金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    U.S. President Joe Biden

  • pic

    White House - Washington D.C. United States of America

国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

恒大不安、リスク連鎖警戒 市場・経済に影響拡大も、中国依存で選別 2021/09/22

中国の不動産大手、中国恒大集団発のリスク連鎖に警戒感が高まっている。中国政府は住宅価格の上昇が中国の格差問題を生む一因とみて、不動産業界に規制の矛先を向ける。自力再建が困難な恒大の処理を誤れば、金融システムに悪影響が出かねない。影響は市場にも広がり、景気悪化懸念から中国経済との結びつきが強い株式や商品の売却も始まっている。

23日に利払い日を迎える恒大の米ドル債の直近の利回りは500%を超え、新規の社債発行による借り換えは絶望的だ。抜本的な経営再建のために1兆9665億元(約33兆4000億円)にのぼる負債を処理すれば、世界の運用会社に損失が及ぶ。

代表例が海外投資家向けに販売された約195億ドル(約2兆円)の米ドル債だ。米ブルームバーグによると、英アシュモア・グループは残高が約4億ドルに達するという。リフィニティブによると、資産運用最大手のブラックロックなども保有する。日本は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2020年度末時点で恒大とそのグループ企業の社債を59億円、株式を37億円保有する。

恒大の債務総額は中国の名目国内総生産(GDP)の2%に相当する。借入金は6月末時点で5717億元にのぼる。買掛金も巨額だ。米格付け会社S&Pグローバルは20日「中国政府は恒大を直接支援することはない」との見解を公表した。

現時点では「中国政府は銀行に対し資金繰り支援の指示をする可能性が高い」(クレディ・スイス)との期待もある。金融システムリスクは顕在化していないが、中国政府の動向が見えない点に懸念が高まる。

世界の株式市場は同時株安に見舞われている。21日の日経平均株価は前週末比660円安の2万9839円で取引を終え、2週間ぶりに3万円台を下回った。21日の香港株式市場では、恒大が7日続落となった。株価は昨年末比で9割近く下落している。

特に影響が目立つのが、中国経済との関係が深いアジア株だ。中国向けの輸出依存度が高い国や、中国向け売上高の大きい企業ほど株価の下落が大きい。

6月末から直近までの株価騰落率をみると、韓国の総合株価指数(KOSPI)は5%安。台湾の加権指数も3%低い水準だ。一方、タイのSET指数は足元でも2%高の水準を維持し、インドのSENSEX指数は12%高となっている。

主要国・地域の2020年の輸出総額に占める中国向け輸出額の割合で最も高いのは台湾の30%で、韓国の26%が続く。タイは13%にとどまり、インドは7%と最も低い。

個別企業も同様だ。中国向けの売上高が全体の53%と過半を占めるシンガポールのパーム油大手、ウィルマー・インターナショナルの株価は6月末から9%安。中国売上高比率が37%の韓国の半導体大手、SKハイニックスも16%安だ。日本でも21日にファナックが5%安まで下げた。

米ゴールドマン・サックスは19日付のリポートで「恒大の問題で中国の不動産全体の市況悪化に加え、建材や家具の販売減など間接的な影響が起こりえる」と指摘。3種類のシナリオのうち最も影響が厳しい場合、中国のGDPは最大約4%押し下げられると分析する。

楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジストは「アジア諸国は中国を中心としたサプライチェーン(供給網)に組み込まれており、中国リスクが意識されるなかでは株価の上値は重い」と話す。

商品市場では建材に使う非鉄金属や鉄鋼原料などの国際相場が軒並み下落した。最大消費国である中国の需要鈍化への不安から、銅が1カ月ぶりの安値となったほか、ニッケルや鉄鋼原料の鉄鉱石も下がった。

銅の国際指標であるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は20日に一時1トン8975ドルと節目の9000ドルを割り込み、8月20日以来の安値を付けた。建材などに使うステンレスの原料のニッケルも20日に、節目の1トン1万9000ドルを割り込んだ。恒大集団への懸念が高まった9月中旬以降、非鉄金属全般に下落傾向が目立つ。

シンガポール取引所(SGX)の鉄鉱石先物は17日に一時1トン107ドル前後と20年12月以来の水準に下げ、6月下旬のピークから半値になった。

マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表は「非鉄金属などの価格は当面下値余地を探る展開になる」とみる。一方、足元の相場の動きは四半期末を控えたファンドなど投機マネーの利益確定の動きも影響したとの指摘がある。「欧米など中国以外の実需が相場を下支えする」(マーケットエッジの小菅努代表)といった声もある。(上海=土居倫之、古賀雄大、コモディティーエディター 浜美佐)

(日本経済新聞)

menu