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金融&M&A業界最新情報

Financial & M&A Industry Updates

M&A、日本企業間で8割増 上期6.8兆円 株価底上げへ国内事業再編が活発 円安、海外買収難しく 2023/08/15

日本企業同士のM&A(合併・買収)が増えている。今年上期の買収額は約6兆8000億円で前年同期比8割増えた。株価の底上げに向けて、より相乗効果が見込みやすい国内での事業再編が活発になってきたためだ。

円安で海外企業を買うハードルも上がっており、海外に成長を求めてきたM&Aの潮目が変わる可能性がある。

金融情報会社リフィニティブによると1~6月の日本関連のM&A全体は約10兆8000億円と2割弱増えた。

このうち「イン・イン型」と呼ぶ日本企業同士のM&Aは日本関連のM&A全体の63%を占めた。通年で75%だった2009年以来の高水準だった。件数でもイン・イン型は前年同期比3%増の1828件で、件数全体に占める割合は76%だった。

09年当時はリーマン・ショック後の不透明感から「イン・アウト型」と呼ぶ日本企業による海外M&Aが急減した。半面、国内企業の再編が増えたことでイン・イン型の比率が上がった。損害保険ジャパンと旧日本興亜損害保険が経営統合を決めたのも同年だ。

23年1~6月はイン・アウト型も約3兆2000億円と3割増えたが、イン・イン型の伸びが上回った。

日本企業同士のM&Aで目立ったのは大手企業が国内投資ファンドと組んで株式を非公開化する動きだ。東芝は日本産業パートナーズ(JIP)や日本企業20社超の支援を受けて株式非公開化を決めた。買収額は約2兆1000億円。物言う株主(アクティビスト)を含む複雑な株主構成を整理し、出資企業と連携して再成長を目指す。

半導体材料大手のJSRは政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)による約1兆円買収を受け入れた。半導体材料の国際競争力を高めるため、国の関与のもと、積極投資しやすい環境を整える。

経営者の高齢化が進むなか、事業承継目的のM&Aも広がった。オリックスによる通販化粧品大手ディーエイチシー(DHC、東京・港)の買収は約3000億円で、承継目的のM&Aでは過去最大級だった。

10年代の日本企業のM&Aはイン・アウト型が中心だった。人口減少による国内市場の縮小をにらみ、海外に成長を求める傾向が強かった。日銀の大規模緩和のもと、国内金融機関から買収資金を低コストで調達できたことも大きい。

もっとも、海外子会社をうまく経営できない企業も多く、巨額の減損損失を計上する企業も相次いだ。

日本企業はこうした経験をふまえ「より相乗効果を発揮しやすい国内再編に注力するようになった」(JPモルガン証券の土居浩一郎M&Aグループ責任者)。東芝やJSRのように、生き残りに向けて戦略的に買収を受け入れる企業も出てきた。

脱炭素社会をにらみ再生可能エネルギー開発会社の再編も増えている。NTTのエネルギー子会社は国内火力発電最大手JERAと組み、カナダの年金基金傘下にあったグリーンパワーインベストメント(GPI、東京・港)を約3000億円で買収した。

豊田通商はソフトバンクグループ(SBG)からSBエナジー株式の85%を1200億円で取得した。

1ドル=140円台まで進んだ円安がイン・アウト型のM&Aのハードルを高めている面もあるが、国内企業同士のM&Aは今後、一段と活発になる可能性がある。

要因の一つが株式市場からの圧力だ。東京証券取引所が今年3月末、上場企業に資本コストや株価を意識した経営を要請した。1倍割れの低PBR(株価純資産倍率)に沈む企業に対する市場の目は厳しくなっており対応を迫られている。「M&Aによる業界再編は収益性向上のための有力な手段となる」(野村証券の角田慎介経営役)

政策面の追い風も吹く。経済産業省が策定中の「企業買収における行動指針(案)」は企業価値向上につながる真摯な買収提案を、合理的な理由なく拒まないよう求めている。

7月にはニデック(旧日本電産)が工作機械メーカーのTAKISAWAへ買収提案し、同意が得られなくてもTOB(株式公開買い付け)を実施すると明らかにした。

日本は主要先進国のなかでも、経済規模に比べてM&Aが少ないとされる。国内再編を軸にM&Aが身近になれば、結果的に国際競争力の強化にもつながりそうだ。

(日本経済新聞)

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