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中国、不動産バブル懸念 民間債務かつての日本超す  マンション価格、年収の57倍 2021/09/27

【北京=川手伊織】中国恒大集団の過剰債務問題をきっかけに、中国の不動産バブルへの懸念が高まっている。格差是正を掲げる習近平(シー・ジンピン)指導部にとって不動産価格の高騰を容認しにくくなっているためだ。経済規模に対する民間債務比率などの指標はバブル期の日本を超えており、軟着陸は容易ではない。対応次第では、中国経済が低迷期に入る可能性がある。

中国で不動産は拡大する格差の象徴だ。如是金融研究院によると広東省深圳市ではマンション価格が平均年収の57倍、北京市も55倍に達する。バブルだった1990年の東京都でも18倍で、中国の大都市圏は庶民に手が届く水準ではない。

中国人民銀行(中央銀行)は2020年夏に、大手不動産会社が財務面で守るべき「3つのレッドライン」を設けた。自己資本に対する負債比率を一定水準以下に保つことなどを求め、借金を増やしにくくした。不動産へのマネー流入が細ることになる。

今年8月には習指導部が「共同富裕(共に豊かになる)」のため、格差是正を打ち出した。マンション価格の高騰の裏には富裕層の投機もあり、締め付けは避けられないとの見方が広がった。影響は不動産価格にも出始め、販売総額を総面積で割った単価は8月に前年同月比2.7%下落した。

価格上昇が鈍ったことで、負債総額が30兆円を超える恒大の経営が苦しくなるとの懸念が強まり、9月には日米などの株式相場が急落した。

恒大は保有資産や事業の売却を急ぐ。突発的な倒産のような事態を避けたとしても、中国の不動産を巡る先行きの不透明感を払拭するハードルは高い。不動産に偏った成長が逆回転し、バブル経済が崩壊した1990年前後の日本を上回るサインがともっているためだ。

2008年のリーマン・ショックをはじめ、景気減速のたびに財政出動や、企業に積極的な投資を促して政府が掲げた高い成長目標を達成してきた。

国際決済銀行(BIS)によると、金融機関以外の民間債務は最近5年間、年1割超のペースで増え、直近で35兆ドル(約3850兆円)を超える。特に不動産は銀行の関連融資残高が5年で2.1倍に膨らんだ。

この結果、中国の民間債務残高の国内総生産(GDP)比は220%に達し、日本がバブル崩壊直後につけたピーク(218%)を上回る。融資残高全体に占める不動産向けの割合も今の中国が3割弱と、21~22%台だった日本のバブル期より高い。

日本のバブル期は不動産だけではなく株式にもお金が向かった。1989年末に日経平均株価が最高値を付けるまでの10年間で、上昇率は5.9倍に達した。一方、足元の中国の上海総合指数の水準は10年前比で1.5倍程度にとどまり、不動産への集中ぶりが透ける。

上昇が続くことが前提だった住宅価格が下がり始めれば、借金で購入した富裕層や在庫を抱える不動産会社による売却が急増しかねない。価格の下落は債務を抱える不動産会社の資金繰りをさらに悪化させ、住宅着工などが細ることになる。

中国の住宅の新規着工面積は1~8月に前年同期比で1.7%減少した。米ゴールドマン・サックスの試算では、2022年の住宅着工が前年比3割減少するなどの深刻シナリオになると、22年の実質国内総生産を4.1%押し下げる。

日本の場合、土地と住宅の時価合計は1990年の2685兆円から、2005年までにGDPの約2倍にあたる1000兆円以上が失われた。

日本政府は積み上がった金融機関の不良債権を時間をかけて処理する道を探ったが、不良債権の増加が収まらず貸し渋りや資金回収が広がった。経済の収縮を招いて「負の遺産」の処理に10年以上を要した。

中国共産党は7月末の中央政治局会議で21年後半の経済運営方針に「不動産価格の安定」を盛った。過度な値下がりに対し直接介入を辞さない姿勢だが、不動産市況の調整は金融機関の不良債権増を通じて中国経済が長く低迷する要因になりかねない。

(日本経済新聞)

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