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米競争促進令(上) IT・金融の巨大化認めず  M&A審査厳しく 寡占防ぎ格差解消 2021/07/16

バイデン米大統領が企業間の競争促進を目的に大企業への監視を強める大統領令に署名した。歴代政権は国際競争力を保つため企業の巨大化に寛容な姿勢だった。バイデン政権は市場支配で消費者や労働者が不利益を被り、格差が広がっているとの認識から経済政策の方針転換を進める。日本企業にも影響を与えかねない歴史的な大統領令を点検する。

「独占や悪い合併は許さない」。バイデン氏は大統領令に署名した9日、ホワイトハウスでこう述べた。今回の大統領令は反トラスト法(独占禁止法)を所管する司法省や米連邦取引委員会(FTC)だけではなく、各産業の監督省庁も規制を見直し、幅広い分野で公正な競争を促す狙いだ。

大統領令では産業分野ごとに政府機関に72項目の取り組みを求めた。まず指摘したのは巨大テックや金融だ。市場で支配的な地位を占めるIT(情報技術)大手が競争を阻害し、イノベーションを減退させていると断じた。M&A(合併・買収)審査を厳格化し、FTCに個人情報の過度な集積を避けるルール整備を推奨した。

米IT業界ではM&Aが盛んだが、フェイスブックによる画像共有アプリ「インスタグラム」運営会社の買収などは「競合潰し」との批判を受けた。アマゾン・ドット・コムも通販プラットフォームに出店する企業の情報を不正利用し、自社製品を開発しているとの疑いが持たれている。

銀行業界のM&Aを厳しく審査する方針も盛り込まれた。司法省や米連邦準備理事会(FRB)などに、銀行合併に関するガイドラインを180日以内に見直すよう求めた。過度な経営統合で店舗が閉鎖され「中小企業への融資額が約10%減少し、金利の上昇を招いた」とした。

運輸や医療も的

身近なサービス業も標的とする。航空会社には手荷物料金とキャンセル料が上昇していると指摘。上位10社の手数料徴収額が2007年の12億ドル(約1300億円)から18年に352億ドルに増えたことを挙げ「(キャンセル料などが)一斉に引き上げられることが多く、競争が働いていない」と批判した。

米運輸省にキャンセル料の明示や手荷物が遅れた場合の払い戻しを義務付ける規則を検討するよう指示した。鉄道貨物や海運でも寡占化が進んでいるとして、鉄道会社や海運業者に価格競争を促す仕組みの導入を両業界の監督当局に促した。

通信ではインターネット接続業者の寡占状況を問題視した。米国民の2億人以上がネット接続サービスの選択肢が1~2社しかない場所に住み、ネット接続料金の高止まりを招いているとして、米連邦通信委員会(FCC)に家主とネット接続業者の契約を制限することや、ネット接続サービスの内容と価格を明瞭に表示する統一基準づくりを求めた。

医薬品価格と病院の合併に伴う医療費高騰も指摘した。カナダから低価格の医薬品を輸入できるよう米食品医薬品局(FDA)に計画のとりまとめを指示したほか、ジェネリック医薬品(後発薬)やバイオ後続品(バイオシミラー)の販売促進を支援するよう米保健福祉省に求めた。

米国の医療費の高さは世界で突出している。経済協力開発機構(OECD)によると、19年の1人当たりの年間医療費は1万948ドルと、過去10年で4割増えた。加盟国では最も高く、日本の2.3倍だ。1人当たりの薬への出費も年1376ドルと最も高い。医療費を抑え、家計を支援する。

労働環境を改善

家族経営の農家の支援も打ち出した。農機や種子・肥料の流通の寡占が小規模農家の経営を圧迫していると指摘。穀物や畜産品の販売先が大手に限られ、店頭価格が上昇しても農家が安値での販売を強いられる状況の改善を求めた。

労働市場全体にまたがる改善策も提示した。雇用主が結託して賃金を不当に抑えることがないよう、司法省などに反トラスト法のガイダンスの見直しを指示した。従業員が競合する企業に転職することを禁じる契約についても見直しを求め、FTCに法制度の整備を指示した。

米国の仕事のおよそ3割が免許を必要とし、職業選択や転居の障壁になっているとして、不必要な免許の廃止や州ごとの制度の統一を監督当局と州当局に促す。

(日本経済新聞)

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