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賢人バフェット氏の警鐘 大きな政府、株高に転機 2021/05/10

著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが守りの姿勢を強めている。米景気が新型コロナウイルス禍から急回復してきたにもかかわらず、手元資金を再び積み上げた。「大きな政府」に傾斜するバイデン政権が市場に何をもたらすのか、賢人と呼ばれる同氏の発言に警戒感がにじむ。

「資本主義は驚くほどうまくいっている。特に資本家にとってはね」。1日開催のバークシャーのオンライン株主総会でバフェット氏は2枚のスライドを持ち出した。1989年と2021年の世界の株式時価総額上位20社が掲載されていた。
バフェット氏が30年の変化を通じて伝えたのは主に2点だ。3月末時点の米アップルの時価総額は89年末の日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に比べ、同じ首位でも20倍になった。世界の国内総生産(GDP)対比では0.5%から2.4%になった。新たなけん引役に資本を配分し、富を生む資本主義の成功の証左とした。もう1点は米国の強さ。上位を米国勢が席巻するようになった。
バフェット氏はかねて米国の資本主義に揺るがぬ自信を示してきた。ただ、この日は強気一辺倒ではなく迷いも感じられた。「この国で話題となっている平等について何が起こったかを物語っている」と、時価総額拡大が裏返せば格差問題である点にも言及したのだ。
バフェット氏が言うように80年代以降は資本家の「黄金の40年」だった。レーガン元大統領は「小さな政府」を目指して財政支出を削減し、減税と規制緩和によって民間の力を引き出した。金融政策では通貨供給量を減らしインフレ抑制に成功した。
米経済の主役は政府から「市場」に移り、恩恵を受けたのは資本家たちだ。80年初めに米国株や米国債に投じた資金はそれぞれ約100倍と約20倍になった計算だ。物価上昇分を差し引いた実質ベースでも27倍、5倍と大きい。米国では上位たった1%の富裕層の収入が全世帯の所得の2割を占めるようになった。
バイデン政権は「大きな政府」に転換しようとしている。雇用創出や格差是正を目指して大型の財政出動を計画し、財源に富裕層や法人を対象とした増税を想定する。金融政策もインフレ率の上振れを容認する構えだ。

「シャドーバンク(影の銀行)」などの言葉を生み、時代を読む力に定評のある米ジョージワシントン大客員教授のポール・マカリー氏は「政治主導の経済へ、約40年ぶりのパラダイムシフトに直面している」と話す。
市場も転機を迎える可能性がある。インフレは企業のコスト高になるほか、物価が上がる分、配当の価値は落ちる。過去のインフレ時には株価は伸び悩んだ。ゴールドマン・サックスはバイデン政権の税制改革が実現すれば、主要500社の1株利益が最大6%減ると予想する。実現性を見極めようと投資家は様子見姿勢を強めている。
バフェット氏は総会でバイデン政権下のインフレ見通しについて「全く分からない」と述べた上で「何が起きても、そこそこの成果が得られるようにする」と続けた。バークシャーの21年3月末の現金・同等物は1454億ドルとなり、3四半期ぶりに増えた。バフェット氏が動かないのは、割高さだけでなく「投資家受難の時代」を警戒しているためとみられる。
転機とみる投資家は多い。「米国は資本主義や資本家にとって居心地の悪い場所になりうる」。著名投資家レイ・ダリオ氏は3月のブログでこう記し、課税強化や資本移動の規制を懸念した。
バフェット氏はオバマ政権時代の12年、富裕層増税を提言するなど格差を問題視してきた。ところが、今回の総会ではバイデン政権の増税案について賛否を明らかにしなかった。むしろ、「みなマヒしている。(財政支出の)数兆ドルの大きさを誰も気にせず、(1人あたりの給付金額)1400ドルばかりを重視する」などと陰に陽に大きすぎる政府をすんなり受け入れる米国社会に疑問を投げかけた。
バフェット氏はエネルギー事業などを統括するグレッグ・アベル副会長を後継者に内定していることを明らかにした。今年で91歳。引退が近づくバフェット氏と投資家の黄金期の終わりは重なってみえる。(ニューヨーク=宮本岳則)

(日本経済新聞)

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