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証券トレーダー、巨大フロア去る  在宅勤務、コロナで定着 「都心の一等地」不要に 2020/6/9

証券会社の「花形」業務の一つであるトレーディングの現場が大きく変化している。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月以降、在宅勤務のトレーダーが急増した。当初は「在宅では困難」と思われたものの、むしろ生産性が上がったとの見方もある。証券各社が都心の一等地に構える広大なトレーディングフロアが不要になる可能性も出てきた。
野村証券の柏原悟志エグゼクティブ・ディレクター(41)は、機関投資家から受けた日本株の売買注文を執行するセールストレーダーだ。
自宅の仕事机には今、会社とほぼ同等の設備が整う。自前のパソコンからは注文執行に必要なすべてのアプリケーションが利用可能だ。チームのメンバーとはビジネス用チャットやビデオ会議システムを通じリアルタイムでコミュニケーションを交わせる。「モニターの数が1枚少ないのにはちょっとストレスを感じるが、それ以外はおおむね支障なく仕事をこなすことができる」という。
野村では大手町本社が入るアーバンネット大手町ビル(東京・千代田)の3~4階を打ち抜いた株式トレーディングフロアに、300人を超える社員たちが机を並べて働いてきた。日本最大のトレーディングフロアだ。
だがフロアに一人でも感染者が出れば全員が自宅待機になり、投資家の注文が執行できなくなってしまう。2月下旬、トレーダーを在宅勤務に移行させるしかないと判断して準備に動き始めた。
出社は自己勘定取引など、在宅では難しい業務を手掛ける約3割の社員に絞った。その出社組も半数は都内の別の場所に設けたバックアップオフィスに詰め、大手町のトレーディングフロアには平時の15%の社員しか出社しないようにした。
大和証券やSMBC日興証券も、在宅勤務比率を7~8割程度と野村とほぼ同じ水準に高めた。

機関投資家も状況は同じだ。野村が4月に機関投資家に調査したところ、完全な在宅に移行したのは27%。週に数日やチームの一部という部分導入を含め、全体の93%が在宅勤務に移行した。
トレーダーの在宅勤務は政府の緊急事態宣言の解除後も続いている。野村やSMBC日興は当面は出社する人数の上限を全体の5割程度に抑え、大和もすぐに元に戻すことはないという。
背景には、通勤時間がなくなることで在宅のトレーダーの生産性が上がったという認識がある。大和の小林奨執行役員は「在宅勤務が想定以上に機能することが今回分かった」と話す。例えば「通勤に使っていた時間を活用して新たな提案資料を作成し、大きな注文の獲得につなげた例もあった」という。

SMBC日興の山田誠エクイティ部長は「無意識に続けてきたムダな仕事をあぶり出す効果があった」と振り返る。毎朝トレーダーが1カ所に集まるミーティングは必ずしも必要ないし、多くの仕事を自動化するきっかけになったという。
在宅勤務の普及で証券各社のトレーディングフロア改革はこれからいやおうなく進んでいく雰囲気だ。「東京の千代田区や港区に広大なスペースを借り、重厚なトレーディングフロアを構える必要がなくなるだろう。郊外の小規模なスペースに拠点を分散してもいいのではないか」。大手証券の市場担当幹部はいう。
この問題が真っ先に議論になりそうなのが、野村ホールディングスだ。
今年、三井不動産と野村不動産の手で日本橋川、中央通り、永代通り、昭和通りに囲まれた「日本橋一丁目中地区」の再開発が始まる。野村が日本橋本社を置く通称「軍艦ビル」は旧館部分のみを残し、隣には52階建ての高層ビルが建つ。完成は2025年度。野村は創業100周年を迎えるこの年、大手町の本社機能を日本橋に移すことが確実視されている。
新しいビルの中に、野村が今のような巨大なトレーディングフロアを設けることはないだろう。コロナ問題を機に社内では従来の不動産計画を見直す議論が始まったもようで、トレーディングフロアの移設はその最大のテーマになりそうだ。
(編集委員 川崎健)

(日本経済新聞)

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