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ESG格付け手続き公開へ 金融庁、モラルハザード防止 評価機関向け「行動規範」 コンサルとの同時提供防ぐ 2022/03/08

金融庁は2022年中にも、企業のESG(環境・社会・企業統治)の取り組みを評価する機関を対象に「行動規範」をつくる。いわゆる格付け機関が評価手続きを公開するよう求め、コンサルティングとの同時提供などで生まれるモラルハザードを防ぐ。株価に影響を与える格付けが実態とかけ離れないよう、金融庁が主導して公正な環境を整備する。

行動規範は情報開示を含むESG評価にあたっての原則を示すもの。あるべき姿を示し、評価手法や評価方針などを開示する。金融庁が主導して情報開示の枠組みを作ることで、格付け機関が市場の監視下で公正な評価を下しやすくする。

金融審議会(首相の諮問機関)は21年6月に行動規範の策定を提言し、実務的に検討する専門の分科会を22年2月に設置した。企業のESGの取り組みを評価する企業や研究機関が対象で、株価指数を算出する米MSCIや米S&Pグローバルのほか、国内では日本格付研究所(JCR)や格付投資情報センター(R&I)などが含まれる。

開示を求める情報は公正な格付けが下されているかを確認するためのものだ。第三者の立場で格付けを付与する企業に対し、同時にコンサルティングサービスを提供していないか判定できるようにする。コンサルは企業から受託し、企業の立場に沿って助言する業務。同じ格付け機関が同時提供していれば、公正な価値を探す投資家と利益が相反してしまう。

下敷きになりそうなのが、世界の証券当局からなる証券監督者国際機構(IOSCO)が21年11月に公表した提言書だ。「独立性の確保や潜在的な利益相反への適切な対応に関する方針・手順の採用」を盛り込んだ。開示の検討項目として「測定目的」「使用する基準」「定性・定量情報の主な情報源」などを例示した。

格付け機関は取締役の独立性をチェックしたり、脱炭素の進捗を評価したりする。格付けの信頼性を損なえば、投資家は判断する目安を失うほか、そもそも「見せかけのESG」が市場にまん延するリスクもある。サブプライムローン問題では証券化商品のリスクを格付け機関が適切に評価できなかった結果、リーマン・ショックにつながった。ESGへの投資を促し脱炭素を後押しする一方、こうしたリスクへの目配りも必要になってきた。

世界的にESG投資は拡大している。世界のESG債の発行額は21年が約1兆ドルと債券全体の約1割を占めるまでに拡大した。S&Pグローバルは世界1万1500社、MSCIは8500社の取り組みを評価している。一方、評価機関の中には評価手法の詳細を開示していないケースが多い。企業への質問票に対する回答や公開情報からデータを集めるが、これをもとにどう評価スコアを算出しているかは明らかでない。

日本は10年、社債などの信用格付けに登録制を導入し、格付け手法の開示や企業との利益相反の防止を義務付けている。今回のESG評価の行動規範を格付け会社の監督の中に組み込むのかどうかは実効性との兼ね合いもあり、慎重に検討する見通しだ。金融情報会社リフィニティブによると、日本の21年のESG債の発行額は前年比56%増の約4兆3000億円に急増している。

東京証券取引所は今夏にもESG関連の債券を一覧して閲覧できる情報プラットフォームを整備する方針を示した。ESG関連の資金調達の活性化には、評価の透明性の確保が前提となる。議論を通じて、各関係者の果たすべき役割を明確にすることが求められる。

(手塚悟史)

(日本経済新聞)

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