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シンガポール与党が勝利、移民政策には不満の声  野党議席、初の2桁に 2020/7/12

有能な海外人材を呼び込んできた成長モデルは変革を迫られている

【シンガポール=中野貴司】10日投開票のシンガポール総選挙で、与党・人民行動党(PAP)は長期政権を維持した。選挙戦では政府の移民政策への国民の不満があらわになった。野党は議席を改選前の6議席から10議席に増やした。野党の議席数が2桁に達したのは、独立以来初めて。一党支配は陰りを見せ始めている。
PAPの得票率は61.2%と、過去最低だった2011年(60.1%)に近い水準に低迷した。「建国の父」、故リー・クアンユー元首相の長男であるリー・シェンロン首相は11日早朝の会見で「選挙結果は、所得の喪失や雇用への不安など国民が危機下で感じる痛みや不確実性を反映した」とPAPにとって厳しい結果だったことを認めた。
選挙戦で最大の争点となったのは雇用対策だった。新型コロナウイルスの感染拡大で20年の成長率は65年の独立以来、最悪に陥る見通しとなっている。労働者党(WP)などの野党は外国人の幹部・専門人材の受け入れの厳格化を主張。外国人に職を奪われているとの不満を持つ有権者の支持を得た。
資源が乏しく、少子高齢化が進むシンガポールにとって、優秀な海外人材の活用や海外企業の誘致はPAP政権の成長戦略の要だ。故リー・クアンユー元首相は「外国人なしでは増える高齢者を支えきれない」と指摘し、今も外国人は住民の3割を占める。ただ、民意を受け、外国人の受け入れ縮小に踏み切らざるをえなくなれば経済の活力は失われる。

低賃金の外国人労働者の間で爆発的に拡大した新型コロナの予防対策も急務だ。まん延の原因となった劣悪な居住環境の改善には時間がかかる見通しで、コスト増やインフラ整備の遅れの要因となる。高度人材は先進国から、単純労働者は周辺の途上国から都合よく調達してきたモデルがきしんでいる。

世界的な保護主義の高まりで、貿易のハブとしての強みも生かしにくくなっている。リー首相は「新型コロナによって米中関係はさらに悪化しており、シンガポールのような小国にとって危険な世界情勢だ」と危機感を募らせる。
これまで米中のいずれかに肩入れすることなく、双方から投資や貿易面の恩恵を受けてきたが、いつまで中立的な立場を維持できるかは不透明だ。シンガポールは香港国家安全維持法の施行で将来を不安視する外資企業の積極的な誘致を控えている。中国への過度の配慮はアジアのハブとしての存在感を高める好機を逃すことになる。
PAPの長期政権という「政治的な安定」が外資を呼び込み、1人あたり国内総生産(GDP)で日本を上回るまでに成長する原動力だったことは疑いない。国民の大多数も高成長の分配を受ける間はPAPを支持してきた。しかし、新型コロナの発生前から成長率は鈍化し、国民の不満は少しずつ蓄積されていた。
豪クイーンズランド大学のギャリー・ローダン名誉教授は「PAPの経済モデルは海外市場に依存し過ぎていた」と指摘し、今後は国内の所得格差問題などに取り組まざるを得なくなるとみる。

(日本経済新聞)

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