【北京=多部田俊輔】中国共産党は1日午前、北京市内の天安門広場で創立100年の記念式典を開いた。習近平（シー・ジンピン）総書記（国家主席）は演説で「香港での全面的な管轄権を持ち、台湾独立のたくらみを断固として粉砕しなくてはいけない」と強調。米国を念頭に「外部勢力が私たちをいじめ、圧迫することも決して許さない」と米国に対抗する姿勢を鮮明にした。

習氏の演説は約1時間。米国が支援を強化する台湾について、「祖国の完全統一を実現することは共産党の歴史的任務だ」と強調。「国家主権と領土を完全に守る決意や強大な能力を見くびってはならない」と力強く述べたところで、天安門広場から大きな拍手と歓声が湧き起こった。
香港や台湾、新疆ウイグル自治区を巡って対立を深める米国に対抗する姿勢を明確に示した。米国が共産党の支配体制に問題の根源があると党を標的にすることに対して、習氏は「共産党と国民を分割して対立させる企ては絶対に思いのままにならない」と反論した。
さらに、米国を念頭に「偉そうな説教を絶対に受け付けない」と強調し、「いかなる外部勢力が私たちをいじめ、圧迫することも決して許さない」と指摘。軍事力についても「世界一流の軍隊をつくりあげ、より強大な能力で、国家の主権、安全、発展の利益を守りぬく」と述べた。
香港国家安全維持法（国安法）が施行されて1年が経過した香港については、高度の自治を認めた「一国二制度」を堅持すると述べたが、「香港での全面的な管轄権を持つ」とも強調。香港の言論統制などを強める取り組みを正当化した。
習氏は演説の冒頭で、貧困問題を解決して国民生活にややゆとりがある「小康社会」の全面的な達成という「（党創立）100年の奮闘目標」の実現を宣言し、大きな拍手を受けた。行政や司法、企業活動などのすべてを指導する共産党の統治体制の優位性を強くアピールした。
さらに「未来を切り開くには共産党の強固な指導を堅持しなければならない」と強調した。外交については新型の国際関係の構築を推し進め、習氏が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」の発展を進める方針を強調した。
習氏は記念式典に1人だけ人民服を来て登壇した。スーツを着た李克強（リー・クォーチャン）首相ら最高指導部メンバーや王岐山（ワン・チーシャン）国家副主席に加え、胡錦濤（フー・ジンタオ）前国家主席や温家宝前首相らと歴代の指導者らも登壇した。江沢民（ジアン・ズォーミン）元国家主席は見当たらなかった。
党創立の記念式典はこれまで、天安門広場の隣に位置する人民大会堂で指導者が演説してきた。習氏は中国を代表する天安門で初めて演説することで、来年秋の最高指導部が刷新する党大会に向けて、慣例を破って3期目に入ることを視野に求心力を高める狙いも透けて見える。
式典には7万人余りが参加した。開始前には共産党旗を掲げたヘリコプターが「100」という形で飛行し、主力戦闘機「殲10」などが編隊飛行を行った。軍事パレードの実施は見送ったが、「殲10」は台湾の防空識別圏（ADIZ）に入っている戦闘機で、軍事力をアピールする狙いもありそうだ。
北京市内は1日、天安門広場付近に武装警察などを配置して厳戒態勢を敷く。周辺の地下鉄駅は閉鎖され、多くの店舗が営業を中止した。北京以外の主要都市でも治安当局がデモなどの事態を抑え込むため人やモノの移動を制限し、ネットの監視を強める。
中国では憲法で共産党を「国家の指導的な立場」と位置づける。全国人民代表大会（全人代、国会に相当）も共産党の指導を受けて、党の方針を具現化する役割だ。党員数は9515万人。中国大陸の総人口（14億1177万人）の7%程度を占める。

（日本経済新聞）

中国共産党は1日、創立100年の記念式典を北京市内で開いた。式典では共産党を率いる習近平（シー・ジンピン）総書記（国家主席）が演説した。米国との対立が深まるなか、どんなメッセージを発信するのか。国内外の注目を集めた。日経電子版では記念式典の様子をタイムラインで追った。（時間は日本時間）

