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Apple経済圏、金融へ 預金で「1億人」囲い込み 2023/04/18

【シリコンバレー=中藤玲、ニューヨーク=斉藤雄太】米アップルのスマートフォンを中心とする「経済圏」が拡大し、影響が金融分野にも及び始めた。米国で17日に預金サービスを始め、同国だけでも1億人を上回るiPhone利用者を囲い込む考えだ。高いブランド力を生かして預金の獲得を進めると、米地銀には新たな逆風となる。

アップルは米金融大手ゴールドマン・サックスと組み、米国で預金サービスを始めたと発表した。アップルのクレジットカードの利用者が対象で、当初は利回りを年4.15%に設定する。全米の貯蓄口座の平均(0.3%台)の10倍以上に相当する。一部のインターネット銀行を除くと大幅に高いといえる。

「既存サービスに預金サービスを組み込むことにより、1カ所でシームレスに決済や送金、さらに預金まで可能になる」。アップルで金融サービス全般を担当するジェニファー・ベイリー副社長は、17日の声明でこうアピールした。

同社は2014年にiPhoneなどを決済端末として使うアップルペイを開始し、19年に米国でクレジットカードの提供を始めた。同国では3月に「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レーター)」と呼ばれる後払いサービスも開始し、着々と布石を打ってきた。

背景には主力のスマホ市場が成熟化している事情がある。アップルの22年10〜12月期の売上高1171億ドル(約15兆7000億円)のうち、iPhoneは6割近くを占める。買い替え需要が中心で、同四半期のiPhoneの売上高は前年同期比8%減った。

一方、iPhoneを基盤としたサービスの提供は伸びている。動画・音楽配信などを含むサービスの10〜12月期の売上高は6%増え、全体の約18%を占める。米ネットフリックスやスウェーデンのスポティファイといった専業大手との競争は厳しい。

金融は国・地域ごとに規制が存在し参入障壁は高い。iPhoneは日本や中国を含む世界で10億台が稼働するが、預金サービスは米国のみで展開する。

それでも金融分野に商機はあると判断したようだ。端末やアプリ開発のノウハウを生かせば、手続きの簡素化や使いやすさで既存銀行のサービスと差別化する余地はある。スマホ基本ソフト(OS)市場を分け合う米グーグルも決済事業を手がける。アップルは「本業」防衛のために、音楽や動画に次ぐ新たな柱が必要だった。

預金の管理や運用を担うゴールドマンの利点も大きい。16年に個人向けのネット銀行事業を始め、22年末時点で富裕層や一般消費者向けで2257億ドルの預金を抱える。同社は市場からの資金調達が中心だが、個人から安定的に預金が集まるようになれば「調達源の多様化につながる」(幹部)。

アップルは「利回りは随時変更される可能性がある」としているが、当初の利回りは年率4.15%に設定した。裏側で預金業務を運営するゴールドマンが高い利息を払いながらどう利益を確保するかが課題となる。

米国内では3カ月物の米財務省短期証券の利回りが年率5.2%に達するなど、より高金利の金融商品もある。個人から集めた資金をこうした商品で運用したり、法人に貸し付けたりして、安定的に利益をあげられる可能性はある。

米地銀にとっては新たな逆風となる。3月に米シリコンバレーバンクが急速な預金流出に見舞われて経営破綻した。預金引き出しの動きは他の中堅・中小銀行に広がり、一部大手行にも波及した。顧客をつなぎ留めるには預金金利を引き上げざるを得ない。体力勝負となり、業界再編につながるとの見方もある。アップルの侵食が時計の針を進める可能性がある。

(日本経済新聞)

Apple経済圏、次は金融 米国で年利4.15%預金サービス 2023/04/18

【シリコンバレー=中藤玲、ニューヨーク=斉藤雄太】米アップルは17日、同社の米国のクレジットカード利用者向けに、年4.15%の利率で預金サービスの提供を始めたと発表した。口座の管理などは米ゴールドマン・サックスが担う。高めの金利で消費者をひきつけ、スマートフォン「iPhone」を中心とした「アップル経済圏」で囲い込む狙いだ。米シリコンバレーバンク(SVB)破綻以降、預金流出に悩む米地銀にとっては新たな圧力となる。

