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国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

COP26合意文書要旨 先進国、資金支援拡大を 30年目標の再検討要請 2021/11/16

COP26で演説するシャーマ議長(13日、英グラスゴー)=AP
国連の第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の成果文書「グラスゴー気候合意」の要旨は次の通り。

【冒頭】

▽気候変動が人類共通の関心事であると認識し、各国は気候変動に対処するための行動をとる際に、人権、健康に対する権利、先住民、地域社会、移民、児童、障害者、脆弱な人々の権利とジェンダーの平等、女性の地位向上、世代間の公平性に関する義務を尊重し考慮すべきである。

▽英北部グラスゴーで開催された「ワールド・リーダーズ・サミット」に参加した各国首脳が発表した目標や行動、2030年までに分野別の行動を加速させるために表明した約束に感謝する。

▽気候変動と生物多様性の損失という互いに関係する世界的な危機を認識し、気候変動による被害の軽減や防止のほか、気温上昇の緩和のために自然と生態系を保護・保全し、回復する重要性を認識する。

【科学と緊急性】

▽効果的な気候変動対策や政策立案のためには、最新の科学が重要だと認識する。

▽気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の第6次評価報告書の貢献と世界気象機関(WMO)による世界と地域の気候に関する報告書を歓迎する。

▽人間の活動が工業化前から約1.1度の地球温暖化を引き起こし、その影響がすでにあらゆる地域で生じていることに警鐘を鳴らし、最大限の懸念を表明する。

▽条約の究極の目的とその長期的な世界目標の達成を追求し、現在の努力と理想的な道筋の間の差に対処する。そのためにこの重要な10年間で気温上昇の緩和、気候変動による被害の軽減や防止、途上国支援の資金について野心と行動を強化する緊急性を強調する。

【気候変動による被害の軽減や防止、そのための資金】

▽気温の上昇に伴い、気候と天候の極端な変化や人間と自然に対する悪い影響が大きくなるといった、IPCC報告書から得られた知見に深刻な懸念をもって留意する。

▽現在の気候変動による被害軽減や防止のための途上国への資金提供は、気候変動の影響の悪化に対応するのに不十分であると懸念を表明する。

▽気候変動によって途上国が受ける被害を軽減し防止するために、多くの先進国が資金を増やすとした最近の約束を歓迎する。

▽気候変動による被害を軽減し防止するために先進国が拠出する資金の見通しが重要だ。複数年にわたって拠出する約束を検討するようパリ協定に参加する先進国に求める。

▽パリ協定に参加する先進国に対して、途上国が気候変動による被害を軽減し防止するための資金の提供を25年までに19年の水準から少なくとも2倍にするよう求める。

【温暖化の抑制】

▽世界の平均気温の上昇を、工業化前の水準からプラス2度をはるかに下回る水準にし、1.5度に抑える努力を追求するという長期的な世界目標を再確認する。これによって気候変動のリスクと影響を大幅に軽減できる。

▽気候変動の影響は、気温の上昇が2度の場合に比べて1.5度の場合の方がはるかに小さい。気温の上昇を1.5度に抑えるための努力を追求する。

▽地球温暖化を1.5度に抑えるためには、世界の二酸化炭素(CO2)の排出量を30年までに10年比で45%削減し、今世紀半ばには実質ゼロにする。その他の温暖化ガスの大幅な削減もしていき、世界の温暖化ガスを迅速に、持続的に削減しなくてはならない。

▽この重要な10年で、最新の科学と公平性に基づいて、途上国と先進国の責任の重さの違いとそれぞれの能力を反映し、持続可能な開発と貧困撲滅のための努力と関連づけて行動を加速させる必要性を認識する。

▽パリ協定に基づいて提出された各国の排出削減目標(NDC)を統合した報告書で、30年の温暖化ガスの総排出量は10年に比べて13.7%増加すると推定した結果に重大な懸念を持って留意する。

▽パリ協定の締約国に対し、様々な国の事情を考慮しつつ、22年末までにパリ協定の温度目標を達成するため、必要に応じて30年目標の再検討や強化を要請する。

▽メタンを含むCO2以外の温暖化ガスの排出量を30年までに削減するため、各国にさらなる行動を検討するよう求める。

▽国の状況に応じて貧しく、弱い人々への支援を提供し、(脱炭素に向けた)公正な移行のため支援する必要性を認識する。その上で、温暖化ガスの排出が少ないエネルギーシステムへの移行のための技術開発や導入、普及、促進する政策の加速を求める。排出削減対策を講じていない石炭火力発電の段階的な削減と、化石燃料に対する非効率な補助金の段階的な廃止に向けた努力を加速し、クリーンな発電方法とエネルギー効率の向上を進める。

