮮明だ。
「手数料は十分安く、これ以上下げても裾野は広がらない」(ネット証券幹部)との声もあるが、一般的に「安さ競争」は歯止めがききにくいのが歴史の常だ。3社に集約されたメガバンクは口座維持手数料の徴収に動き出したが、ネット証券は5社の激しい争いがまだ続きそうだ。早期に手数料以外の収益源を確立しなければ、淘汰や一段の再編シナリオも現実味を増してくる。

(日本経済新聞)

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