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JSRを革新機構が買収 TOB価格1株4350円、35%上乗せ 2023/06/26

政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)は26日、TOB(株式公開買い付け)を通じて半導体材料のJSRを買収すると発表した。買い付け価格は1株当たり4350円で、買収が明らかになる直前の23日終値に35%の上乗せ幅(プレミアム)をつける。半導体材料の競争力を維持するため、国の関与の下、積極投資をしやすい環境を整える。

東証プライム市場に上場するJSR株すべての取得を目指し、12月下旬をメドにTOBを始める予定だ。買い付け総額は9039億円で、純有利子負債を含んだ買収総額は1兆円規模に達する。JSRは26日、JICによるTOBに賛同を表明し、同社の株主に応募を推奨した。TOBが成立すれば、JSR株は上場廃止となる。

JICはJSRを買収するための新会社へ5000億円程度を出資し、みずほ銀行が4000億円強を融資する。出資と融資の中間的な優先株や劣後ローンの計1000億円を複数の銀行が引き受ける。

JSRは半導体の製造で使うフォトレジスト(感光材)の先端品の世界シェアで首位。政府は半導体を戦略物資と定め、国内で先端品の量産に巨額の支援を始めた。国際競争力が強い素材分野でも成長投資を継続できる環境を整え、素材から製品までの半導体サプライチェーン(供給網)を強くする。

JSRは半導体材料で大胆な業界再編を目指す。顧客である半導体メーカーの規模が拡大し、相対的に交渉力が弱まっている。先端半導体に対応する技術開発競争も激しくなっており、積極投資が必要と判断した。研究開発や設備投資にとどまらず、国内の有望な競合他社の買収などを検討する。シェアの低いフォトレジスト以外の材料への投資も強化する。ライフサイエンス分野への投資は継続する。

(日本経済新聞)

JSR、半世紀ぶり「国策会社」回帰  勝ち残りへ規模追求 2023/06/24

JSRのフォトレジストは世界首位のシェア3割をもつ
半導体材料大手のJSRが政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)の傘下に入る。合成ゴムの国産化を目指した官製会社を源流とするが、約55年ぶりに「国策会社」に回帰する。米中対立を機に最先端の半導体技術の囲い込み競争が世界で激しさを増す。日本の半導体素材産業は世界シェアは高いが、プレーヤーが多い。勝ち残りに向けた再編が動き出した。

JSRは24日、JICによる買収について、「検討していることは事実だが、本日現在決定している事実はない」とのコメントを発表した。26日に開く取締役会に付議する予定とした。

JICはJSRを約1兆円で買収する。早ければ年内にもTOB(株式公開買い付け)を実施し、2024年中にも上場廃止になるとみられる。

「現状では生き残れない」、半導体取り巻く環境は激変
「現状の会社の規模では生き残れない」(JSR幹部)。JSRはこれまで水面下で非上場化を検討してきた。JICの買収を受け入れる判断を後押ししたのは、半導体の競争環境の激変だ。

米中対立が激化し、米国や欧州、韓国など世界主要国は半導体を戦略物資と位置づけ、開発・生産拠点の誘致に動く。半導体メーカーのサプライチェーン(供給網)が各地に分散するなか、素材メーカーの投資も増す。

さらに、素材メーカーが今後、直面するのが難易度が増す微細化への対応だ。半導体の性能が約2年で2倍になる「ムーアの法則」は限界が近づいているとされる。一段の微細化の実現には研究開発の資金も必要となる。

JSRの23年3月期の連結業績(国際会計基準)は売上高に相当する売上収益が前の期比20%増の4088億円、純利益は58%減の157億円だった。世界シェア首位の半導体向けフォトレジスト(感光材)で競合する富士フイルムホールディングスの連結売上高は2兆8590億円だ。

フォトレジストはシリコンウエハーに回路パターンを転写する際に必要な液体樹脂で、半導体の製造に欠かせない。微細化の技術革新でもカギとなる。

富士経済(東京・中央)によると、フォトレジストの市場規模は21年時点で19億ドル(約2730億円)で26年に30億ドルに達する見通しだ。中規模な市場に大手だけでも富士フイルムや米デュポンなど5社以上がひしめく。

JSRは21年にはフォトレジストの開発・製造を手掛ける米企業を約450億円で買収した一方、祖業である合成ゴムの事業をENEOSに売却するなど事業の入れ替えを進めてきた。

JIC傘下入りで規模の追求可能に
JICの傘下に入れば、中長期の視点で腰を据えた改革が可能となる。豊富な資金力を背景に半導体素材分野で規模を追求したM&A(合併・買収)も実行に移せる。

限られた資金を株主還元でなく成長投資に集中させる狙いもあるとみられる。外国人保有比率は54%(23年3月末時点)と20年3月末時点から12ポイント増え、経営効率化に向けた外圧が強まっていた。JSRは米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルから社外取締役も受け入れている。

JICによるJSR買収は政府が目指す半導体産業の強化方針とも合致する。重要物資である半導体の供給網の強化は、経済安全保障の観点からも重要となる。

半導体素材は日本勢が今も強みを持つ。フォトレジストは、日本のシェアが世界で9割近い。政府は同分野での競争力を維持するためにも、JSRが非上場化によって集中的な投資や事業再編をできるよう後押しする。

半導体の関連産業、再編の動き
技術力は世界有数だが、経営規模は小さい――。実はこの構図はフォトレジストに限らない。日本が誇る半導体素材の共通の構造問題だ。

フォトレジストに混ぜて使う光酸発生剤の世界シェア首位の東洋合成工業の売上高は300億円超、研磨剤で世界シェア9割を占めるフジミインコーポレーテッドの連結売上高は583億円だ。

半導体の関連産業では規模追求の再編の動きが始まっている。旧昭和電工が日立化成を約9600億円で買収し、統合新会社レゾナック・ホールディングス(HD)が1月に発足した。半導体の後工程に強みを持つ2社が統合し、台頭する海外勢に対抗する。

JSRは1957年にタイヤ向けの合成ゴムの国策会社「日本合成ゴム」として誕生した。発足当初は政府が株式の40%を所有し、最大の顧客先であるブリヂストンの創業者、石橋正二郎氏が初代社長を務めた。

オイルショックの影響で石油化学品の合成ゴムが打撃を受けるなか、開発に成功したのがフォトレジストだった。69年に民間会社に転じて半世紀。今度は半導体素材の「国策会社」として再編の台風の目となるかもしれない。

(日本経済新聞)

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