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    Jamie Dimon, Chairman and CEO of JPMorgan Chase & Co.

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JPモルガンCEO、嵐が「現実に」 影の銀行に危機感 2022/11/11

インタビューに応じたJPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモン氏

米金融最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン会長兼最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞の取材に応じ、世界的な金融引き締めやウクライナ紛争が「市場を非常に不安定にしている」と危機感をあらわにした。英年金をめぐる混乱のように「今後も驚くことが多発しうる」と予想し、「量的引き締めが進む中で隠れたレバレッジ(収益拡大のための借り入れの問題)が表面化していく」との見方を示した。

「私が警告していた嵐は、インフレや金利上昇、世界的な引き締め、戦争の影響、原油や食料価格上昇、サプライチェーン問題などだった。これらのことはすべて起こってしまった」

ダイモン氏は6月に「嵐に備えよ」とウォール街のトップとしては異例の警告を発して金融市場の注目を集めた。「消費者も企業も、状態は当時も今も良好」としながらも、「ハリケーン」と表現した要素は現実のものとなったという。「対処しなければならない問題はいまだ非常に深刻で、結果がどうなるかわからない」と語った。

「中央銀行がゲームに参加する(引き締めを始める)のが遅すぎた」

米連邦準備理事会(FRB)は4回連続となる0.75%の利上げを決めた。インフレを一時的と判断したために後手に回ったとの見方を示した。「おそらく年末まで利上げを続け、政策金利は5%近くまで上昇するだろう。その後少し間を置く。その時点では物価上昇率が下がってきているのかが分かるだろう」と語った。

ダイモン氏は米国経済について「矛盾をはらむ」と表現した。急ピッチの利上げ効果が「時間をかけて浸透していく。うまくいけばインフレ率が下がってくる」と語る一方、「雇用の減少や賃金インフレの低下がまだ起こっていない」と述べた。FRBが景気不安のなかで利上げを継続するリスクも消えてはいないとの認識だ。

「シャドーバンキング(影の銀行)とフィンテックに物事が移っている」

ダイモン氏はかねて伝統的な金融機関に対する厳しい規制の枠外にあるファンド、いわゆるシャドーバンキングの膨張に警戒を示してきた。ファンドは投資家から資金を預かって企業に流動性を供給するが「投資家が資金を引きあげたら資金的供給余力が低下する」と指摘。これに対して「銀行は柔軟な流動性を規制の範囲内であれば提供し続けることができる」とも述べ、銀行機能の重要性を強調した。

「金融引き締めで隠れたレバレッジが表面化する。英国年金のような例は誰もが驚いたが、今後も多く出てくるだろう」と語った。英国年金は国債投資で過大なリスクを抱えた結果、金利の急上昇に対応できず、資産処分を迫られた。「他にもそのような例は多く出てくるだろう。どこから来るかは分からないが、推測するにクレジット市場からだろう」との見立ても示した。

「今と2008~09年(世界金融危機時)を比較すると銀行業界ははるかに良い状況にある。まったく違う」

銀行業界の健全性には自信を示した。仮に現在の規制が当時存在していれば「リーマン・ブラザーズは2.5倍の資本と2~3倍の流動性を持っていたはずだ」と語り、金融システム改革は銀行の健全化に寄与していると認めた。「ある銀行が仮に破綻したとしても、それはシステミックなものにはつながらない」と強調した。

「賢者は自分の失敗から学ぶが、より良い賢者は他人の失敗からも学ぶ。新しい金融商品のようなものは常に問題を引き起こす。危機が起きるパターンは同じだ」

ダイモン氏はトップとして08年の金融危機を経験した数少ないウォール街の重鎮だ。後任候補らより「知識や知恵のアドバンテージはある」と話し、後継者はまだはっきりしない。「1年前に(取締役会から)あと5年はやってほしいと言われて、イエスと答えた。これが(現在の)私の意向であり、それより長くなるかもしれないが全力を尽くせないのであれば身を引くべきだとも思う。しかし、どうしたいかではなく役員会次第だ」と語った。

(佐藤大和、山下晃)

Jamie Dimon 
ニューヨーク出身でタフツ大、ハーバード大経営大学院卒。2000年にシカゴの大手銀バンクワンCEO。04年にバンクワンがJPモルガン・チェースと統合したのを機に、同社最高執行責任者(COO)などを経て現職。在任中にはリーマン危機だけでなく、自身の重病を乗り越えたことでも知られるが、今秋の訪日ではすっかり健康を取り戻したように映った。

(日本経済新聞)

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