金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    Facebook CEO Mark Zuckerberg

  • pic

    Amazon in Silicon Valley, San Francisco bay area

IT&デジタル業界最新業界

IT&Digital Industry Latest Information

教育テック、再編の引き金 英ファンドCVC、トライ買収  デジタル化、競争力直結 2021/10/13

「家庭教師のトライ」を展開するトライグループ(東京・千代田)を、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが買収する。買収額1100億円程度という高い評価を受けた背景には、急速に進む教育のデジタル化がある。少子化による競争激化ですでに中小の学習塾では経営破綻が増えている。優勝劣敗が鮮明になり、今回の買収を機に業界再編が一段と加速する可能性もある。

トライの2021年5月期の売上高は約500億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は80億円強だった。稼ぐ力に対して買収額は13倍を超える。QUICK・ファクトセットによると売上高が同規模で東進ハイスクールを手がけるナガセのEBITDAに対する時価総額は6.2倍だ。

CVCがトライを高く評価している理由が「EdTech(エドテック)」とも呼ばれる教育のデジタル化だ。トライは業界でも人工知能(AI)などの教育への活用で先んじており、勝ち組になれると判断した。

15年にはオンラインで授業を配信し、スマホで質問できるサービスを開始。19年にはソニーコンピュータサイエンス研究所(東京・品川)などが出資するスタートアップのギリア(東京・台東)と資本提携した。ギリアとは数学などの論理系教科だけでなく国語や社会を含めた主要教科の学力を、AIを使って約10分で診断するサービスを開発している。

教育業界はデジタル化が遅れている。学習塾大手の関係者も「もともとアナログな世界で、デジタル化の必要性は認識しているが、なかなか進まなかった」と振り返る。

その業界に意識改革を迫ったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。学校だけでなく、学習塾でもオンライン対応が競争力に直結するようになった。

トライのライバルの大手学習塾も、デジタル化に資金を投じている。「駿台予備校」を運営する駿河台学園(東京・千代田)は今春、オンライン専門の講座を開講。AI教材を手掛けるスタートアップのアタマプラス(東京・品川)と共同で、オンライン模試も開発する。「栄光ゼミナール」の栄光(東京・千代田)は授業配信用の専門拠点を設け、オンライン授業に特化した難関校向けの進学塾を新たに設定した。

もともとデジタル技術を持つ異業種の攻勢も激しい。リクルートは学習アプリ「スタディサプリ」を個人だけでなく、法人にも提供。オンライン対応に悩む学校向けに拡販し、3月の会員数は約157万人と1年で約2倍に急増した。9月には学習塾向けのサービスも始め、すでに240教室への導入が決まっている。

デジタル対応に欠かせないのは、技術と投資資金という2つの要素だ。必然的に資金力のある大手が優位に立ちやすい。

中小の学習塾では経営破綻も増えている。帝国データバンクによると00年代前半は10件台だった学習塾の倒産は、16年以降30件以上で推移。今年も9月までで18件に達している。

少子化で教育関連の市場は頭打ちになっている。民間調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)によると、21年度の学習塾・予備校市場規模は9690億円の見通し。ここ数年、横ばいが続く。

再編の動きも出ている。15年には通信教育「Z会」の増進会出版社(現増進会ホールディングス)が、栄光ホールディングス(現Z会ホールディングス)を買収。駿河台学園は19年に「TOMAS」などを運営するリソー教育と資本提携を結んだ。

少子化に加え、デジタル対応という新たな課題に直面する教育業界だが、投資ファンドにとっては好機にも映っている。市場は頭打ちだが、子供1人当たりにかける教育資金は増えている。デジタル化の資金を提供しつつ、企業数が多い過当競争の中で再編の中心となれば、収益機会につながるからだ。

コロナで経営環境が一変した教育業界。デジタル技術と投資資金という2つの要素を巡り、異業種から投資ファンドまで巻き込んだ再編劇の幕が切って落とされた。

(長田真美、M&Aエディター 奥貴史)

(日本経済新聞)

menu