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JPモルガン「邦銀崩し」動く 外貨決済、日本企業が乗り換え 残高照会・資金融通 迅速に 2023/12/15

米銀がドル決済を中心とする資金管理サービスで日本市場で攻勢をかける。日本の金融機関との取引が多かったJPモルガン・チェースは、海外口座の残高照会や資金融通を迅速にできるシステムで大手の事業会社も本格的に開拓する。邦銀に外貨決済を委託していた日本の企業が外銀に乗り換える動きもあり、3メガバンクはサービスの拡充に動く。

トランザクションバンキングと呼ばれる資金管理・決済ビジネスは企業活動のグローバル化で成長が見込める。調査会社のグランドビューリサーチは、企業の資金を一元的に管理するキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)の市場規模が2020~27年に年平均12.6%伸び、27年に253億ドル(約3兆6000億円)超になると試算する。

JPモルガンで決済事業部門のトップを務めるタキス・ゲオルガコプロス氏は日本経済新聞の取材で「(日本の)大手の多国籍企業と取引を拡大し、世界進出を支援したい」と語った。JPモルガンは日本でのドル決済の2~3割程度を担うとされる。これまで地方銀行など金融機関向けの国際送金仲介事業が中心だったが、CMSで商社やメーカーなど事業会社との取引拡大をめざす。

CMSを使う企業はお金が余っている子会社から足りない子会社に送金したり、余った資金を運用に回したりする。基軸通貨ドルの取り扱いが多く、幅広い外貨をそろえる米シティグループやJPモルガンなどが伝統的に強い。米ドルの国際送金なら同じ米銀内での資金移動で済むため、即日決済が可能な場合が多い。

邦銀は決済スピードで劣る。企業が子会社間の送金で豪ドルを動かす場合、邦銀のシステムを使う企業は前日までに銀行へ通知しておく必要がある。邦銀はドルなど外貨調達に制約があり、リアルタイムで外貨で調達したい企業に応じるのは難しい。ある邦銀の営業担当者は「企業向けにドル建てで融資できる金額には厳しい上限が課されている」と明かす。

現状では送金の受付時間やリアルタイムの残高把握で米銀のサービスに軍配が上がる。邦銀に外貨決済を委託していた財閥系企業が外銀に乗り換えた例もある。米銀を利用する商社の担当者は「子会社への資金融通などお金の管理には米銀のCMSが必須だ」と話す。

米銀は欧州や南米でも攻勢を強めている。JPモルガンのトランザクションバンキング事業の世界シェアは足元で9%と5年前の2倍に増えた。金利上昇で投資銀行部門が落ち込んでいるのとは対照的に、安定して収益を伸ばしている。

米銀は国内外の金利が上がる局面を日本企業との取引を増やす好機とみている。4月には米ゴールドマン・サックスがトランザクションバンキングで日本市場に参入した。メガバンクの幹部は「米銀があまり目をかけてこなかった企業にもアプローチしている」と警戒する。

邦銀はサービスの拡充を急ぐ。みずほフィナンシャルグループ(FG)はアジア向けサービスに力をいれる。22年に英スタンダードチャータード出身者をアジア・太平洋地域のトランザクションバンキング事業の責任者にした。アジアでは同分野の人員を数年で2割増やした。

邦銀で外貨決済に強い三菱UFJ銀行はCMSを中期経営計画の重点領域としている。グローバル送金システムで画面などの操作性を改善する投資を続ける。

三井住友銀行は25年度から順次稼働する次期勘定系システムで国際送金の対応時間を延長する方針だ。従来は前営業日午後6時までだった。幹部は「時差があるため海外送金は夜間対応してほしいという要望があった」と話す。23年には請求から決済、入金確認まで一貫でできるサービスを始め、中堅・中小企業の決済需要を開拓している。

資金決済に詳しい麗沢大学の中島真志教授は「外銀は高品質なCMSで高い料金をもらい、それを原資にさらにシステム投資をしている。邦銀は外銀に比べてトランザクションバンキング部門の行内での位置づけが低く、ニーズがあるのに対応できていなかった」と分析する。邦銀が劣勢なのはドル確保の問題だけでなく、システム投資を怠ってきた側面もある。

(北川開)

(日経新聞)

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