アップルは米国でクレジットカード「アップルカード」を発行している。クレジットカードなどを管理する財布アプリ「ウォレット」内のアップルカードから直接、貯蓄口座を設定して管理できる。他の銀行口座からも預け入れができる。アップルカードで買い物などをした際に付与されるキャッシュバックがその口座に自動で入金されて、残高に対する利息が受け取れる。

4.15%の預金利回りは、3月時点で0.3%台にとどまる貯蓄口座の全米平均の10倍以上だ。一部のネット銀では同程度の金利を提供する例もあるが、相対的にかなり高い金利を設定しているのは確かだ。

アップルは金融分野を強化している。2014年にiPhoneなどを使った非接触型決済サービス「アップルペイ」の提供を始め、19年には米国で年会費無料のアップルカードの発行を開始。23年3月には、米国の若者に普及している「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」と呼ばれる後払いサービスを米国で始めた。

アップルはiPhone利用者に多様なサービスを提供する「アップル経済圏」をつくり上げた。米国での利用者は1億人を超えるとみられる。スマホ販売台数の伸びが鈍化するなか、既存顧客のつなぎ留めとサービスの売り上げ拡大が経営課題になっている。音楽配信や動画配信に加え、普段使いの金融サービスを拡充することで、顧客の囲い込みを強化できる。

アップルが提供する貯蓄口座を実際に管理・運用するのはゴールドマンだ。両社はすでにクレジットカード事業で提携し、スマートフォン上の操作など利用者との接点部分はアップル、裏側の決済や口座管理など金融サービスの実務をゴールドマンが担ってきた。今後は預金サービスにも協力関係を広げることになる。

ゴールドマンは16年に個人向けのネット銀行事業「マーカス」を始め、22年末時点で富裕層や一般消費者向けで2257億ドル(約30兆円)の預金を抱える。市場からの資金調達が中心の同社にとって「調達源の多様化につながる預金は非常に貴重だ」(ゴールドマン幹部)。

マーカスの貯蓄口座の利回りは年率3.9%で、アップル顧客向けの口座は4.15%とより高い金利を設定した。今後引き下げられる可能性はあるが、話題性のある金利にして顧客を集めようという意欲がのぞく。ゴールドマンは個人向け事業を縮小する方針を打ち出す一方、預金集めは続ける構えで今回もその一環とみられる。

焦点の一つはゴールドマンが高い利息を払っても採算が合うかどうかだ。米国内では3カ月物の米財務省短期証券の利回りが年率5.2%に達するなど、より高金利の金融商品もある。個人から集めた預金をこうした金融商品で運用したり、法人に貸し付けたりして、安定的に利益を上げられる可能性はある。「アップル経済圏」のなかで顧客を集めるため、広告宣伝費を抑えられそうだ。

圧倒的な知名度や顧客基盤を誇るアップルが高金利を売り物に銀行口座の提供を始めることで、米銀の預金獲得競争にも拍車がかかる公算が大きい。

3月に信用不安の生じたSVBが急速な預金流出に見舞われて破綻した後、預金引き出しの動きは他の中堅・中小銀行にも広がった。米連邦準備理事会(FRB)の統計によると、中小銀の預金は3月15日までの1週間で1963億ドル減り、週間で過去最大の減少額を記録した。直近2週間で流出の動きは止まったが、預金残高はSVB破綻前より大きく減ったままだ。

預金流出は中堅・中小銀だけではない。米金融大手チャールズ・シュワブは17日、3月末の預金残高が3カ月間で11%減ったと明らかにした。資産管理が主力の米銀大手ステート・ストリートも同期間で預金が5%減った。

預金の獲得やつなぎ留めをめざす銀行は対抗して金利を引き上げざるをえない。金利の引き上げは利ざやの縮小に直結し、経営体力の乏しい銀行には限界もある。米市場では預金金利の引き上げ圧力が中小銀行の淘汰・再編につながるとの見方も出ている。アップルの参入は競争激化につながる。

(日本経済新聞)

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