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米、企業年金にESG基準 法規則改正で脱「収益最優先」 2021/10/26

米国は企業年金のESG(環境・社会・企業統治)投資を推進する。米労働省が年金基金向けの規則を改正する。投資収益を最重視するエリサ法の規則を変え、気候変動リスクや従業員の多様性などESGも考慮して投資先を選べるようにする。運用における利益最優先からの転換が、10兆ドル(約1100兆円)以上の規模がある米企業年金でも進む。

利益の最大化を目的とする資本主義のあり方を見直す動きが強まり、年金の投資にも反映される。米労働省はトランプ前政権時代に導入した「金銭的要素のみを考慮すべきだ」とする年金基金向けの規則を修正する。このほどエリサ法の規則改正案を公表した。12月13日まで意見を募集する。

エリサ法は年金受給者の利益のために行動する受託者責任を年金基金が負うと定めている。ESGを推進する民主党と、反対する共和党とで政権交代のたびにESG投資が受託者責任に反するか否かの解釈が変わり、企業年金は投資に踏み切れなかった。

今回は世界で投資や企業経営でESGを重視する流れのなかでのルール変更となる。米国持続的責任投資フォーラムは「規制の振り子を終わらせるための重要な一歩」と受け止めている。

改正案では、年金の投資や投資行動評価では「あらゆる要因を考慮できる」とし、考慮できる要素の具体例に気候変動リスクや取締役会の構成、従業員の多様性などを挙げた。確定拠出年金(DC)で加入者が運用先を指定しない場合の投資先になる初期設定ファンドにESGファンドを採用できるようにする。

また議決権行使も年金の「義務に含まれる」と明記する。ESGを考慮した議決権行使を踏みとどまらせる現状のルールから変更する。

米国の20年のESG投資額は17.1兆ドルと米国の運用資産全体の3割を占める。公的年金の一部や投資信託で普及している。米公的年金のカルパースやカルスターズは、環境対応が遅れていたエクソンモービルに対し環境派の役員候補を提案した株主を全面的に支援した。個人の間でもESG投信への関心が高まり、残高は3兆ドルにのぼる。

企業年金は出遅れている。労働省によるとESG投資を採用する企業年金の数は全体の1割。最大の要因は受託者責任だ。ブラックロックによると、米企業年金は運用資産の約1~2割を日本など海外株に投資している。ESG考慮が企業年金でも広がれば、投資先企業を選別する動きが一段と強まる。温暖化ガス排出量が多いうえ削減する意図のない企業や人権問題に対応しない企業は、株主総会で経営陣に反対票が投じられたり投資対象から除外されたりするリスクが高まる。

日本では米国同様に、ESG投資に消極的な企業年金が多い。日本国内でも機関投資家の行動規範を定めたスチュワードシップ・コードの改定でESGの考慮を明記し「無関心ではいられない」(大和総研の鈴木裕主席研究員)。米国で今回の新たなルールが受け入れられれば、日本でも徐々にESG投資の採用が進む可能性がある。

(ESGエディター 松本裕子)

(日本経済新聞)

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