【午前10時29分】万雷の拍手のなか、習氏の演説が終了

【午前10時27分】習氏「中国の夢を実現」

「中国共産党は、中華民族のため1000年の偉業を成し遂げようと決意し、いま最盛期を迎えた。 強力な指導と人民の団結により、近代的で強大な社会主義国を建設する目標が達成され、中華民族の偉大な復興という『中国の夢』が実現するだろう」

「偉大で、光栄で、正しい中国共産党、万歳！」

【午前10時20分】習氏「台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現」

「台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現することは共産党の歴史的任務だ」と強調し、「両岸（中台）の同胞を含むすべての中華民族は、台湾独立のたくらみを断固粉砕するため前進しなければならない」と述べた。「中国人民の国家主権と領土を守る固い決意と、強大な能力をみくびってはならない」と話し、米国などをけん制した。

「我々は『一つの中国』の原則と『1992年のコンセンサス』を堅持し、祖国の平和的統一のプロセスを推し進めなければならない」とも言及した。中国は92年に中台を不可分の領土とする「一つの中国」の原則を確認したと主張している。

【午前10時20分】習氏「香港の国家主権、安全、発展の利益を守る」

香港について「国家の主権、安全、発展の利益を守る」と語った。「香港人が香港を統治する。マカオ人がマカオを統治する」と述べ、「高度な自治の原則を完全かつ正確に実行し、中央当局が香港・マカオに完全な権限を持つ」と強調した。習氏は終始、香港人による香港の統治を示す「港人治港」という文言を使った。

【午前10時11分】習氏「外国勢力のいかなる圧力も許さない」

「中国の人民は外国勢力によるいかなる圧力、いじめも許さない。圧力を試みるものは14億人を超える中国人民の血肉で築かれた『鋼鉄の長城』の前に打ちのめされることになるだろう」

【午前10時9分】習氏「『一帯一路』を推進」

「我々は平和、開発、協力、互恵の旗印を高く掲げ、独立した外交政策を追求し、平和的発展の道を守り、新しい形の国際関係の構築を促進しなければならない。人類の『運命共同体』としての発展に力を尽くし、（中国の広域経済圏構想）『一帯一路』の建設を推進する。世界に新たな機会を提供する」

【午前10時すぎ】習氏の演説中に雨がぱらつき始め、式典参加者は支給された雨がっぱを着込む

【午前10時ごろ】習氏「強い国には強い軍隊が必要だ」

「歴史に学び、未来を築くためには国防・軍事の近代化を加速させる必要がある」としたうえで、「強い国には強い軍隊が必要で、強い軍隊は国防につながる」と強調した。軍については「地域と世界の平和を維持するための強力な力にもなる」と述べた。

【午前9時56分】習氏「党は人民の根本利益を代表」

「共産党がなければ新中国は存在せず、中華民族の偉大な復興もない。歴史と人々は中国共産党を選んだ」

「中国共産党は終始、人民の根本的な利益を代表し、（人民と）生死を共にする。いかなる自らの利益や権力、特権も代表しない。共産党を中国人民から分離し、敵対させようとする試みは決して成功しない」

【午前9時46分】習氏「敬意を表する」

「毛沢東同志、鄧小平同志、江沢民（ジアン・ズォーミン）同志、胡錦濤（フー・ジンタオ）同志を代表とする中国共産党員は、中華民族の偉大な復興に多大な貢献をしてきた。 我々は彼らに敬意を表する」

【午前9時42分】習氏「台湾同胞」に呼びかけ

「人々は歴史の創造者であり、真の英雄である。すべての社会主義労働者、統一戦線にいる人々に敬意を表する。 香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾の同胞、海外の同胞に、心からご挨拶する」

【午前9時39分】習氏「世界第2位の経済大国となった」

「（中国は）後進的な状態から世界第2位の経済大国へと歴史的な躍進を達成した」と強調した。そのうえで「人々の生活を不十分なものから繁栄に導き、改革開放が現代中国の運命を決定する重要な動きだった」と訴えた。

