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ESG「インパクト」重視に 投資の貢献度を測定・開示  運用残高4割増の65兆円 2021/08/25

ESG(環境・社会・企業統治)投資の中で、投資先の企業を通じた環境や社会への貢献度を測定・開示する「インパクト投資」が広がっている。2020年の運用残高は前年比4割伸びた。名ばかりで内実を伴わないESG投資が問題視されるようになり、非営利の財団による投資から始まった手法が、年金など一般の機関投資家にも浸透してきた。

世界銀行グループの国際金融公社(IFC)の集計では、民間の資産運用会社などによるインパクト投資の20年の運用残高は前年比43%増の5940億ドル(約65兆円)となった。開発金融機関による投資を含めた広義の運用残高は同10%増の2.3兆ドルにのぼる。国内市場も拡大しており、インパクト投資の推進組織であるGSG国内諮問委員会によると20年の運用残高は5126億円と前年に比べ6割増えた。

米資産運用大手ティー・ロウ・プライスは21年3月、「グローバル・インパクト・エクイティ・ファンド」を立ち上げた。同社として初のインパクト投資戦略になる。

「気候と資源への影響」「社会的公正と生活の質」「持続可能な技術革新と生産性」のいずれかに好影響をもたらす企業を選別する。6月末時点では米マイクロソフトや再生可能エネルギー大手のネクステラ・エナジーなど74社を保有する。

国内勢では、りそなアセットマネジメントが6月に公募投資信託「日本株式インパクト投資ファンド」を設定して参入した。次世代のまちづくりや持続可能な医療・介護など10の課題の解決につながる企業に投資する。7月末の組み入れ銘柄は医療事務大手のソラストや中古戸建て住宅の買い取り・再生販売のカチタスなど24銘柄だ。

インパクト投資は当初は運用収益は二の次で社会課題の解決を目指す「慈善」の側面が強かった。市場拡大が顕著になったのはここ数年だ。世界の投資家がESG投資の一環でインパクト投資に資金を振り向け始めた。運用収益と、環境や社会への好影響の双方の達成を目指すようになった。

株主が経営に深く関与する特徴からインパクト投資の主軸となってきた未上場株などオルタナティブ(代替)投資ではファンドの大型化が進む。

カナダのブルックフィールド・アセット・マネジメントは7月に温暖化ガス排出量やエネルギー消費量の削減などに焦点を当てたファンドを設定。当初の運用規模は70億ドルにのぼる。米TPGは脱炭素に向けた技術を有する世界のベンチャー企業に資金を投じる約54億ドルのファンドを設定した。

背景にはESG投資に対する規制強化がある。内実を伴わないファンドが急増し、各国・地域がルール導入に動いた。インパクト投資は運用機関が投資先を通じた環境・社会への貢献度を定期的に開示し、「見せかけ」との批判を浴びにくい。例えば、英ベイリー・ギフォードのインパクト投資戦略は20年のリポートで、9000億リットルの節水や約1120万人の疾病予防、370万ヘクタールの農家の収穫高増加などに貢献したと公表する。

課題はある。「世界的な情報開示の指針が未成熟で、企業も関連情報の開示が不十分なケースがある」(アセットマネジメントOne)という。貢献度をどう測定するかは運用会社と企業に依存し、比較が難しい。

インパクト投資を推進する団体などは測定方法の開発を急ぐ。主要7カ国(G7)会議議長の英国政府はタスクフォースを立ち上げ、米ブラックロックやアセマネOne、イタリアのエネルなどから多数の有識者が参加。情報開示など含めて幅広く議論し、12月に報告書を作成する方針だ。

インパクト投資が一段と拡大すれば、再生可能エネルギー関連や医療・介護など本業が社会課題の解決に直結する企業の評価が高まりやすくなるとみられる。生み出す貢献度が分散されるコングロマリット(複合企業)はインパクト投資家からは選ばれにくい。企業はESGへの取り組みだけでなく自社の事業を通じた環境・社会への貢献を数値でわかりやすく示すことも求められそうだ。

(ESGエディター 松本裕子)

 ▼インパクト投資 ESG投資の一種で、運用会社が投資先企業の事業を通じて社会課題の解決にどのくらい貢献したかを分析して定期的に公表する。対話を通じて、企業に貢献度合いの計測や目標設定などを求めることもある。財団の社会的事業の支援をきっかけに始まり、2007年にロックフェラー財団が初めてこの言葉を用いた。

(日本経済新聞)

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