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バイデン政権、大企業の寡占にメス M&A審査厳しく 2021/07/10

【ワシントン=鳳山太成】バイデン米政権が大企業による市場での寡占的状況の是正に乗り出した。企業の強い支配力が価格上昇や賃金低下の原因と判断し、M&A(合併・買収)審査の厳格化や産業政策を通じて競争を促進する。ただ、どこまで実効性を上げられるか不透明さも残る。

「巨大企業に大きな力を与える40年間の実験は失敗した」。バイデン大統領は9日、ホワイトハウスで演説し、企業のM&Aを寛容に認めてきた米政府の姿勢を転換すると表明した。関係省庁に競争を促すための政策づくりを求める大統領令に署名した。
M&Aに関しては、反トラスト法(独占禁止法)を所管する司法省と米連邦取引委員会(FTC)に対し、新興企業を傘下に収めたりデータの集積につながったりする案件に注意を払うよう促す。「ライバルを取り込んで競争を避けている」との疑念が政権内に根強い。
大統領令の標的は巨大IT(情報技術)企業にとどまらず、通信や医療、運輸、農業と幅広い。検討を促した計72件の是正策はかなり具体的だ。
例えば米航空業界では上位4社が65%のシェアを握り「乏しい競争が手荷物やキャンセルの手数料上昇につながっている」と問題視する。運輸省に対し、航空会社が約束したサービスを提供できなかった場合に返金を求める規制をつくるよう指示した。
米食品医薬品局(FDA)に対しては、カナダから安価な処方薬の輸入に取り組むよう命じた。米国では処方薬が他の主要国の2.5倍に上るとの統計を引用して、巨大製薬会社の寡占的な産業構造をやり玉に挙げた。
労働者が高い賃金を求めて職を移りやすくもする。同業への転職を禁じる雇用契約について約半分の米企業が導入し、最大6000万人の労働者が結ぶ。バイデン氏は「企業が賃金を安く抑えるのが狙いだ」と断じ、こうした契約を制限するようFTCに促した。
いずれも大企業が力を持ちすぎていることで、消費者や労働者、中小企業など「弱者」にしわ寄せがきているとの認識が根底にある。政権は競争不足による値上がりや賃金低下で米家計に年5000ドル(約55万円)の損失が生じていると指摘する。
バイデン政権の主張は与党・民主党の支持者には幅広く受け入れられている。一方、産業界や野党・共和党は反発しており、法改正を通さずに実現できるかは未知数だ。
全米商工会議所は「米国経済が求めているのは大企業と中小企業の両方の繁栄であり、中央集権的な政府の命令ではない」と厳しく批判する声明を出した。自由競争を重んじる米国では政府の市場介入へのアレルギーが強い。
米スタンフォード大のダグラス・メラメド教授は「大統領令は政府の規制の重要性を正しく認識している」と評価しつつも「『法的権限がない』として間違いなく訴訟が起こるだろう」と見通す。

議会では独禁法改正の動きもあるが、意見の対立は大きい。米フロリダ大のマーク・ジェイミソン教授は新興企業の出口戦略が大企業への売却だと指摘し「巨大ITが新興企業を買収して競争を抑えているというバイデン氏の認識は間違いだ」と語る。

(日本経済新聞)

米競争政策、半世紀ぶり転換 勝者総取り経済に一石 2021年7月11日

米国の競争政策が転機を迎えた。バイデン大統領が競争促進の大統領令に署名し、一握りの企業にシェアが偏りすぎないよう規制を強化する方向にかじを切った。独占に目をつぶってでも企業の国際競争力の向上を優先する1970年代以来の路線の抜本的な軌道修正になる可能性がある。
過去半世紀ほど、米当局は独占行為に寛容だった。経済効率が高まり、消費者が低価格を享受できるのなら独占も容認する。「シカゴ学派」と呼ばれる学者たちの考え方が土台となってきた。
70年代半ば、製造業で日欧が躍進し、米国優位が揺らいだ背景もあった。82年の司法省の指針改訂ではM&A審査の条件を大幅に緩和した。

この振り子が逆に動き始めた。
グーグルやフェイスブックなどは多くのサービスを無料で提供している。価格のつり上げのような昔ながらの手法で消費者の利益を損なうことはない。一方で新興企業の相次ぐ買収などで市場支配力を高め、取引業者に対して優位に立つ。
こうした新たな形態の独占は、低価格など消費者利益の保護を目的とするシカゴ学派の観点からは問題視しにくい。そこで台頭してきたのが「新ブランダイス学派」と呼ばれる研究者たち。一握りの企業にシェアが偏る勝者総取り経済の回避を重視するのが特徴だ。
その流れをくむ面々がバイデン政権で要職に就く。大統領特別補佐官となったコロンビア大のティム・ウー教授は巨大企業が市場を10年以上支配して変化の兆しもない場合、反トラスト法(独占禁止法)で企業分割すべきだと提言している。
ウー氏はIT大手が買収を繰り返して寡占体制を築き、競合他社の商品やサービスを模倣して地位を不当に強固にしたとみる。対策としてM&A審査を産業界や一般市民に広く公開するといった案を提起する。
連邦取引委員会(FTC)委員長に32歳の若さで就任したリナ・カーン氏は、7月1日に公開した声明で近年のFTCの法執行を切って捨てた。「不公正な取引と戦うという、議会から与えられた義務を放棄していた」
バイデン氏自身が規制強化論者でもある。大統領選の期間中にまとめた政策文書では企業分割にも言及した。遡れば80年代後半、シカゴ学派の法学者が連邦最高裁判事に就任するのを議会で阻止した経験も持つ。
もともと米国で反トラスト法ができたのは1890年。鉄鋼王カーネギーら大資本家の専横を抑える社会政策だった。いまの動きは原点への回帰との見方もできる。
米司法は今なおシカゴ学派の影響が残り、連邦最高裁判事は保守派が多数を占める。6月にはフェイスブックに対するFTCの提訴が連邦地裁に却下された。新ブランダイス学派の考え方が浸透するかは読みきれない。競争政策の改革はこれからが本番だ。

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