金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    U.S. President Joe Biden

  • pic

    White House - Washington D.C. United States of America

国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

IPCC報告書要旨、「人為的な気候変動は広範囲に悪影響」 2022/02/28

報告書は人為的な気候変動により異常気象の頻度と強度が増していると指摘した=AP
A.イントロダクション 

本報告書は気候、生物の多様性を含む生態系、人間社会の相互作用に着目している。これまでのIPCC評価よりも、自然科学や生態学、社会科学、経済学の知識を統合した。

生物多様性の損失や天然資源の持続的でない消費、急速な都市化などが世界で同時に進行していることを前提に、気候変動に適応するための対策や気候変動の影響・リスクを分析した。

B.観測された影響および予測されるリスク
気候変動による影響とリスクは損害、被害、経済的・非経済的損失の観点から示されている。リスクは短期(2021-40年)、中期(41-60年)、長期(81-2100年)で各温暖化の水準などを予測している。

(1)気候変動による影響の観測 人為起源の気候変動は異常気象の頻度と強度を増し、自然と人間に対し広範囲にわたる悪影響と損失や損害を自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている。

最も脆弱な地域とシステムが不均衡に影響を受けている。小さな島国では避難を余儀なくされ、アフリカと中南米では洪水や干ばつに関連して食糧不安と栄養不良が増加している。自然と人間のシステムはその適応能力を超えた圧力を受け、不可逆的な影響をもたらしている。

(2)生態系と人間の脆弱性 気候変動に対する生態系、人間の脆弱性は地域などにより大幅に異なる。社会経済の発展の形態、持続可能でない海洋や土地の利用、ガバナンスなどによって引き起こされる。

およそ33億~36億人が気候変動に対して非常に脆弱な状況で生活している。生物種の大部分は気候変動に対して脆弱だ。人間と生態系の脆弱性は相互に依存しており、人間による生態系の劣化や破壊は人間の脆弱性を高める。現在の持続可能でない開発のあり方によって生態系と人々はますます気候災害の危険性にさらされている。

(3)短期的なリスク 近い将来、地球温暖化のレベルは1.5度に達する。複数の気候災害は不可避的に増加し、生態系と人間に複数のリスクをもたらす。リスクの度合いは脆弱性、暴露、社会経済の発展水準などの同時期の短期的傾向に依存する。

地球温暖化を1.5度付近に抑えるような短期的な対策は、より高い水準の温暖化に比べて人間と生態系に対する損失と損害を大幅に低減できるが、完全になくすことはできない。

(4)中長期的なリスク 40年より先、地球温暖化の水準に応じて気候変動は自然と人間のシステムにおびただしいリスクをもたらす。特定した127の主要なリスクの中長期的な影響は、現在観測されている影響に比べて最大で数倍になる。気候変動の規模と速度、それによるリスクは短期的な緩和策や適応策に強く依存する。気候変動の悪影響やそれに関連する損失、損害は温暖化が進展するにつれて拡大する。

地球温暖化の進展は生物多様性損失のリスクを高める。雪解け水や地下水の利用可能性も脅かす。食糧不安はより深刻になり、サハラ以南のアフリカ、アジア、中南米、小さな島に集中して栄養失調などを引き起こす。

(5)複合、混合、連鎖的リスク 気候変動の影響とリスクはますます複雑化し、管理が難しくなっている。複数の気候災害の同時発生、リスクが相互作用して全体のリスクが結びつき、部門や地域を横断して連鎖的にリスクが生じる。気候変動への対応の中には新たな影響やリスクをもたらすものもある。

(6)一時的なオーバーシュートの影響 地球温暖化が今後数十年以内、あるいはそれ以降に一時的に1.5度を超える場合(オーバーシュート)、多くの人間と自然のシステムはさらなる深刻なリスクに直面する。その規模と期間に応じ、さらなる温室効果ガスの排出を引き起こし、温暖化を低減したとしても元に戻すことができなくなる。

