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米投資ファンド、脱カリスマ時代 KKR創業のCEO退任 2021/10/12

KKR創業者クラビス氏(左)とインドのモディ首相(14年、ニューヨーク)=ロイター
【ニューヨーク=宮本岳則】米投資ファンド業界で世代交代が進んでいる。1970年代にKKRを創業したヘンリー・クラビス氏(77)とジョージ・ロバーツ氏(78)は11日、同社の共同最高経営責任者(CEO)から退いた。かつて「野蛮人(バーバリアン)」と呼ばれたこともあったが、リスクマネーの供給者として確固たる地位を築いた。脱「カリスマ」で新たな成長を目指す。

今から10年ほど前、訪日したKKRのクラビス氏はある日本企業の経営者と向き合っていた。「子会社数は2000社」と誇らしげに語る経営者に対し、クラビス氏が中核となる子会社の数を尋ねたところ、その経営者は再び「2000」と答えた。ファンドへの売却はまったく考えていない様子だった。

「次に何を話せば良いかわからなくなった」。今年6月に日米交流団体が開いたオンライン会合で、クラビス氏は当時をこう振り返った。同氏は毎年のように日本を訪れ、経営者に「選択と集中」の重要性を説き続けた。最終的にパナソニックや日立製作所の子会社買収につなげた。日本に外資系ファンドが定着したのは、業界のカリスマによる地道な活動が大きかった。

米国でも当初、投資ファンドに対する企業経営者の警戒感は強かった。1980年代、KKRが米たばこ・食品大手RJRナビスコの敵対的買収に成功すると、内幕本で「野蛮な来訪者」として描かれた。現在は「歓迎されるところしか投資しない」(クラビス氏)。すでに全米3万5000社以上が各投資ファンドの傘下にあり、雇用は合計880万人に達する。米国経済にすっかり定着した。

投資ファンドの存在感は増している。業界最大手のブラックストーン・グループは、時価総額ベースで投資銀行の王者ゴールドマン・サックスを上回った。2008年の金融危機以降、銀行が金融規制と当局による監視でリスクを取りづらくなる一方、70~80年代に創業した老舗ファンドはカリスマ創業者のリーダーシップで、投資対象や地域を貪欲に広げてきた。

ここにきて経営の世代交代が進み始めた。KKRの新共同CEOに指名された2人は40歳代だ。米カーライル・グループでは18年1月、デビッド・ルーベンスタイン氏ら創業者がCEO職から退いた。米ブラックストーンでも同年、ジョン・グレイ氏が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格。創業者スティーブン・シュワルツマンCEOの後継者として、地位を固めつつある。


ブラックストーン創業者のシュワルツマンCEO(19年)=ロイター
事業領域の拡大が世代交代を促した。ファンド勢はバリュー(割安株)投資を得意としていたが、今ではテクノロジー関連などグロース(成長株)投資にも手を広げる。銀行が融資しない中堅企業にローンを提供する事業も伸びている。インフラ投資や不動産も手がける。創業者の経験や人脈に依存した経営では成長に限界があり、各分野の専門家を集めている。

社会との共生は引き続き重要なテーマだ。米投資ファンド幹部は富豪ランキング上位に並ぶ。格差是正を目指す米与党・民主党左派は批判の矛先を投資ファンドに向ける。金融当局は監督外にある「シャドーバンク(影の銀行)」の拡大に警戒する。創業世代が一線から退いた後も、政権や議会、社会の懸念にうまく対応できるのか。次世代の経営陣は難題に挑む。

(日本経済新聞)

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