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IPO、時価総額が小粒化 1~9月、世界平均4割減 デジタル系など 上場延期も続出 2022/10/12

世界の株式市場で大型上場が減っている。2022年1~9月に新規株式公開(IPO)した企業の時価総額は平均で約11億ドル(約1600億円)と前年同期に比べて4割減少した。ここ数年の市場をけん引していたデジタル技術関連のスタートアップなどの上場が少ない。欧米の金融引き締めでリスクマネーの流入が細り、米国や中国の有望企業が上場を手控えている。

日本経済新聞社がQUICK・ファクトセットのデータを基に、上場日の終値ベースで時価総額の平均値を集計した。1~9月は44%減の11億900万ドルとなり、株式市場で米中貿易摩擦への懸念が広がった18年同期(10億8000万ドル)以来4年ぶりの水準に落ち込んだ。地域別ではIT(情報技術)系企業が多い北米が90%減、欧州が59%減、中国を含むアジアは34%減だった。

金融情報サービスのリフィニティブによると、1~9月のIPO(株式の発行日ベース、特別買収目的会社などを除く)は38%減の978件、資金調達の総額は63%減の1150億ドルだった。

21年は世界的な金融緩和を背景に大型上場が相次いだ。最大だったのは中国の動画投稿アプリの快手科技(クアイショウ)で、時価総額は1589億ドルだった。韓国ネット通販大手のクーパンは844億ドル、暗号資産(仮想通貨)交換業の米コインベース・グローバルも648億ドルだった。

22年はIT系のスタートアップを中心に大型上場は乏しい。米中対立を受けて米国市場で上場廃止になり、中国市場で改めて株式を公開した中国移動などは大型上場となった。だが、新興企業でみると、IPO時の時価総額が100億ドルを上回ったのは配車サービスなどを手掛けるインドネシアのゴートゥーのみだ。

欧米が金融引き締め策に転じ、ロシアのウクライナ侵攻に伴うインフレ懸念なども重荷だ。株式市場に逆風が吹き、世界の株式時価総額は9月末で87兆ドルと22年に入って3割近く減った。

厳しく投資選別
投資家は投資先の選別を厳しくしている。米IPO株に投資する三菱UFJ国際投信の安井陽一郎チーフ・ファンドマネジャーは「投資妙味があるのは、景気後退に左右されにくいIT系と、安定的な売上高が見込めるバイオ企業くらいだ」と指摘する。

株式市場で高い評価がつかなければ、企業側は満足な資金調達を見込めない。既存株主が持ち株を売り出す際の投資リターンも確保できないため、IPO計画を延期するスタートアップも相次ぐ。企業価値が10億ドル(約1400億円)を超える未上場企業「ユニコーン」で人事管理システム開発の米ジャストワークスが上場を取りやめた。

未上場市場でも調達環境は悪化している。上場直前企業に活発に投資してきたソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンドなどが投資活動を控えているためだ。

あおりを受けた一部のスタートアップは広告宣伝費の削減や採用の抑制などリストラを迫られている。スウェーデンの後払い決済大手クラーナは株価を引き下げて資金を調達する「ダウンラウンド」を実施。企業価値は1年前に比べ約7分の1に切り下がった。

評価上昇企業も
ベンチャーキャピタル(VC)、WiLの伊佐山元最高経営責任者(CEO)は「市場の低迷は2年ほど続き、安定した収益構造を持たない(宇宙や医薬など研究開発型の)テック企業への投資は落ち込むだろう」と指摘する。市場環境の悪化が長引けば、十分な開発費などを確保できない企業が増え、成長力が鈍化する可能性がある。

もっとも、すべてに逆風が吹いているわけではない。米アドビは9月、製品デザインなどの共同編集ソフトを手掛ける米フィグマを200億ドルで買収すると発表した。調査会社CBインサイツによる買収前の評価額に比べ、買収額は約2倍だ。米ファイザーも抗ウイルス治療薬の英レバイラルを5億ドルで買収した。

足元では景気後退への懸念も加わり、株式市場の先行きは不透明感が増す。スタートアップは独自の技術やサービスはもちろん、それで着実に収益を稼げるかが問われ始めている。

(細田琢朗)

(日本経済新聞)

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