▽社会や環境の保護を確保しつつ、条約の長期的で地球規模の目標を達成するため、温暖化ガスを吸収する森林などの自然と生態系を保護し、回復することの重要性を強調する。

【気候変動対策のための資金・技術移転・能力構築】

▽途上国への支援を年1000億ドルを超えて大きく増やし、パリ協定の目標達成に必要な資金規模を満たすためにあらゆる資源から資金を確保する必要性を強調する。

▽20年までに年1000億ドルの資金を動員する先進国の目標がいまだ達成されていないことに深い遺憾の意を表し、多くの先進国の資金提供の約束と計画を歓迎する。

▽先進国に対し、年1000億ドルの目標を早急に達成し、25年まで続けるよう求める。

【気候変動による損失・損害】

▽気候変動はすでに損失や損害を引き起こしており、今後もその傾向は強まる。気温の上昇に伴い、気候や天候は極端に変化しており、気候変動はこれまで以上に社会的、経済的、環境的な脅威となる。

▽気候変動について特に悪影響を受ける途上国で、損失と損害を回避して、対処するためのアプローチを実施するための行動と資金、技術移転といった支援を拡大する緊急性を改めて表明する。

▽先進国や国連機関、非政府組織、民間の資金源を含め、気候変動の悪影響に伴う損失と損害に対処する活動に対して追加支援の強化を求める。

▽途上国と先進国、基金、技術機関、地域社会などの連携を強化し、損失と損害を避け、対処するアプローチの改善について理解を深めることを決意する。

▽気候変動の悪影響に伴う損失および損害を避け、対処するための活動の資金調達に関して議論するため、パリ協定に参加する各国や関係者で「グラスゴー対話」を設置することを決定する。

【実装】

▽温暖化ガスを吸収する機能や、気候変動の影響に対する脆弱性の軽減、先住民や地域社会の持続可能な生活の支援といったサービスを提供するために、生態系の保護、保全、回復が重要と認識する。

▽途上国への支援を通じ、資金の流れを温暖化ガスの排出が少なく気候変動に強い開発と一致させ、持続可能な開発と貧困の撲滅、働きがいのある仕事と質の高い雇用の創出を促す公正な移行が必要である。

【協力】

▽条約の目的とパリ協定の目標に向けた進展に貢献するために、社会の主体、部門、地域を超えて、技術の進歩による革新的な気候変動対策の国際協力が重要となる。

▽条約の目的とパリ協定の目標達成に貢献する上で、市民社会や先住民、地域社会、若者、児童、地方政府、地域政府など、国以外の関係者が果たす役割は大きい。

(日本経済新聞)

COP26が課す1.5度目標の重い宿題 2021/11/16

気象災害が激化し、人々の生活を脅かすのを防ぐため、温暖化対策を加速しなければならない。13日に閉幕した第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は、そのための行動を世界各国に迫っている。

COP26では温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を実行するうえで必要な規則が確定し、これから本格的に効力を発揮する。協定が掲げる温暖化ガス削減目標のハードルは高い。日本を含むすべての国が重い宿題を背負った。

パリ協定は産業革命前と比べた気温の上昇を2度より十分低くし、1.5度以下になるよう努力を続けると定めている。

COP26で採択した「グラスゴー気候合意」は1.5度目標の重要性を強調し、2030年までに世界の温暖化ガス排出量を10年比で45%減らし、50年ごろには実質ゼロにしなければならないと明記した。世界が1.5度目標で足並みをそろえた意味は大きい。

ただし、パリ協定参加国がこれまでに約束した目標だけでは達成できない。だからこそ、温暖化ガスの排出が多い石炭火力の削減加速などが重要な議題となった。

合意文書には、石炭火力の段階的な「削減」をめざすことを盛り込んだ。議長案の「廃止」から修正されたが、石炭からの脱却には拍車がかかるだろう。

地球の平均気温は産業革命前よりすでに約1.1度高い。海面上昇や極端気象の増加で、十分な備えができていない途上国の被害は甚大だ。先進国が出した温暖化ガスで損失を被ったとして途上国はその分の支援も求めており、合意文書に検討を盛り込んだ。

温暖化が進めば、支援額はさらに膨らむ。先進国は実効性ある迅速な支援を真摯に考えるべきだ。地球規模の気候問題を解決するうえで、相互不信から地域間に亀裂が入るのは好ましくない。

焦点となった排出量取引のルールをめぐっては、日本などの案が同意を得た。排出量の計上が適正になされるか疑う声も一部にあり、透明性の確保が重要だ。

日本には多くの国・機関が資金や技術支援を期待する。一方で、石炭火力を維持するなど真意がわかりにくいという指摘もある。

山口壮環境相は現地で記者会見を開くなどして、日本の立場について世界に向け積極的に情報発信すべきだった。せっかくの機会を生かせなかったのは惜しい。

(日本経済新聞)

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