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JPモルガンダニエル・ピント社長兼最高執行責任者、デジタル武器に世界で個人金融 ピント社長に聞く、巨大ITの攻勢に備え 2022/02/17


JPモルガンのピント氏は海外リテールに勝機があると強調した

米銀最大手JPモルガン・チェースが創業約220年の歴史で初めて、海外の個人向け(リテール)事業の運営に乗り出した。英国ではオンライン専業銀行を開業し、中南米のデジタル銀行にも出資した。資本力を武器に金融サービスを拡充し、デジタルを活用して海外リテールで地歩を築く戦略だ。海外も法人から個人にまで事業を拡充し、巨大テック企業との競争激化に備える。

ダニエル・ピント社長兼最高執行責任者(COO)が日本経済新聞のインタビューに応じ、「デジタルで海外リテールを攻める」と戦略を語った。同氏はナンバー2としてジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)を支える。

欧州や南米に的
JPモルガンは2021年9月に英国でデジタル銀行を開業した。英デジタル銀は米国と同じ「チェース」ブランドを冠しているが、店舗網は持たない。まず当座預金サービスを始め、ネット上での投資商品や融資の提供も計画する。将来のサービス拡充をにらみ、ロボットアドバイザーを手掛ける英企業を21年に買収した。ピント社長は「時間をかけて欧州の他の地域にも進出したい」と明かした。

今年1月には欧州23カ国で決済基盤を提供するギリシャの決済テクノロジー会社への出資を決めた。「ほぼすべての支払い方法に対応し、優れた人材と技術を持つ」(ピント氏)ことが決め手になったという。米国と同様に欧州でも決済ネットワークを拡充する狙いがある。

ピント氏は「中南米の地域への進出も検討する」と明言し、リテール事業をグローバル展開する戦略を明確にした。21年には、ブラジルのデジタル銀行C6バンクに4割出資した。同社は1200万人以上の顧客にクレジットカードや投資サービスを展開する。JPモルガンとして「『チェース』ブランドと財務力を提供する」(ピント氏)という。

JPモルガンのテクノロジーを活用した新事業創出は法人向けで先行してきた。20年からブロックチェーン上の銀行口座「JPMコイン」の運用を始めた。シンガポール金融大手DBSグループ・ホールディングスなどと組み、既存の国際送金システムとは違う即時の決済プラットフォームの開発にも乗り出している。

JPモルガンは長年、十分な顧客基盤を持たない米国外では「消費者向けの銀行事業を手がけるのは困難」(ピント氏)とみてきた。それが近年の「テクノロジーの進化とデジタルを活用する消費者の行動変化」(同氏)で勝機が生まれたと判断した。もともとリテール金融は利益率が高い。築いたテクノロジーを世界で共有し、自ら主導権を取りながらリテール事業を強化する方針だ。

欧米銀はこれまで海外リテール事業で辛酸をなめてきた。米シティグループは21年以降、アジアやメキシコのリテール事業の売却・撤退を進めている。費用対効果が見合わず、法人向け事業との相乗効果も薄いからだ。ただデジタル時代は支店のコストなどがかからない。新たなリテール戦略が描きやすくなっている。

強みは財務力
JPモルガンの強みは積極投資を可能にする財務力にある。21年12月期の純利益は過去最高益を更新した。22年のテクノロジー関連支出は銀行業界で最大規模の120億ドルを計画する。そのうち半分は「銀行を変えるため」の新技術やサービスの開発に充てるという。デジタル銀行事業を支えるクラウドや人工知能(AI)は中心分野だ。

JPモルガンが警戒するのは、アップルやアマゾン・ドット・コムといった巨大テクノロジー企業の金融強化だ。すでに世界的なプラットフォームを確立し、投資余力も高い。特に参入障壁の低い個人向け金融はテック企業がもっとも注力する分野だ。ピント氏は「顧客体験が重視される世界で、巨大なテック企業が参入するのは当然の流れ。だからこそ私たちはリテールに多額の投資をしている」と話す。10年先を見据えた競争が始まっている。

(ニューヨーク=宮本岳則)

(日本経済新聞)

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