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M&A、ファンド優位に異変 LIXILビバ買収で競り負け コロナで融資受けにくく 2020/6/17

M&A(合併・買収)市場を席巻していた投資ファンドに異変が生じている。9日に決着したLIXILグループによるホームセンター子会社の売却では、複数のファンドが入札に参加したが事業会社に競り負けた。ファンドが投資効率を上げるために欠かせない銀行からの融資が、新型コロナウイルスの影響で集めにくくなっている。
「全く予想外の結果だった」。新潟県を地盤にホームセンターを展開するアークランドサカモトが勝ち取ったLIXILビバの買収にM&A関係者は首をひねる。出店地域が重複しない同業という強みはあったが、アークランドの時価総額は500億円(8日時点)とLIXILビバの半分以下で、資金面では劣るとみられていたからだ。
LIXILグループがLIXILビバの買い手を募り始めた1月下旬には、少なくとも3つのファンド勢が参加していた。当初は資金力に勝るファンドが優位とみられていたが、いずれも途中で脱落した。最終入札はアークランドとジョイフル本田という同業同士の一騎打ちだったようだ。
参加したファンドの関係者は「銀行から好条件のLBOローンを調達できず、高い買収価格を提示できなかった」と敗因を明かす。LBOローンとは買収先企業の資産や収益力を担保にした融資を指す。一般的にファンドは買収時に、投資家から集めた資金と、LBOローンを組み合わせる。
リターン高く
日本拠点のファンドの未使用資金は2019年9月末で約1.7兆円(英調査会社プレキン)と4年間で3倍弱に増えた。それでもLBOローンと組み合わせるのは投資効率を上げるためだ。
LBOはレバレッジド・バイアウトの略で、借金というレバレッジ(てこ)を利かせるという意味だ。ローン部分を多くし、少ない手元資金で買収すれば、ファンドとしては高いリターンにつながる可能性がある。「どれだけ多くのローンを引っ張れるかが買収の実現のカギを握る」(国内ファンド)ことになる。
変化が起きたのは新型コロナの影響が広がった3月ごろからだ。金融機関が急にLBOローンを出し渋るようになったとファンド関係者は口をそろえる。M&A助言のレコフによると、4~5月の国内企業同士のM&Aは前年同期比2割減だが、国内ファンドが買い手となった案件は25%減と落ち込みが目立つ。
企業支援を優先
銀行がローンを絞った理由は主に3つある。
1つは銀行が新型コロナで打撃を受けた企業の支援を優先したことだ。5月末の銀行貸出金残高は前年同月末比の伸び率が過去最高になった。幅広い企業への緊急融資への対応に追われ、「M&Aにまで手が回らなかった」(大手銀行)。
新型コロナで景気の先行きに不透明感が出ていることもある。LBOローンでは返済に充てる買収先企業の将来の収益力をファンドが見積もり、金融機関が査定する。
貸し手からすると「新型コロナで需要が大きく減る外食や小売り、ホテル・旅館への買収案件には資金を出しにくい」(大手銀幹部)状況だ。ファンド側も「事業計画通りできるのかと、銀行に問い詰められた時の反論が難しくなっている」(国内ファンド)という。
ファンドとしての実績も厳しく見られるようになっている。ファンドによっては既存の投資先の資金繰りが新型コロナで悪化し、銀行に支援を要請した例もある。銀行は案件ごとに収益力を判断し融資するが、既存の投資先の経営がうまくいっていなければ、新しい案件も大丈夫かとの疑問を持たれることにもなる。
世界銀行は20年の日本の経済成長率がマイナス6.1%に落ち込むと予測する。緊急事態宣言の影響を大きく受けた飲食や観光などを中心に、再編が加速する可能性は高いが、ファンド向けの銀行融資が回復するかは不透明だ。
新型コロナで「普段は見えなかった各ファンドの実力があらわになった」(大手銀のM&A融資担当)との声も上がる。資金を調達する力だけでなく、企業価値を高める提案ができるかどうか。ファンドの手腕が問われている。
(和田大蔵、渡辺淳)

(日本経済新聞)

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