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日本、大型M&Aに弱点  投資銀に車業界の専任不在 変革期迎え見直しも 2020/3/17

M&A(合併・買収)業界にも新型コロナウイルスの影響が出ている。感染拡大を防ぐために、企業との面談などが難しくなり、2020年は市場縮小が避けられそうにない。企業業績の悪化も避けられない状況で、水面下では収束後の業界再編も視野に入れた動きもでる。ただ日本は大型M&Aに向けて、一大産業である自動車業界に担当バンカーがいないという弱みを抱えている。

「今年はもう終わり」。投資銀行の担当者はさじを投げる。企業との面談は相次ぎキャンセルされ、資産査定のための現場視察も難しくなり「年内の案件を新しく作り上げられない」と嘆く。
サプライチェーン(供給網)の寸断や需要の消失など新型コロナが産業界に及ぼす影響は甚大だ。電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる100年に1度の変革期を迎える自動車業界は大波に襲われそうだ。

そんな時こそ大胆な構造変革につながるM&Aの重みが増す。「顧客に会えない分、新たな提案を考え尽くす」(米系証券幹部)というが、日本の自動車業界は対象外だ。なぜか。そもそも「自動車」を専門とするバンカーがいないのだ。
日本企業で時価総額トップのトヨタ自動車をはじめ、株式市場で自動車セクターの存在感は大きい。証券会社も当然重視するが、それは株価や企業価値を評価する株式アナリストなどの話。M&Aや株式発行による資金調達を支援する「投資銀行バンカー」は別だ。
実際、自動車セクターを担当する株式アナリストは外資系証券も含め各社がエース級をそろえる。一方、金融や通信など業種ごとに専門バンカーを抱える外資系投資銀行で自動車に特化したバンカーはいない。ほかの業種とかけ持ちするケースがほとんど。国内最大手の野村証券でも「トヨタ担当」はいても「自動車専門」バンカーはいない。
その理由は投資銀行が手数料を得られる本格的なM&A案件がなかったためだ。
日本では緩やかな資本・業務提携はあっても、自動車メーカーの経営者が自ら話をまとめるケースが大半。対照的に海外では関連したM&Aが盛んだ。独ダイムラーのクライスラー部門売却や、米ゼネラル・モーターズの経営破綻から再上場までと大型案件も多い。
調査会社リフィニティブによると20年までの20年間で、日本企業が投資銀行業務で支払った金額は累計756億ドル。1ドル=105円とすると約8兆円だ。そのうち自動車関連は53億ドルで、シェアは7%程度。産業別では3メガバンクに集約された銀行や、海外の大型買収を重ねる保険会社などを含む金融(172億ドル)が断トツだ。また自動車業界の手数料はほとんどが資金調達に関するもの。20年間で支払った手数料の7割近くは債券とローン関連でM&Aの手数料はわずか6億ドルだ。
企業別で上位10社に入るトヨタとホンダも債券発行とローン関連が大半。M&Aを手がける投資銀行より、メガバンクなど銀行業との密接な関係が見て取れる。外資系証券幹部は「大規模な業界再編と距離を置いてきた日本の自動車企業に、わざわざ人を張る意味が乏しかった」と話す。
海外の自動車業界はCASE対応で、GAFAなどの大手ネット企業や有望な技術を持つスタートアップを軸に、業種をまたいだM&A競争が始まっている。日本の自動車業界も乗り遅れまいと本腰を入れ始めている。

こうした状況を受け、一部の外資系金融機関は「バンカー不在」を見直し始めている。例えば、シリコンバレーなど米西海岸でハイテク企業を担当する米国人バンカーを日本の自動車メーカーに紹介するといった案が浮上している。米ハイテクバンカーの持つ先端知識や人脈を生かして日米間の大型ディールを取りまとめる狙いで、「トヨタによる米テスラ買収」という案もバンカーらの間で真剣に検討されたことがある。
M&A市場が干上がるなか、投資銀行はすでに来年以降を見据えている。「日本の自動車業界の再編をリードできるバンカーをどう育てるか」。「新型コロナ後」をにらんだ動きはすでに始まっている。

(日本経済新聞)

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