今世紀中に1.5度を超える温暖化が起きた場合、氷床や氷河の融解、加速する海面上昇によって特定の生態系、インフラ、低地の沿岸集落などに回復不可能な影響をもたらす。

C.適応策と可能にする条件 
現在の気候変動に対する適応は主に既存システムの調整によってリスクと脆弱性を減らすというもの。多くの適応策が存在し利用されているが、実行はガバナンスと意思決定プロセスの能力と有効性に依存している。

(1)現在の適応とその効果 適応策の計画と実施はすべての部門と地域にわたって見られ、複数の便益を生み出している。少なくとも170の国と地域が適応策を気候政策と計画のプロセスに盛り込んだ。

しかし適応の進展は不均衡でギャップがある。多くの取り組みでは即時、短期的な気候リスクの低減を優先しており、そのため変革的な適応の機会を減らしている。今後10年間での長期的な計画と迅速な実施が必要だ。

(2)今後の適応策と実現可能性 人と自然に対するリスクを低減できる、実現可能で効果的な適応の選択肢がある。適応策の短期的な実行可能性は部門や地域によって差がある。気候リスクに対する適応策の有効性は特定の状況、部門、地域について文献に記載されており、温暖化が進むと効果が低下する。

(3)適応の限界 人間の適応にはソフトな限 界に達しているものもあるが、財政面、ガバナンス、制度面、政策面などの様々な制約に対処することで克服できる。沿岸湿地、熱帯雨林、極域と山岳の生態系など、一部の生態系はハードな適応限界に達している。地球温暖化が進展すれば損失と損害は増加し、さらに多くの人間と自然のシステムが限界に達する。

(4)適応の失敗の回避 第5次評価報告書以降、多くの部門、地域で適応に失敗した証拠が増加している。気候変動への適応の失敗は脆弱性やリスクの固定化を引き起こす。その変更は困難で費用がかかり、既存の不平等を悪化させる可能性がある。多くの部門やシステムに便益がある適応策を柔軟、部門横断的に長期に計画し、実施することで適応の失敗は回避できる。

(5)可能にする条件 人間システムと生態系において適応の実施、加速、維持を可能とするには重要な条件がある。政治的コミットメントとその遂行、制度的枠組み、影響と解決策に関する知識、財源の確保、モニタリングと評価、ガバナンスなどがそれにあたる。

(注)適応とは、被害の低減や有効活用のために、気候変動やその影響に適応するプロセスと定義。人間の介入で促進できる。その限界とは行動をとっても防げなくなることを指す。

D.気候変動に強いレジリエントな開発
(1)条件 第5次評価報告書での以前の評価に比べてさらに緊急性が高まっている。

(2) 気候変動にレジリエントな開発は、国際協力や、すべてのレベルの行政機関が教育機関や投資家、企業と協業することで促進される。それを可能にするには政治的な指導力、制度、ファイナンスを含む資源などによって支援されると最も効果的だ。

(3) 世界的な都市化の傾向は、短期的に気候にレジリエントな開発を進めるうえで重要な機会となる。都市での開発は、都市周辺の地域の製品やサービスなどのサプライチェーン(供給網)や資金の流れを維持し、都市化がそれほど進んでいない地域の適応能力も支える。

(4) 生物多様性や生態系の保護は、気候にレジリエントな開発に必須だ。最近の分析だと、地球規模での生物多様性などの維持は現在の地球の陸域、淡水、海洋の約30~50%の保全に依存すると示唆している。

(5) 気候変動が人間や自然のシステムを破壊していることは明白だ。過去から現在に至るまで、世界的な気候変動にレジリエントな開発は進まなかった。今後10年間の社会の選択と行動で将来の開発がどの程度レジリエントになるか決まる。現在の温室効果ガス排出量が急速に減少しない場合、特に地球温暖化が1.5度を超えた場合、実現の見込みはより低くなる。

(日本経済新聞)

menu