【午前9時37分】習氏「社会主義だけが中国を救うことができる」

冒頭で中国の歴史を振り返り「（党は）中国で数千年続いた搾取と抑圧に満ちた封建制度を排除し、帝国主義と覇権主義による破壊と武力挑発を克服した」と自身の実績を強調した。「党と人民はその奮闘により、社会主義のみが中国を救うことが可能で、（自身が掲げる）『中国の特色ある社会主義』のみが中国を発展させることができると世界に向けて厳かに宣言した」と述べた。

【午前9時30分】習氏「小康社会を実現した」

「我々は100年間の1番目の目標である、全国における（ややゆとりのある）『小康社会』を実現した。いまは全体で、現代化した社会主義強国を実現するという次の100年の目標に向けてまい進している。これらは中華民族、中国人民、中国共産党の偉大な功績である」

【午前9時25分】習氏「全党、全国民で結党100年を祝おう」

【午前9時24分】習氏の演説が始まった

【午前9時10分】中山服に身を包む習氏

天安門の壇上に居並ぶ中国共産党幹部がダークスーツを着用するなか、中心の習近平（シー・ジンピン）総書記（国家主席）だけが中山服に身を包み、別格の存在感を示している。

【午前9時8分】国歌斉唱

国歌斉唱が始まり、広場では高々と国旗が掲揚された。

【午前9時1分】開会宣言

李克強（リー・クォーチャン）常務委員が開会を宣言し、まもなく祝砲が響いた。儀仗隊が広場を行進している。

【午前8時55分ごろ】記念式典始まる

中国共産党創立100年の記念式典が北京の天安門広場で始まった。中国国営中央テレビ（CCTV）のアナウンサーは天安門広場を「建党の基盤となった五・四運動が起こった場所だ」と歴史的な意義について訴えた。習近平（シー・ジンピン）総書記（国家主席）をはじめとする党幹部も登場。戦闘機が編隊飛行し、ヘリコプターが「100」の文字を描いた様子に拍手した。壇上には習氏のほか、胡錦濤（フー・ジンタオ）前総書記や温家宝・前首相ら党長老も並んだ。

【午前8時40分すぎ】まもなく式典開始

式典開始まで20分を切り、再び歌の演奏が始まった。居眠りしていた人も含め、参加者全員が突如、中国国旗を振りながら歌い始めた。1曲終わるごとにみなが歓声を上げている。祝賀ムードを高める狙いで、そうするように言われているのだろうか。

【午前7時30分】楽器隊や合唱隊が練習

式典開始まで1時間半。楽器隊や合唱隊は練習を繰り返している。式典参加者の座席は空席がちらほら見られる。早朝に到着したため、居眠りをする人もいる。

【午前7時】儀仗隊が行進

式典開始まで2時間となった。楽器隊が国歌などの演奏を繰り返し、儀仗（ぎじょう）隊が天安門広場から行進。最終的な予行演習とみられる。演奏に合わせて国歌を口ずさむ人もいる。

【午前6時50分】式典参加者が続々と会場入り

式典の参加者全員にオレンジ色の記念バッグが配られた。中にはミネラルウオーターやウェットティッシュのほか、中国の国旗や赤字で「100」と書かれた帽子が入っている。

【午前6時半ごろ】女性たちの記念撮影

一般の式典参加者は携帯電話の持ち込みが禁止されている。こちらの女性たちは記者に記念撮影を依頼してきた。後日、対話アプリのウィーチャットで写真を送る。

【午前6時ごろ】天安門広場周辺に多数のトイレ

天安門広場周辺にはいくつもの臨時トイレが設置されている。

【午前6時ごろ】中国メディアが取材開始

中国メディアの記者が早速、式典の参加者にインタビューを始めた。

【午前4時すぎ】報道陣出発

記念式典を取材する報道陣に前夜配られたインビテーション。座席番号が書かれている
報道陣は前日チェックインしたホテル「長城飯店」から5台の大型バスに分乗、記念式典の会場へ出発した。夏の夜明けが早い北京でも外はまだ真っ暗だ。